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ゲーム開発から各種サービス運用、冠婚葬祭に至るまで多角的な事業を手がける面白法人カヤック。その中でも特にリアルタイム3DCG技術に長けた「面白コンテンツ事業部」が手がけたのが、『ソードアート・オンライン -エクスクロニクル- Online Edition』および同イベント内で行われた「EX-"LIVE"CHRONICLE」(エクスライブクロニクル)だ。同作の世界を駆け巡るVRならではの演出を実現した技術と、同事業部が見据えるビジョンについて、プロジェクトのコアメンバー2名に聞いた。

カヤックのリアルタイム3DCG開発専門チームが手がけた最新VRコンテンツ

――自己紹介と来歴をお願いします。

天野清之氏(以下、天野):カヤックのクリエイティブ・ディレクター/プロデューサーの天野です。以前は映像制作会社に所属しており、3DCG技術や映像制作のノウハウを学んでいましたが、15年ほど前から映像にインタラクティブな要素を盛り込むインスタレーション関係の仕事が増加したことがきっかけでプログラミングにも興味を持ちました。その後、映像制作だけでなくエンジニアの視点で働きたいと考え、11年前にカヤックへ入社しました。

  • 天野清之氏
    カヤック
    クリエイティブ・ディレクター/プロデューサー

永田俊輔氏(以下、永田):テクニカルアーティストの永田です。もともとWebサービスやアプリ開発・運営を行う会社に在籍しており、エンジニアやディレクターを務めてきました。5年ほど勤めたのち、コンテンツをつくりたいという願望を叶えるためにカヤックに入社しました。

  • 永田俊輔氏
    カヤック
    テクニカルアーティスト

――カヤックは多岐に渡る事業を展開していて、一概に「どういった会社か」を言い表すのが難しい会社だと思いますが、改めて会社概要について教えていただけますか?

天野:そうですね、カヤック全体では非常に多くの事業部があります。グループ会社まで含めると、ゲーム事業部やeスポーツ事業部、そして開発拠点となるアキバスタジオ、さらには冠婚葬祭までと、非常に広い分野で事業展開を行なっています。その中でも、われわれが所属しているのは「面白コンテンツ事業部」というリアルタイムレンダリングを中心としたコンテンツ制作を行う事業部になります。VRやAR、ソフトウェア開発から3DCG制作などの技術開発を長年行なってきました。

永田:私も以前はUnityやopenFrameworksを用いたリアルタイム描画系の展示コンテンツやVRコンテンツ開発を行う部署にいましたが、現在は天野のいる面白コンテンツ事業部に籍を置いています。

天野:全体で21名ほどの規模で、開発が7名、3DCGデザイナーが6名、UIデザイナーが2名、残りが制作・ラインプロデューサー、制作進行です。3DCGデザイナーという呼称については、当社ではモデラーやアニメーターなどの垣根はなく、全員が3DCGに関する業務を一括して担当できるような形になっています。もちろん得意不得意はありつつですが、コンテンツの一部分だけを延々作り続けるということはなく、汎用性のあるスキルを持っている方が多いですね。

――面白コンテンツ事業部が手がけた作品として、2021年11月に開催された体験型オンラインイベントである『ソードアート・オンライン -エクスクロニクル- Online Edition』上での「EX-"LIVE"CHRONICLE」があります。2022年は、原作内でソードアート・オンラインでのサービスが開始した記念すべき年であり、VRを舞台にした同作品が非常に盛り上がるタイミングかと思いますが、本作の企画段階のお話をお聞かせください。

天野:「EX-"LIVE"CHRONICLE」は、『ソードアート・オンライン -エクスクロニクル-』の主題歌を担当するReoNaさんがバーチャル空間上でライブを行うという内容になっています。この前段として、2020年12月にVRChat上で『ソードアート・オンライン』の世界を再現するイベントを行なっていました。アインクラッドを自由に歩き回れるほか、ダンジョン内ではスカルリーパーとの戦闘が体験できるという内容で、2日間の開催でしたが非常に好評をいただきました。このながれで、ソニーグループの技術協力を受けながら、別のプラットフォームで拡大したイベントを開催する運びとなりました。ソニーグループとの協業は5~6年単位で、本件に関しては企画から開発までを一括して当社が担当しています。

――本コンテンツの制作期間や人数規模などを教えてください。

天野:ReoNaさんのスペシャルライブに関わる部分だけで言うと、社内ではクリエイティブディレクションと演出監督を私が担当、モデラー2名、Unityエンジニア2名、当社が独自に開発したバーチャルカメラシステムの「ジャンヌ・ダルク」担当が2名、制作進行1名というかたちでした。制作期間は約2ヶ月です。

