2026年2月から放送が開始されたアニメ『名探偵プリキュア!』。エンディング(以下、ED)曲は「なぜ?謎?!ANSWER」で、本映像にはキュアアンサー、キュアミスティック、キュアアルカナ・シャドウの3人が登場。キャッチーな楽曲と覚えやすいダンスが人気を博し、さらに高品質な3Dアニメーションも高く評価されている。今回は全3回にわたり、メイキングを解説する。

記事の目次

    ※本記事は月刊「CGWORLD + digital video」vol. 335(2026年7月号)に一部、加筆修正を加えた転載となります。また、2027年6月30日(水)までの期間限定公開となります。

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    Information

    アニメ『名探偵プリキュア!』
    ABCテレビ・テレビ朝日系列全国24局ネットにて、毎週日曜日あさ8時30分より放送中

    原作:東堂いづみ/シリーズディレクター:川崎弘二/アニメーション制作:東映アニメーション/制作協力:東映/制作:朝日放送テレビ、ABCアニメーション、ADKエモーションズ、東映アニメーション
    www.toei-anim.co.jp/tv/precure
    ©ABC-A・東映アニメーション

    まつ毛から毛先、指にいたるまで細部までこだわり抜かれたモデリング&リギング

    EDはCGチームに高い自由度が与えられており、ルックの方向性から独自に検討された。本作では目のゆがみ表現、手の描写、服に厚みをつける、毛先のライン、まつ毛の分割など、細部にわたる多くの試みに取り組んでいる。

    キャラクターモデリングスーパーバイザーの坪川尚史氏が苦労したと語るのは、おとも妖精のポチタン。「ポチタンの口は別パーツでラインを出しているのですが、横顔でどうやって線を出すか調整を重ねました」と、最後まで頭を悩ませたという。リグはひき続き内製ツールmiRAを使用し、大きなワークフローの変更はないものの、ひざやひじなどの細部は丁寧に調整を重ねている。

    前列左から、CGディレクター・高橋友彦氏/絵コンテ&演出・近藤まり氏/CGプロデューサー・野島淳志氏/キャラクターモデリングスーパーバイザー・坪川尚史氏

    後列左から、CGラインプロデューサー・上野 翔氏/CGアニメーター・髙橋七奈氏/CGアニメーター・高野伊織利氏/CGアニメーター・國貞啓介氏/キャラクターモデラー・大澤健士郎氏/リギングスーパーバイザー・猪野高史氏(以上、東映アニメーション)/CGアニメーションスーパーバイザー・山口洋平氏(フリーランス)

    また、本作における課題は、セカンダリRagdoll Dynamicsをベイクした後に髪の毛のリグがずれてしまう問題への対処。ベイク後もリグのコントローラが正しい位置を保てるよう工夫が施された。リギングスーパーバイザーの猪野高史氏は「miRAはPythonでリグを組んでいるので、一度しくみをつくればほかに流用できます。モデルの修正も多いので、Pythonでリグを再構築できるしくみが活かせました」と、語ってくれた。

    キュアアンサーのモデル

    ▲キュアアンサーの設定画。本作のプリキュアはスカートのレイヤーが多く、特に髪の毛に加えて、スカートの重なり具合やボリューム感などのモデリングには手間がかかったという。また、服に厚みをつけたことで工数は約2倍に増加。なお、3DCGで破綻が出やすい衣装の重なりはモデル側で解決するのではなく、アニメーションで回避する方針を採った
    • ▲ワイヤーフレーム。ポリゴン数は三角換算で約18万。服の厚みなどの表現により増加している
    • ▲レンダリング後

    立体感のあるまつ毛の表現

    • ▲上まつ毛のワイヤーフレーム。本作では上まつ毛を上下2つに分割し、より立体感のある表現を実現している……
    • ▲これは目を閉じる途中の形状にこだわりたいという演出側からの要望を受けて採用された手法だ
    • ▲レンダリング画像。レンダリング時に不要なラインが出ないよう丁寧に調整することで、自然な目の表現を実現……
    • ▲まつ毛の立体感に加えて、目を閉じた際の美しさを両立させた仕上がりにされている

