『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』『あつまれ どうぶつの森』『スプラトゥーン 2』など任天堂タイトルのグラフィックス制作に参加したモノリスソフト・京都スタジオが、今後の開発力強化のため、長期に渡って3DCGデザイナーを大幅増員していく予定だという。

募集背景や、より質の高いプロダクトを生み出すための工夫・考え方、そして、応募者に求められるスキルなど、さまざまな観点からプロデューサー 内山 博氏に語っていただいた。


▼求人情報
https://www.monolithsoft.co.jp/recruit/career/#mid-kyoto

募集職種
・3DCGデザイナー(マネージャー/キャラクター/マップ/広告)
・2Dデザイナー(アートワークスタッフ)

任天堂のグループ会社として、タイトル開発をグラフィックス面から支える

CGWORLD(以下、CGW):最初にプロフィールを教えてください。

内山博(以下、内山):内山と申します。モノリスソフト京都スタジオでプロデューサーを務めております。複数のプロジェクトを俯瞰して管理しており、社員が働きやすい環境をつくるための準備などを行っております。



  • 内山博氏
    モノリスソフト京都スタジオのプロデューサー

CGW:モノリスソフト京都スタジオでは現在、3DCGデザイナーを中心に採用強化中とのことですが、この背景について教えてください。

内山:多くのお客様に適切なタイミングで商品をお届けするために、開発力の増強とスピードアップが必須であると考えています。キャラクターモデラー・背景モデラーを中心として、チームマネジメント・渉外担当するマネージャー、広告向けのグラフィックデザイナー、3Dモデリングを意識したスケッチ制作を担当する2Dデザイナーまで幅広い職種で募集しています。

CGW:モデラー職を中心に、アセット制作能力の強化に努めるということですね。改めて、モノリスソフト京都スタジオの業務内容や特徴を教えていただけますか。

内山:今年で設立11年目の開発スタジオになりまして、主にデザイナーが在籍しており、家庭用ゲーム機の分野でグラフィックス制作に取り組んでいます。任天堂との長年の開発協力に基づく知識と知見をもとに、お客様の体験向上を後押しできるようタイトル開発をグラフィックス面から支えています。

制作タイトルごとに異なるそれぞれの個性に合わせて、最適なグラフィックスをご提供できるような「柔軟な対応力や総合力の高さ」を強みとしています。また、お客様に新しい驚きと喜び、感動を提供していくために、日々進化するグラフィックツールの研究と実践活用によるスキルの底上げを行っている点も特徴のひとつです。

CGW:「柔軟な対応力と総合力の高さ」と「ツールの研究と実践活用」がスタジオの特徴なのですね。先にツール活用のお話しを聞かせてください。「ツールの研究と実践活用」というのは、具体的にはどういったことを行っていますか?

内山:開発中のタイトルで使用していないツールも含めて、業界で話題になっているものや新たに登場したものは実用を見据えて試用・研究を行っています。例えばHoudiniが国内で話題になり始めたときも、現場のデザイナー主導で導入を行い、その後のマップ制作などに応用してきました。現在もスプラインに沿って棚を配置する、階段などの規則性のあるオブジェクトを制作するなど、ルールに則った人工物を手早くつくりたいときに活用しています。

CGW:普段の業務で主に使用するDCCツールについて教えてください。

内山:メインツールはMayaです。そのほか、ZBrush、Substance Painter、Substance Designerなども用いています。いまお話したHoudiniもそうですが、基本的に「新しいツールを導入したい、研究したい」という姿勢は推奨しており、デザイナーからの提案で新規ツールが導入されることも少なくありません。

CGW:最新技術のキャッチアップが現場主導で進む文化は素晴らしいですね。京都スタジオのスタッフ構成はデザイナーが中心とのことですが、ツール開発などはどのように行われているのでしょうか?