永田:DCCツールはMayaベースで、演出周りは全てUnity上で制御しています。エフェクトもUnity標準機能ですが、カメラワークのキーフレームにのみ内製ツールを用いています。これをレイヤー分けして動画へ書き出し、コンポジットを行なって完成となります。ただ、リアルタイムで出力した内容がほぼ全てで、コンポジットで大きく画をいじることはしていません。

天野:バーチャル空間で歌っていただくということで、ReoNaさんのバーチャルヒューマン化も必要でした。Nikonの一眼レフ170台で全身スキャンを行い、ラップでモデルの調整を行なった後にZBrushでメッシュリダクションを行いました。また、これを併せて、実際の歌唱や振り付けをモーションキャプチャ(OptiTrack)とグリーンバックを組み合わせることで収録しています。実際の映像では、カメラから近い場合は実写のグリーンバック合成、遠い場合はバーチャルヒューマンモデルを使ったアニメーションと使い分けています。

――背景のアインクラッドやはじまりの街の広場のモデルも、カヤックが制作したものですか?

天野:そうです。背景は調整の上で流用しており、VRコンテンツで使用していた3Dモデルの変換作業なども含めて永田が担当しました。このあたりの制作や企画立案段階から含めると、1年以上に及ぶプロジェクトになっています。

――ライブ演出の中で、特にこだわった部分はありますか?

永田:私自身はエフェクト作成全般と、プロシージャル系の表現の実装などを行なっていますが、例えば草原のシーンなどは3Dモデルを一切使わずプロシージャルなつくりになっています。このあたりのシェーダ開発などに力を入れており、見どころのひとつになっているかと思います。

永田:あとは、空間演出系でしょうか。本作はHDRPで描画しており、一部Shader Graphを使用しています。特に評判だったのは、ReoNaさんがポリゴン化して空間を移動していく演出です。基のモデルのポリゴンとは別に、シェーダでポリゴンを三角形に分割してパーティクル化しています。個別にモデルをつくって配置する手法だと、作業時間に対して画面内の密度の埋まりが薄いので、プロシージャルなつくり方を基本にしています。

――演出・ルックともにソードアート・オンラインの世界観に合った内容だと思います。実際にライブを観たユーザーの方からのフィードバックや反応はいかがでしたか?

天野:評判は爆裂に良かったですね。ものすごく褒めていただきました。Twitter上での反応も良かったですし、アンケート内容も好意的だったと聞いています。映像もほかにない、観たことのないものだったとフィードバックをいただいていて、ReoNaさんの歌唱力も相まって非常に良いコンテンツになっていたのではないかと思っています。

――技術的に気になった点として、実写映像とバーチャルヒューマンを同じカメラワークでつなげて行き来している部分について、どのように実現しているのか解説をいただけますか?

天野:これは当社が開発したジャンヌ・ダルクというバーチャルカメラシステムを活用した事例になります。モーションキャプチャスタジオのカメラにセンサーを取り付け、ジャンヌ・ダルク上にカメラの位置情報や回転情報をもっていき、VR空間にフィードバックしています。グリーンバック撮影を行なったReoNaさんとバーチャルヒューマンのモデルは同一の空間座標にいるので、自由にカメラワークを行うことが可能です。

――バーチャルカメラシステムそのものを内製しようとした理由を教えてください。

天野:バーチャルカメラシステムは世の中にたくさんありますが、どれもちょっとちがうなと考えていて。「もっと自由にバーチャル空間でカメラを使いたい」、「もっと汎用性が高い設計にしたい」と考えた結果、内製をする結論を下しました。自分たちが適切なときに適切なものを配信するために、1年ほどの期間をかけて開発を行いました。カヤックはこういう根っこの部分からの開発も得意なんです。

永田:ジャンヌ・ダルクでカメラ操作を行うと、実際のカメラで撮影したときのようにキーフレームが打たれていきます。本作では、スタジオ撮影したカメラの位置データに繋いでレンダリングをしたりもしています。ジャンヌ・ダルクのためにUnityのTimeLineもカスタマイズしており、レンダリングや描画周りとカメラワークのフローを分離したことで効率化にもつながっています。

既成概念にとらわれない高度な画作りを可能とする組織を目指す

――面白コンテンツ事業部にはゼネラリスト型の3DCGデザイナーが多いと伺いましたが、改めて事業部独自の強みについて教えてください。

天野:あまり他分野を嫌わないメンバーが多いとは感じています。スペシャリストも重要ですが、得意不得意がありながらも全体を見ることのできる人材が多いのが強みと言えると思います。

