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映画『天気の子』の画づくりを支える「Google Earth」の活用

映画『天気の子』の画づくりを支える「Google Earth」の活用

Google Earthのデータのやり取り

GE ProとGE Studioは互いにデータのやり取りができる

▲GE Proでデータを書き出す。保存したいカメラやピン、シェイプレイヤーを選択し(複数可能)、[名前を付けて場所を保存]でkmzファイルを作成できる

▲GE Studioの[File]から[Import]を選択し、[Overlay]として書き出したkmzデータを読み込む。なお、GE Studio間のデータのやり取りには、キーフレーム情報なども保持されるespファイルで保存すると良いだろう

ロケハンの場所探しで活用

▲前述したが、本作ではもともとロケハンの場所を探す際にGE Proが使われたのをきっかけに、様々な用途でGoogle Earthが用いられることになった。「ロケハンの選定には、主にGoogleマップ上の3D表示で行いました。ピンを打った場所をスタッフ間で共有し、スマホによる確認がしやすいためです。GE Proは、主に地形の確認のために使用していました。この画像(GE Proの画面)は、帆高と夏美がカブで逃走するルートを探っていた際、アクションしやすそうな階段がある! と見つけたときの再現です」(三木氏)。このようなサービスが身近になったことで、現地に行かなくてもロケーションを探ることができた。アニメに限らず活用の幅は広い

空撮のアングル探りで活用

本作では、上空から俯瞰するようなカットが多く、絵コンテで求められる条件を満たしたポイントにGE Pro上でピンを打ち、空撮の際、カメラマンと共有して撮りたい場所やアングルを伝えるなどしていた。実際の空撮 では撮影範囲が広すぎて、なかなかねらった場所を撮ることは難しいが、事前に情報を正確に共有できるのは有効な方法だ。また、空撮映像から3Dモデルを起こすことで電柱などの細部までを再現し、美術背景に反映し たカットもあるという



  • ▲絵コンテ



  • ▲GE Proで探った空撮参考用のレイアウト



  • ▲絵コンテ



  • ▲撮影場所の指示を示したGE Proの画面

自由度の高いカメラ設定と様々なシーンでの活用

▲前述の通り、GE Studioは[Field of View]で画角を変更することによって、ほしいレイアウトに限りなく近い東京の風景を切り取れるようになった。ここでは、GE Studioを用いたカットの一部を紹介する。上がGE Studio、下が完成画。このカットは、レインボーブリッジを俯瞰でとらえたもの。空撮でも撮れそうだが、GE Studioで検討できる点は大きい

▲空撮だけではレイアウトを吟味できなかったところを、GE Studioを使うことで2パターン案を提出したという廃ビルを俯瞰するカット。「より良い画づくりのために、吟味できる余裕ができました」(三木氏)

▲都内の公園から空を見上げていくカメラワークのあるカット。実際にキーフレームを打って、アニメーションさせて確認している。横はもちろん、上下の動きにも有用だ

▲かなり上空から見下ろす雷が光るカット。空撮でも撮りきれないような高度の高いシーンであっても、GE Studioならお手のものである

▲真夏の東京。ビルのひとつひとつもかなり正確に描き込まれている。現実感のある画づくりを、GE Studioがしっかりと支えていた



  • 月刊CGWORLD + digital video vol.254(2019年10月号)
    第1特集:映画『天気の子』
    第2特集:デザインビジュアライゼーションの今
    定価:1,540円(税込)
    判型:A4ワイド
    総ページ数:144
    発売日:2019年9月10日

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