モーショングラフィックスでもその実力をいかんなく発揮!?

2D+3Dで動画をトータルにデザインする

LIKI Inc.がAMD製CPUを深堀り

byLIKI Inc.

性能とコスパに優れたAMD製CPUは、CGや映像制作の現場でどこまで貢献できるのか。

モーショングラフィックスで印象的な映像を創り出す企業が、

その使い勝手を実際に体感。 100万円弱で購入したハイスペック仕様の

「Mac Pro」からの入れ替えもふまえたパフォーマンスや魅力をチェックしてもらった。

Interviewee Profile


(左)LIKI.Inc モーショングラファー 志村勇海氏

LIKI Inc.

モーショングラフィックスやCGを中心に据えたデザイン性の高いムービーを生み出す映像制作会社。テレビCMやミュージックビデオ、ライブ/イベント画像、WEBムービーなど、さまざまな業種の幅広い映像メディアを手掛ける。
https://www.likiinc.com/

Mac Proでは厳しい複雑な3D表現を圧倒的なスピード感でこなす

3回目となる今回のAMD製CPUの比較検証企画はモーショングラフィックスをフィーチャーし、大手企業のテレビCMやWebムービーの作成に少数精鋭で取り組むLIKI Inc.に協力を依頼。設立メンバーの1人である志村勇海氏に、そのパフォーマンスを検証してもらったほか、Macからの入れ替えで感じた印象も語ってもらった。

LIKI Inc.では映像制作のアプリケーションツールとして、PhotoshopやIllustrator、After Effectsなどと共に、3D表現で用いるCinema 4Dを使用。 2Dと3Dを組み合わせた、デザイン性の高いグラフィカルな動画表現を特色としている。

これまで、2Dグラフィック表現をメインにMacマシンを利用してきたLIKI Inc.。多種多様な案件をこなすなかで志村氏は「表現の幅をもっと広げたい」と考え、Cinema 4Dとパーティクルプラグイン「X-Particles」の導入を検討した。さらに、CG表現やGPUレンダリングの相性を考慮してWindowsマシンへの切り替えも検討し、AMD製CPU搭載Windowsマシンを合計3台導入した。

LIKI Inc.のPC選びは、コスト以上に「性能」や「効率性」が重視される。より高性能なマシンで効率的に仕事をこなした方が、「空いた時間を様々なかたちで活用できる」(志村氏)と考えるからだ。

そのため、志村氏が以前使っていたMacも、CPUに「Intel Xeon E5」(8コア/3GHz)を採用し、GPUに「AMD FirePro D700」をデュアル搭載する100万円弱の超ハイスペック仕様「Mac Pro」だった。当然、このMacであれば2Dの映像制作には何の不自由もない。しかし、いざ3Dの表現にトライしてみると、物理シミュレーションを用いるなどの複雑なモーショングラフィックスには十分に対応できず、「どこかで妥協するか、別の表現を模索する」(志村氏)ことになった。

一方で、CPUに「AMD Ryzen Threadripper 3960X」(24コア/3.8GHz)、GPUに「GeForce RTX 2080 Ti」を搭載する現在のWindowsマシンは非常に使い勝手が良く、「今までは諦めていたシーンでも、納得のいく表現ができる」(志村氏)。そのスピード感も段違いで、志村氏は「以前なら食事に出かけていたような作業も、Ryzen Threadripperならコーヒーを入れる間に終わっている」と評価する。さらに、約50万円という価格から、優れたコスパも大きなメリットとなっている。

これらの背景をふまえて、今回はLIKI Inc.が実際に行うモーショングラフィックスを想定したテストで、AMD製CPUを搭載する2機種と対抗検証機を比較。AMD製CPUの実力に迫った。

検証ハードウェアについて

今回はLIKI Inc.に検証データを制作してもらい、AMDが提供する2機種のPCと、本誌編集部が用意したインテルCPUを搭載する比較用の対抗検証機を加えた3台で検証した。