    毛先のラインの表現

    ▲本作のキャラクターデザインは髪の毛の先端に長く伸びたラインが描かれている。この2Dの設定で描かれたラインを3DCGでいかに再現するか、試行錯誤が重ねられた部分だ。画像は設定画通りにラインを表現したアルカナ・シャドウの例
    ▲最終的な解決策は、毛先に十字状の板ポリを重ねて配置し、ラインを生成する方法。当初はパスでの実現を試みたが、ビューポートでは問題なく見えるものの、毛先からずれてしまうため断念。その後もツール自作やテクスチャの板ポリ配置など様々な手法を検討した末に、この方式にたどり着いたという

    リグと筋肉の表現

    ▲キュアアンサーのリグ。前作からひき続き内製ツール「miRA」で作成され、筋肉表現も再現されている。衣装や髪の毛、身体のリグを全て表示するとその複雑さがよくわかる。制作期間は1~1.5ヶ月ほど
    • ▲ひじを曲げた様子。腕のふくらみの曲線を調整し、綺麗に曲がるよう設定されている。アンサーに施した内容はミスティックやアルカナ・シャドウにも共通して適用されており、筋肉の動きはキャラクター間で統一されている。特にミスティックとアンサーは顔以外の身体のリグは共通だ
    • ▲ひざを曲げたカット。ひざの曲線も丁寧に調整されている。なお、ひざ上のダイヤ模様はテクスチャで描くと歪みが生じるため、カスタムシェーダ「hitTrace」(※)を使用。これはオブジェクト同士の交点に色を乗せるカスタムシェーダで、ゆがみのない綺麗な模様を実現している

      「hitTrace」:詳しくは、本誌vol.326、連載「アニメCGの現場」(p82)アニメ『キミとアイドルプリキュア♪』にて解説しています。

    女の子らしい手を表現するブレンドシェイプ

    高橋氏はかねてより3DCGの指の形状に課題を感じていた。作画では柔らかく女の子らしい指が描かれるが、3DCGではその表現が難しい。今回はその再現のために、指の太さを調整できるしくみを新たに導入している。

    • ▲キャラクターデザイナーの矢野 茜氏による3DCGの指に対するフィードバック
    • ▲Mayaでの作業画面。左がデフォルト、右がブレンドシェイプ適用時で、主に指先が太く調整されている。ボーンでの実装が難しかったため、ブレンドシェイプで対応したとのこと。手は作画との差異が出やすい部分でもある。「かゆいところに手が届くようにしたかった。万全とは言えないが、一歩前進したと思います」(高橋氏)

    手のひらの膨らみの表現

    手のひらの膨らみも2箇所、調整できるように設定され、微妙なニュアンスの表現が可能になった。指のブレンドシェイプと組み合わせることで、手全体の表現力が大幅に向上している。

    • ▲手のひらのデフォルト状態
    • ▲親指の根元を膨らませた状態。クラスター的な動きで変形させている
    ▲小指の根元を膨らませた状態

    No.3へ続く。

    Information

    『映画名探偵プリキュア!不思議な庭と2人の秘密』
    2026年9月18日(金)よりロードショー

    監督:上田華子/原作:東堂いづみ/脚本:成田良美/音楽:深澤恵梨香、馬瀬みさき/キャラクターデザイン&総作画監督:宮本絵美子/美術監督:藤井里咲/色彩設計:竹澤 聡/撮影監督:新井拓己/製作担当:直田宏隆
    2026.precure-movie.com

    CGWORLD 2026年7月号 vol.335

    特集:『スマスロ ミリオンゴッド-神々の軌跡-』
    判型:A4ワイド
    総ページ数:118
    発売日:2026年6月10日
    価格:1,540 円(税込)

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    TEXT_石井勇夫(ねぎデ)
    PHOTO_蟹 由香 / Yuka Kani
    EDIT_海老原朱里 / Akari Ebihara(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada