INEI富安氏が語る「コンセプトアーティスト」の本質、
そしてハイスペック・ノートPC
「MSI Creator Z16 A11U」の使用感

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4K、8Kなどの高解像度がアウトプットとして求められる現代、「コンセプトアート」制作においても、特に大規模なデータを扱うときには高いスペックの制作環境が求められている。コンセプトアートを描く際に重要なこと、そしてPCの選定を行う際の基準について、株式会社INEI 富安健一郎氏にきいた。

株式会社INEI 富安健一郎氏/Kenichiro Tomiyasu

絵を描くだけがコンセプトアーティストの仕事ではない

――まずは自己紹介をお願いします。

富安:INEIの富安健一郎と申します。普段はゲームや映画などのコンセプトアートを制作していて、最近では「INEI ART ACADEMY(インエイ アート アカデミー)」として教育事業も行なっています。CGWORLD ONLINE TUTORIALSでも、ビデオ形式でコンセプトアートに関する情報を公開させていただいています。

――富安氏はこれまでも非常に多くの作品を産み出してきていますが、コンセプトアートをつくる際に大切にしていることを教えて下さい。

富安:コンセプトアートはデザイナーに近いんです。クライアントの考えていることを引き出して、効果的なアウトプットを実現する。ただかっこいいだけの絵ではなく、ビジネス的にも価値を持ったコンセプトアートを提供するためにマーケティング的な視点も大切にしています。

――ビジュアル要素以外の部分も重要なのですね。

富安:コンセプトアートをつくっていくのはコミュニケーションをよく取ることが大切で、ミーティングの時にも漫然と座って聞いていることはなく、ビジュアルを使ったブレインストーミングであったり、コンセプトを深掘りして対話していくコンセプトメイキングというワークショップであったり、ある種の”会議の技”のようなものを使って会議を回していくファシリテーションのようなこともやっています。

 

――絵のクオリティを高めるよりも前の、もっとプロジェクトの根幹に関わる部分ですね。

富安:そうですね。コンセプトアートはプロジェクトの最初期、まだ企画すらない状態から関わることも多く、プロジェクトの根本的な魅力はなんだろう?と考える機会がとても多くて、その問題をビジュアルで解決していくコンセプトアーティストという仕事についてずっと考えていたら、結局はこういったスタイルになりました。

 

――こうしたビジネス的な視点をもったコンセプトアーティストは、他にはあまりいない気がしています。

富安:日本国内だけでもコンセプトアートの需要は増えてきていて、すごく良い絵を描く方もたくさんいるのに、コンセプトアーティストとしての人材が多いわけではない。だから自分がたくさん経験して、これが最適解ではないかと思ったことを人に伝えてコンセプトアーティストを増やしたいと思い、それが最初にも話した「INEI ART ACADEMY」などの教育事業に繋がっているんです。

――あらためて、教育事業に力を入れている理由を教えて下さい。

富安:もともと自分自身が悩めるデザイナーで、20代の頃は「何かがやれそうだけど、どうやったら良いかがわからない」という状態がすごく長かったんです。それを助けてくれたのはコンセプトアートを教えてくれた海外のアーティストたちでした。自分が助けてもらったから、次の世代にバトンをつないでいく、というのが理由の1つです。もう1つは、コンセプトアートはすごく小さな業界なので、関わる人数そのものが少ないんです。ひとりひとりが知見を公開しないと、業界としてのノウハウが蓄積しないんですね。みんなの経験を積み上げていくことで、世の中のクリエイティブを牽引できるような質の高いコンセプトーアートが生まれてくると良いなと思っています。

 

――モチベーションはどのように維持されているのでしょうか?

富安:この仕事を始めてから、例えば東京が壊滅した絵なんて20回も30回も描いてるわけで、地球が割れてる絵も10回以上は描いてるんです。一見すると似ているテーマ、似ているシチュエーションでも、他とちがうところがまさにコンセプトになってくるんですが、やっぱりこうした絵を描くときは自分の精神をワクワクした方向にもっていくのが一番大切かなと思っています。

――ちなみに、やる気を上げるために意識していることはありますか?