内山:簡単なMayaのカスタムツールであれば、京都スタジオ単体でも作成を行っていますが、より大がかりな開発が必要なものは、モノリスソフト内にR&D部門がありますので、そちらと相談をしながら一緒に開発を進めています。

▲TECHBLOG

CGW:ツールの開発や研究について積極的な理由があれば、教えてください。

内山業務効率化とその先にあるワークライフバランスの向上です。

モノリスソフトは定時労働制を取り入れています。京都スタジオは9時始業、18時終業で、工数管理をしっかり行い1日8時間内にどれだけ成果を出せるか、効率的に仕事ができるかを突き詰める風土が根付いています。

もちろん開発の進行上、必要に応じて残業はありますが、みなし残業、サービス残業はありません。残業のない日は定時で帰宅できますので、仕事とプライベートの時間のメリハリをつけることができます。

そういう意味でも、業務効率をあげるような最新ツールの導入検証や開発には積極的です。 ツール開発のほかにも社員全員が共有するナレッジベースもあり、デザイナー向けには、ショートカットやツール配置の最適化などのTIPSが定期的に更新されています。クリエイティブに関係のないところで時間のロスを回避できるように、皆で意見を出し合っています。

CGW:社員への研修はどういったことを行っているのでしょうか。

内山:新卒社員の場合は教育担当者がつき、3ヶ月ほど研修を行います。観察力や基礎画力を高めるためのデッサンの研修から、DCCツールの使い方まで、一通り学習していただきます。

研修においてデッサンから入ってもらう理由は、当社が上述の「柔軟な対応力」を強みとしており、立体把握力や質感描写、色彩設計などアーティストとしての総合力を重視しているためですね。自分で描いた2Dのスケッチを実際に3Dモデル化し、セットアップまでを行ってもらいます。その流れの中で、新入社員が「なにができて、なにができないのか」を見極め、フォロー体制を構築しています。経験者の方はスキルに個人差がありますので、すぐにプロジェクトに入っていただくこともあれば、一定の研修期間を設けることもありますね。

▲新卒社員には教育担当者がつき、デッサンの研修からDCCツールの使い方まで一通りの研修を行う。
※撮影は2019年

CGW:正確なデッサンからモデル制作、セットアップまでを全員が習得していることが「総合力の高いスタジオ」を支える要因ということですね。任天堂の商品は、タイトルごとにルックも大きく変わるものばかりだと思いますが、具体的にどのようにものづくりを進めていくのでしょうか?

内山:最初の1ヶ月程度は、そのタイトルのテイストを身につけるために時間を費やします。テイストというのはルックに関する部分と言い換えても良いですが、実際のデータを触りながらルックをチューニングする期間が必ずありますね。頂いた資料をメンバーと共有して話し合う時間を設けています。

CGW:ある程度仕様が固まったアセットの制作を行うだけでなく、デザイン提案から行うこともあるのでしょうか。

内山:もちろんあります。『あつまれ どうぶつの森』では、衣装デザインの提案から、ご相談を頂いています。例えば「ノースリーブが欲しい」、「ジャケットが欲しい」というお話を頂いたときは、こちらでリファレンスを集めてデザインを起こして提案しています。 同タイトルは非常にアセットの種類が多いので、「どういったものをつくるのか?」というアイデア出しの段階から参加をさせて頂くことも多くありました。衣装に限らず、家具なども同様の流れですね。

CGW:「なにをつくるのか」といった部分から携わることもある、ということですね。

内山:はい。ほかにも、『スプラトゥーン2』のステージデザインは弊社にまかせて頂いた部分が多かったと思います。ステージの形状とルックに関する資料はご用意頂いていましたが、ステージ上の様々なアセットから、壁のグラフィティのデザインなど細部に至るまで、ステージの魅力を引き出すためのデザインについて弊社からも積極的に提案させて頂きました。

▲モノリスソフト公式HP内、京都スタジオ紹介ページでは、『あつまれ どうぶつの森』に携わったデザイナーのインタビュー記事が紹介されている。任天堂との協力関係、仕事のやりがいについて語られているのであわせてチェックしてもらいたい。
https://www.monolithsoft.co.jp/interview/kyoto/

細部に宿る"こだわり"を支える「日常でのインプット」

CGW:ここからは求人について詳しくお話を聞かせてください。モノリスソフト京都スタジオでは、今回3DCGデザイナーを中心に募集していますが、ゲーム業界以外からの応募も問題ないのでしょうか?

