第一回は企画絵の提案~全体像が把握出来る「一次原型制作」までの流れと各工程における注意点をまとめてもらった。
イラスト制作
まずは今回制作する、オリジナル作品のデザインや設定について。
いつものお仕事ではラフ絵から線絵までを手がけることが多いのですが、今回はオリジナル作品というせっかくの機会をいただいたので、設定などもご紹介します。
本作のモチーフは主に2つ「薔薇」と「蝶」です。
第一のモチーフである「薔薇」はトルコのハルフェティ南東部にのみ咲く「黒い薔薇」をイメージしております。ネーミングについては、花言葉の「決して滅びることのない愛」「永遠の愛」と、地名から、永遠乃(とわの)ハルフェティ(はる)としました。
また、第二のモチーフの『蝶』については、こちらも「不滅」の象徴、花と共生しているものとして取り入れています。身体の全て、小さな生き物の群で構成されている彼女は、その身を億万に分裂させて戦います。
こちらは『永遠乃ハル』の技『黒殺蝶・雲霞』のイメージイラストです。
雲霞(くもかすみ)とは「雲や霞に見えるほど多くの人(または生き物の軍勢)が集まっている様子」の意味しています。髪は蝶の形をした刃で、指先の蝶は司令塔となっています。本作を立体化するにあたっての難所としては、刃や羽は薄いので、髪の厚みとの、変化の境目が非常に難しくなるだろうというところです。
素体制作
イラストが出来上がったところで次は「素体」の制作です。『素体』とはキャラクターの基礎となるポージング原型のことで、衣服はつけず裸の状態で制作します。
素体の制作にあたっては、キャラクターに合わせて新規で制作することもあれば、過去に制作したデータをもとに、キャラクターに合わせ調整して利用する場合もあります。新規で制作する場合には、キャラクターの形状に合わせて、球体を伸ばす、曲げる等で変形させていきます。設定画があれば、等身を測って合わせます。モデルの動きが大きいほど、等身がわかりづらくなり、関節を動かすとバランスが崩れることが多いです。その場合は、商業原型であれば担当様、監修に確認。個人の場合は、CGモデルの画像を、イラストソフトで等身の線を引き直し、バランス修正した画像をソフトに取り込み、再度モデルと比較して直します。
身体のバランスがわかる程度に形状を作ったら次は、イラストに沿って『トレースモデリング』を行います。『トレースモデリング』とは、テクスチャ(画像)を画面内に貼り付けて、その形に添ってポリゴンを合わせる作業です。
素体制作を行うさいには「かっこいい+美しい」を意識しましょう。
360度の空間バランスを、髪や、服装で補い、全体像が、丸、もしくは楕円になるように。また、大きく横長になどに協調させたい部位は、身体から大きく離して、身体との質量、重力とのバランスを取ります。例えば巨大で長いハンマーを振り回す場合、大きくても小さくてもカッコ悪いので、鎚と体を同量にしたり調整します。
あとは、イラストレーターさんの構図の取り方、漫画家さんのコマ割りバランス、建築物等を見て、心地よいものをストックしていくのがよいでしょう。
素体の段階で、体のバランスと形状をほぼ決めておくと、衣装が作りやすいです。また、左右差をある程度合わせておくと良いでしょう。
なお、ポージングについては、今回のキャラは「投げるように指先を振ると、髪の蝶全てがその方角へ飛んでいく」という設定をしています。そのため『野球投手の、サウスポーのアンダースロー』を基礎とし、伸びと軽さを加えました。魅力的な身体づくりのコツとしては人体は、関節の限界まで動きを加えると、しなやかになります。動きのフィギュアは、やりすぎると時折、力強すぎてしまうので、ほどほどが綺麗です。自分の場合、体の構造が破綻しないレベルまで関節を動かしておくと、伸びのある原型になると考えています。限界点は、新体操選手、バレリーナあたりです。魅力的な形探しは、アニメーターのスケッチなどを参考にしています。
前髪・後頭部
次に髪の毛のパーツの解説を行います。
