7月4日(金)、フランス・パリ「JAPAN EXPO」にて、スタジオカラーの新作短編アニメーション発表イベントが行われた。会場となったYUZUステージには、世界中のアニメファン約1,500人が集まり、新作短編映像ワールドプレミアの瞬間を見届けた。
ステージには、MCの呼びかけとともに、スタジオカラー所属の監督・松井祐亮氏とアニメーションプロデューサー・藤原滉平氏が登壇。シークレット上映となった短編上映後、驚きと興奮に包まれ拍手喝采となった観客に見守られる中、松井氏・藤原氏の二人から発表された新作短編アニメーションは、安野モヨコ氏による漫画作品『シュガシュガルーン』連載20周年記念短編映像『SUGAR SUGAR RUNELes deux sorcières』(シュガシュガルーンレ・ドゥー・ソルシエール)であると発表。
上映後は、短編制作の経緯が語られると共に終盤には「『シュガシュガルーン』本編アニメーション製作決定」もサプライズで発表。会場は大きな拍手に包まれた。
スタジオカラー新作短編アニメーション発表イベント
『SUGAR SUGAR RUNELes deux sorcières』上映後、監督の松井氏とアニメーションプロデューサーの藤原氏が再登壇し、作品に込めた思いや制作エピソードが語られた。
松井氏は「原作では描かれていない人間界への旅立ちを前日譚として想像を膨らまして描いた」と語り、キャラクターの背景に至るまで、原作者である安野モヨコ氏と何度も意見を交わしながら作り込んだ制作過程を明かした。一方、藤原氏は「この作品を通して、スタジオカラーの新しい才能をみていただきたい」と述べ、作品の手応えを語った。
イベント中盤では、原作である『シュガシュガルーン』についても紹介。フランスを含め、全世界で展開中であることも明かされた。あわせて、安野モヨコ氏の作品群や、スタジオジブリ発行の小冊子『熱風』の表紙、和装ブランド「百葉堂」など、ジャンルを越えて活躍する同氏の魅力も紹介された。
終盤にはさらなる驚きの発表が。スクリーンに映し出されたのは、「『シュガシュガルーン』本編アニメーション製作決定」の文字。会場からは歓声と拍手が巻き起こり、MCから松井へ感想を問われると、「CGアニメだからこその造形の良さがあるので、ぜひ楽しみにしていただきたいと思います。よろしくお願いします。」と笑顔で応えた。
最後に松井と藤原からそれぞれ感謝の挨拶が述べられ、イベントは興奮の中、幕を閉じた。
『SUGAR SUGAR RUNE Les deux sorcières』
育った環境も性格も違うけれど仲良しのショコラとバニラの住む魔界は今、王国祭の真っ最中。
ショコラとバニラは、女王キャンディより次の女王候補として人間界行きを命じられ、
ふたりは人間界へ行く為に魔界を巡り、試練を乗り越えるために奮闘。
この作品は、ショコラとバニラが様々な試練を経て成長し、またお互いの友情を再確認する過程をロードムービーとして描いた原作漫画の前日譚である。
原作者安野モヨコ氏の監修による、アニメーション独自のオリジナルストーリーだ。
監督・プロデューサーコメント
また、本短編映像公開を記念し、CGWORLD読者宛に監督・松井祐亮氏とアニメーションプロデューサー・藤原滉平氏から、本作の見どころとコメントを頂戴した。
監督 松井祐亮氏
1981年北海道生まれ。2010年よりスタジオカラーデジタル部で 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q 』から参加。
他作品のディレクターを担当し、現在はデジタル部にて監督として活躍。
コメント
CG表現のこだわりはディテールです。
作画では難しい衣装や装飾、アイテム等の細かいディテールや、安野モヨコ先生の描くキャラの顔の印象をいかに忠実に再現できるかを意識しております。
あとは要所要所の3D空間での移動感や躍動感に関して、CGでしかできない要素を入れて手間をかけて表現しています。
見どころは、いつか大人になったショコラとバニラが「あんなことあったね。こんなことあったね。」と話し合いながら思い出の断片を語り合ってるような構成にしたく、二人の記憶に残ってるであろう思い出をカットとしてつなげてます。
原作では描かれていないショコラとバニラの二人がどのように試練を乗り越えて人間界に向かったのかを一緒に感じながら観ていただけると嬉しいです。
アニメーションプロデューサー 藤原滉平氏
1990年大阪府生まれ。2019年に株式会社カラーに入社し『シン・エヴァンゲリオン劇場版』では制作進行として参加。
『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』ではデジタル制作デスクを担当。
コメント
今作は短編ではありますが、制作開始時にショコラとバニラが巡るエリアごとに個性を出したいという監督の意図を叶えるため、多様なスタッフに参加いただきました。
特に3DCGのメインを担ってくださったMORIE Inc.のみなさんは、それを高いクオリティでアニメーションとしてまとめてくださったと感じています。
結果として様々な表現で舞台となった魔界の様子を、魅力的に描写できたかと思っています。
また、スタッフィングの観点からも、ご覧になる方々に、これまでのスタジオカラーが発表してきた作品とは違う一面も感じてもらいたいという気持ちもありましたが、完成した作品は十分にそういった楽しみ方もしていただけるものと感じています。
『シュガシュガルーン』あらすじ
『シュガシュガルーン』は、漫画家・安野モヨコ氏のマジカル・ラブ・ファンタジー漫画作品である。2003年から2007年に少女漫画雑誌「なかよし」(講談社)で連載。
物語は、魔界の次期クイーンを決めるため、小さな魔女のショコラとバニラが人間界におりたち、人間の恋するハートをめぐって勝負を繰り広げる、ラブあり冒険あり感動ありの正統派少女ファンタジー。ふたりの友情や恋のゆくえ、魔女ならではのキュートな世界観がとても魅力的な作品だ。
ティーンの女性を中心に絶大な人気を誇り、2005年に第29回講談社漫画賞児童部門を受賞。コミックスは、フランスをはじめとするヨーロッパ各国や韓国でも翻訳化され、世界中で楽しまれている。