AMDの検証機1は、AMDのハイエンドデスクトップ向けCPU「Ryzen Threadripper 3970X」とAMDのGPU「Radeon RX 5700 XT」を搭載。32コア64スレッドのRyzen Threadripper 3970Xは、基本クロックが3.7GHz、最大ブースト・クロックが4.5GHzという性能で、実売価格も約25万8,000円と高額になっている。

検証機2は、AMDのメインストリーム向けCPUで最上位クラスに属する「Ryzen 9 3900X」を採用。Ryzen 9 3900Xは、クロック数だけ見ればRyzen Threadripper 3970Xに見劣りしないスペックで、実売価格も約6万6,000円とリーズナブルだ。

これに対して、対抗検証機はCPUに「インテル Core i9-9900K プロセッサー」、GPUに「GeForce RTX 2070 SUPER」を搭載。インテル Core i9-9900K プロセッサーはコア数こそRyzen 9 3900Xに劣るが、クロック数は遜色ない実力を有する。また、実売価格はRyzen 9 3900Xよりも安い約5万円となっている。

※実売価格は2020年11月5日現在のものです

CASE 01:Cinema 4D+X-Particlesでのキャッシュ作成時間

モーショングラフィックス用途を前提に、Cinema 4Dのプラグイン、X-Particlesによる粒子のシミュレーションを実施。エミッターから生成されているパーティクル数を「Low」、「Default」、「High」の3つで設定し、それぞれのキャッシュ作成時間を計測した。なお、パーティクルの数はLowが1万2,500、Defaultが2万5,000、Highが5万となる。

X-ParticlesのシミュレーションではCPUに大きな負荷がかかり、コア数もその処理に大きく影響してくる。検証結果を見ると、どの設定でもキャッシュ作成時間はスペック順に「検証機1<検証機2<対抗検証機」となっており、これは順当といえる。

ただ、負荷の小さいLowではその時間差が15秒前後だったのに対して、パーティクル数がLowの2倍になったDefaultでは約6倍の1分30秒前後に、4倍のHighでは約40倍の10分前後になっているのは見逃せないポイント。その時間差が指数関数的に増えていることから、シミュレーションの内容が複雑になればなるほど、時間差が飛躍的に広がっていくという点は注目だ。

また、検証機2のCPU、Ryzen 9 3900Xの価格は検証機1のCPU、Ryzen Threadripper 3970Xの1/4で済むため、コスパの観点から見ればRyzen 9 3900Xは魅力的といえる。しかし、Highでの作成時間は2倍近くとなっていることから、より複雑なシミュレーションであれば、いずれ4倍以上の差がつく可能性は十分にあり得るだろう。その点も含めると、「大量にパーティクルを生成する表現を多用するのであれば、Ryzen Threadripper 3970Xを選ぶのは十分にあり」と志村氏は結論づけた。

検証を終えて

Ryzen Threadripperが新しい表現やクオリティアップを実現

志村氏は現在、検証機1のCPUよりも下位のモデル、Ryzen Threadripper 3960Xを使っているが、その快適さはRyzen 9と比べて「十分に速い」と実感できるレベルだ。さらに今回の検証結果も踏まえて、「3Dアーティストであれば、Ryzen Threadripperを選んだ方がより恩恵が大きい」と分析する。

また、モーショングラフィックスに加えて3Dグラフィックスもやるような立場では、「幅広い表現を1人で完結できる環境は魅力的」と語る。もちろん、コスパは気になるが、優れた性能を持つRyzen Threadripperが新しい表現やさらなるクオリティアップにつながるのであれば、「機材への投資はやはり重要」と指摘した。

まとめ

01:モーショングラフィックスでは負荷が増えるほどCPUの性能差が出る
02:負荷次第でRyzen ThreadripperがRyzen 9のコスパを上回る可能性も
03:3DアーティストはRyzen Threadripperの方がより恩恵がある

RECOMMENDED PC

おすすめの機材構成 購入特典のご紹介

ページトップ

PAGE TOP