まず細い髪パーツを数種類作ります。(三日月と平打ちパスタの形状のもの)それを変形させて、コピーペーストしながらイラストの形に合わせていきます。後頭部は、とりあえず球体を置いていきます。
MoveFで膨らませる→MoveB(背面マスクON)で凹ませています。
ひたすら繰り返しながら、曲げる部分は髪の先端を、Moveブラシで所定の位置に持って行って、真ん中の歪みをSmoothでなだらかに。エッジが死んだら、MoveB(背面マスクON)で凹ませループ。ヘアアイテムにも、前髪ウィッグが存在するので、フィギュアも前髪はボリューム+ふんわり感があるとかわいいです。
衣装作成
次に衣装の制作の解説です。全体衣装のトレースモデリングは、素体の時と同じ方法を採ります。
この時点では、まだ低ポリゴンの状態で構いませんが、作りこみが楽しければやってもOKです。衣装を着けていくと、肌への食い込みが発生し始めるので、ブラシで柔らかさを出します。
参考資料は何でもかまいませんが、モデルさんの本物の体が一番勉強になります。
好きなイラストの特徴に似せても楽しい部分なので、イラスト観察も◎。
裸の体製作→頭部のボリューム製作→体に密着した素材(タイツ、手袋)→体から離れた衣装(上下左右に広がるもの)を行っています。
愛用ブラシ。
髪の毛製作、モデル全体のバランス確認
髪の毛の制作についても、トレースモデリングを行います。
イラストでは、キャラ本体はしっかり描かれていても、髪や布がおおまかな情報しかないことがあるので、ここから奥行きをさらに意識すると良いでしょう。
シルエットは正面に合わせて、左右の画を自分で考えることになるので、自分の心地よい流れを探すのを楽しもう。
髪の作り方は、前髪と同じく、コピー&ペーストが中心になりますが、大きなパーツになってくるので、形状に対し、作り方をツールで工夫します。
一次原型完成
全てのパーツがだいたい揃い、バランスを確認したところで『一次原型制作』は終了です。
今回は、毛先の蝶の部分は割愛し、第二回の作りこみのパートで解説したいと思います。
この時点で、メーカーなら監修へ提出、個人製作なら、レンダリング画像を印刷してほかの人に見てもらっています。自分の『目の癖』は必ずあるので『これ以上出来ない』と思ったら、見てほしいと思った人に相談するのが吉です。私の場合は、身内、友人、メーカーさんの担当さんにチェックしてもらいます。
提出は、平均で6~7面図。相手がデータを開けるなら、データごとお渡しします。3DデータをノートPCで持っていくのでも問題ありません。可能な限り多く、素材を渡してチェックしてもらいましょう。
私の愛用機
AMD x ZBrush x raytrek x CREA MODE 真辺菜月氏 コラボPCモデル
最後に愛機の紹介です。ZBrushとKeyShotに最適化された本機を用いてから、ソフトの処理が4倍速くなりました!!元々、形を作る思考時間が長かったりしていて、私の作業ペースは4倍にはなりませんが、モデルのバランス確認をする回転作業がスピーディーになり、、物理的に不要なストレスを取っ払ってくれました。デジタル造形を目指す方にはオススメです!
まとめと次回告知
一次原型制作までの流れいかがでしたでしょうか?大まかな制作の流れを紹介しているので今回は、作り込みの部分については割愛させていただきましたが、次回分割前の作りこみを行います!
データ全体のバランスを見ながら、足りないパーツを追加する細かい作業ですが、最もこだわりが反映出来る工程です。また、3Dプリンターでの出力を行う際に、分割しやすいように、パーツの裏側の処理や、パーツごとの結合を解説します。
まとめと次回告知
一次原型制作までの流れいかがでしたでしょうか?大まかな制作の流れを紹介しているので今回は、作り込みの部分については割愛させていただきましたが、次回分割前の作りこみを行います!
データ全体のバランスを見ながら、足りないパーツを追加する細かい作業ですが、最もこだわりが反映出来る工程です。また、3Dプリンターでの出力を行う際に、分割しやすいように、パーツの裏側の処理や、パーツごとの結合を解説します。