内山:はい、ゲーム業界で働いてきたことのあるような即戦力の方はもちろんのこと、業界未経験者であってもポテンシャルのある方であれば、育成期間ののちに現場でご活躍頂きたいと考えています。

実際、京都スタジオでは幅広い分野の人材が活躍しています。近い分野では映像業界や、珍しいところでは元美術教師の方も在籍しています。美術教師の方はスカルプトで制作したモデルをポートフォリオとしてお持ち頂いておりましたね。ツールはBlenderのような無償のソフトウェアでも、ZBrush Coreなどフルバージョンでないツールでも構いません。業務として使用するツールはあとから学習できますので、応募時点ではどういったツールがメインであっても問題ないと考えています。

▲応募者のポートフォリオ(抜粋)

CGW:その意味では、募集の間口は非常に広いと言えますね。少し話題が変わりますが、モノリスソフトならではの制作スタイルや、働く上で求められる素養について教えてください。

内山:私たちはビジュアル面を開発する立場ですが、そもそもゲーム開発者の仕事はお客様に楽しさを提供することが重要です。そのためには、スタッフ自身が楽しいことをたくさん知っていたり、発見できるような人であるべきです。日常生活の中でも遊び心を忘れないようにしたいと考えています。
そして制作に入った時には、自身がお客様だった時につい嬉しくなってしまうような、「こんなところまで作り込んでいるんだ!」と驚くようなこだわりを、デザインの随所に入れたいと考えています。

CGW:たしかに、私自身もゲームで遊ぶときに「細かいこだわり」を発見できたときは嬉しく思います。こだわりや遊び心というのは、どのようにして養ったり、学んでいくものなのでしょうか。

内山:これは完全に私見ですが、職業としてゲーム開発を始めると、毎日の仕事として大量のアウトプットが求められます。最初のうちは子供の頃から培ったインプットを糧としてアウトプットを産み出すことになりますが、実はこれらは数年で使い切ってしまうと思うんですね。
この業界で長く仕事を続けられる人は、仕事に就いてからも意識せず自然とインプットをしている方が多くて、言い換えれば「常になにかおもしろいものを探し続ける人」が強いと感じています。

CGW:好奇心や探究心が大事、ということですね。モノリスソフトのつくる商品のこだわりは、そういったアーティスト個人の資質によるものなのか、それともなにかスタジオ全体で突き詰めている方針なのか、どちらでしょうか。

内山:スタッフ間でコミュニケーションをしながらの共同作業になりますので、アーティスト個人ではなく会社のスタイルと言っても良いかと思います。その上で、弊社にお任せ頂ける部分の裁量において、それぞれのスタッフが個性を発揮してお客様に喜んで頂けそうなアイデアを盛り込んでいくといった形でしょうか。

※撮影は2019年

CGW:次に、採用のポイントについてもご質問します。お答え頂ける範囲で良いのですが、応募作品のどういったところを重点的に見ているかも教えてください。

内山:応募書類は数名で拝見しておりますので、それぞれの選考担当者で重視するポイントが異なるという前提ではありますが、私の場合はデッサンの基礎力を見ています。四角いものを四角く描けているか?ツールの使い方を見ているのではなく、物体の形状を捉えてしっかりアウトプットできるかを見ております。続いて重視しているのは、"スタイルの幅"です。

京都スタジオは本当に多様な商品に関わらせて頂いておりますので、特定のアートスタイルだけしかつくれません、という方よりは「ある程度、なんでも描き分けができる」ほうが良いかと思います。また、背景においては、空気感をうまく表現できているかを判断基準にしています。絵として完成しているか?という部分ですね。図面や設計図をそのままつくりました、というアウトプットより、しっかり絵として成立していることが重要だと考えています。

CGW:非常に貴重なお話で、これから応募する方にとっても有益な情報だと思います。最後に、モノリスソフトにフィットしやすいタイプはどういった方かを教えて頂けますか。

内山:京都スタジオはデザイナー職が中心ですので、日々デザイナー同士で意識や感覚の共有をしています。デザイナー特有の悩みの共有や解決がしやすい環境も特徴だと思います。先ほどの発言と重なりますが、日常的に自然体で面白いものを見つけられる方がフィットするだろうと考えています。


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・2Dデザイナー(アートワークスタッフ)

https://www.monolithsoft.co.jp/recruit/career/#mid-kyoto