富安:旅行に行けていた時期は旅行に何週間か行ったりして。車や料理やキャンプなども趣味ですし、最近はカヌーを買ってみたりとか。なんとか新鮮な気分になりたいな、と思っていろいろと取り組んでいます。車はエンジン部分まで自分でいじっていた時期もあったんですが、例えばメカニックがわからない人が描くエンジンってどこか嘘くさかったりするじゃないですか。オイルの匂いや質感などは実際に触ってこそ理解できるので、人生のいろんな経験がコンセプトアートに活きているという感覚はありますね。

 

ストレスなく描けることが機材選定の「前提」

――普段コンセプトアートを描く際に使用するツールを教えて下さい。

富安:基本はPhotoshopですが、レイアウト作業であったり、複雑な構造物を扱う場合はBlenderも併用します。あまり3DCGツールと意識せず、Photoshopのブラシのひとつとして使っているような感覚ですね。最終的には絵を描くことになりますが、それを効率よく行うためにはいろんなツールや写真を使います。例えば、iPhoneで撮影した写真を合成して、それをもとに描いていくこともあります。

 

――今回、MSI Creator Z16 A11Uをお使いいただきましたが、まずはファーストインプレッションを教えて下さい。

富安:性能面は文句のつけようがないですね。普段からあまりスペックは意識せず、「これであればしばらく使える」というところで数年に一度PCに投資していて、今使っているのもフルカスタマイズしたiMac Proです。当時かなりの高スペックにしたと思いますが、Z16は体感的には同じくらいかそれ以上で、今はノートPCでもここまで動くんだと驚きました。

 

――普段はiMac Proとのことですが、ノートPCはお使いにならないのですか?

富安:Macbook Airは使っていますが、巨大な作品だと流石に描けないですね。自分は講演など人前で絵を描くことも多く、そういった場合は無理やりMacbook Airで動かすか、場合によってはiMac Proをもっていくこともありました。

 

――その意味では、ハイエンドなクリエイター向けPCは用途には合いそうですね。

富安:そうですね。本当はどこにいても、いつもやっている環境と変わらずに作業ができるというのが重要なので。アーティスト種族の方って、意外とスペックそのものに興味がなく、気にするのは「なにも気にせず気持ちよく使えるか」というところだけです。あとは、ディスプレイも発色がよくて良いですね。これでファイナルまで行けるのではないか、と思いました。

 

――本機に搭載されている「アスペクト比16:10の高解像度・広色域ディスプレイ」はグラフィックスデザインに最適なディスプレイになっています。こうしたクリエイター向けのPCがMSIから発表されたことについてはいかがですか。

富安:メーカーとしての印象はゲーミング向けですね。ゲーミングPCといえば、スペック的には「最強」というイメージをもつ方が多いと思います。そして、ゲーマーもクリエイターも、ある意味では層が重なっている感覚があります。例えばZ16のようなPCから、若い方がクリエイティブの道に入りやすくなるなら、それは本当に良いことだと思います。

――最後に、富安氏のこれからの展望を教えて下さい。

富安:いま一番興味があるのは「未来のビジュアル化」です。ゲームや映画だけでなく、さまざまな種類の企業と、これから先人類がどうしたらハッピーになるのか? というコンセプトを考えてアートにしていくのは、すごく面白くてやりがいのあることです。もうひとつは教育事業の充実です。海外から見たとき、「なぜか日本のコンセプトアートはレベルが高いな」と言われるようになりたい。そんな状況をつくれたらと思っています。

Creator Z16 A11U/Creator-Z16-A11UET-010JP

OS

Windows 10 Pro ※MSIはビジネスにWindows 10 Proをお勧めします

ディスプレイ

16インチ、WQXGA(2,560×1,600)、グレア、リフレッシュレート120Hz、DCI-P3相当、タッチ機能対応

CPU

インテル Core i9-11900H(8コア16スレッド)

GPU

NVIDIA GeForce RTX 3060 Laptop GPU 6GB GDDR6

チップセット

インテル HM570

メモリ

32GB(16GB ×2)DDR4

ストレージ

1TB(M.2 NVMe)

無線LAN

IEEE802.11a/b/g/n/ac/ax、Bluetooth 5.2

I/Oポート

Thunderbolt 4 Type-C x2、USB3.2 Gen2 Type-A×2、ヘッドホン出力(Hi-Res対応)、
マイク入力 コンボジャック×1

本体サイズ

W 359×D 256×H 15.9mm

本体質量

2.2Kg