永田:先ほどの話にも通じますが、いい意味で今の時代に合ったゼネラリズムを全員が持っています。割となんでもやってみる、取り入れてみる、他の職種のことに興味があるメンバーが多い。それによって成り立っている組織であり、分野ごとの交わりが強固だからこそ生まれるコンテンツもあると考えます。エンジニアでも「画作りの面はデザイナーが全部やってくれる」と考えず、主体的にクオリティの部分を考える。プリミティブなものなら自分でMayaでつくってしまうし、シェーダによって解決する方法もある。良いものをつくるためなら、なんでも行動するような雰囲気はありますね。

――現在行なっている求人募集ですが、この背景について教えてください。

天野:われわれはリアルタイムレンダリングを基軸としたインタラクションのあるものを軸としています。ただ、そこにフォーカスすると誤解が生まれやすい時代でもあります。「リアルタイムだからクオリティはマイルドなものでいいよね」ということはありません。今後数年で従来のプリレンダーに匹敵する3DCGがリアルタイムでも生み出せるようになるだろうと予測していて、そこにはハイエンドゲームの開発技術が必要になるだろうと考えています。例えば、ここ6~7年ほど続くVRやメタバース分野の盛り上がりですが、これまではクオリティがある程度低いものでも許容されてきました。ところが、今は業界的に求められるクオリティの水準がどんどん上がってきていますよね? ですから、われわれもハイエンドな3DCG技術を取り入れる必要があります。求人募集の背景で言えば、VR関連の企画は今非常に通りやすくなっていて、案件数も純粋に多い状態なので、とにかくCGクリエイターの戦力を増強したいと考えています。

――どういった方と一緒に働きたいですか? また、面白コンテンツ事業部に向いていると思う人材の特徴はありますか?

天野:スキルとしてはMayaや3ds Maxが使えるモデラー、アニメーターを募集しています。というか、カヤック自体、こういうリアルタイム3DCGの大きな案件をやっていると思われていないというか、そういうイメージがないようで......。ぜひ、フォトリアル系の表現が得意な3DCGクリエイターの方に来ていただきたいと思っています。

永田:ゼネラリストと言いつつも、各自の専門性の重要性を理解している方、良いバランス感覚を持っている方が望ましいです。今のチーム規模だと、横断的な動き方が大切で、時代的にも少人数で大きなコンテンツを自由につくれるようになっている一方で、特化した専門性の重要性も当然残っています。今時分はこうだけど、10年後はこうだろう、といった未来を見据えて動ける方が良いだろうと思います。

天野:あとは、新しいテクノロジーに抵抗がない方ですね。好きで貪欲で、自発的に勉強をしている人の方が結果的には伸びてしまう分野でもあるので、独学が好きな人が向いていると思います。いわゆる「やらされ仕事」ではなく、自分で考えて進めるプロジェクトも多いですし、自分の考えがある方は歓迎するチームです。当社のアピールポイントとしては、働き方自体はかなり柔軟なほうだと思います。リモートワークもそうですし、仮にタスクが積み重なって「もう無理です!」となっても周りが助け合って、今後どうするかを考える空気感はあります。

永田:自分の感覚では、いい意味でみんながスタンドアローンというか、みんな「自分ドリブン」で動きはしますが、その根底にはチームメンバーへの信頼があるんです。それぞれのスタンドアローンを信頼しながら働いていて、自分の仕事に専念できる環境にあります。

天野:自由だと言っても、定例ミーティングなどはあるので、もちろんチームで働いています。言われて動くより、自己管理をしながら仕事をこなしていく人が多いのかも知れません。みんな、お互いが良かれと思って動いている感じはあります。

――ありがとうございます。最後に、今後のビジョンを教えてください。

天野:今の20名規模から、5~10名程度は増やしていきたいです。規模を拡大して、現在パートナー企業にお願いしている部分も内製でやっていきたいという思いが強いですね。マネジメントキャリアというよりは、現場で手を動かした経験のある方のステップアップの場として良い環境だと考えています。皆さんの応募をお待ちしています。

――本日は、ありがとうございました。

■求人情報

  • カヤック
    ▼募集職種
    ①テクニカルアーティスト
    ②3DCGデザイナー(ゼネラリスト)
    ③プログラマー
    ④ディレクター
    ⑤プロダクションマネージャー
    ⑥映像クリエイター
    ⑦モデラー
    ⑧アニメーター

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