ヤングアニマル連載中のコミック『ロックは淑女の嗜みでして』(以下、『ロックレディ』)。主人公は親の再婚で、庶民から不動産王である鈴ノ宮家の娘になった、高校1年生の鈴ノ宮りりさ。大好きだったロックとギターを捨て「お嬢様らしく」振舞う努力をしていた彼女だったが……。

「お嬢様×ロック」の青春譚が大人気の本作。アニメ化にあたっては世界的な人気を誇る日本のガールズロックバンド「BAND-MAID」がモーションキャプチャを務めたことでも話題になった。今回はそのCGメイキングを4回に分けて紹介する。第2回となる今回はキャラクター制作について解説。

記事の目次

    関連記事アニメ『ロックは淑女の嗜みでして』BAND-MAIDによるモーションキャプチャが話題! (1)ワークフロー篇

    ※本記事は月刊「CGWORLD + digital video」vol. 323(2025年7月号)に一部、加筆修正を加えた転載となります。

    バンド「Rock Lady」のりりさ、音羽をはじめとする4人のキャラクターモデリング

    本作で制作されたキャラクターモデルはバンドメンバーの鈴ノ宮りりさ黒鉄音羽院瀬見ティナ白矢 環の4人。このうち環を除く3人は同じ高校であるため、身体は共通の制服をベースにつくり、各キャラクターのプロポーションの個性に応じて調整が行われた。

    作中でのバンド演奏は私服を含めて数種類の衣装を纏うが、特に工数が多かったのは冬服の学生服だった。スカートの動きを美しく見せるため、モデリングディレクターの樋口博和氏はセットアップディレクターの大島渓太郎氏と相談しながら、ポリゴンの割を増やすなど工夫を凝らしたという。

    また、顔の作成においては、俯瞰やアオリ視点で顎が出すぎる現象や頬のシャープなラインの見え方などの調整が重点的に行われた。2Dによる日常シーンから3Dの演奏シーンに移ったときに違和感がないよう、設定画に寄せる顔の造りには細心の注意を払ったという。

    樋口氏は「普段いただく設定画ですと作業の都合上、左右対称になるよう顔周りの調整をおこなうのですが、今作は左右対称になっていてスムーズに作業入れて助かりました」と話す。と話す。制作期間は1体あたり約2ヶ月、衣装のみでは1ヶ月程度だったという。

    ギタリスト・鈴ノ宮りりさのモデル

    ギタリストの鈴ノ宮りりさ。大きなツインテールの髪型が特徴で、演奏中の揺れ方には注意を払った。「基本的にリアル寄りで、少し硬さを残しています。カットバイで動きを付け、演奏中に迫力が出るところでは髪も大きく動かし、少ないところでは抑えめにしています」(坂口氏)。

    ▲りりさの設定画と表情の例。情熱的な表情参考が数多く描かれている
    ▲りりさのモデル
    ▲レンダリング後のモデル(38,120ポリゴン)

    ドラマー・黒鉄音羽のモデル

    ドラマーの黒鉄音羽。りりさに出会う以前から旧校舎の音楽室でひとりドラムの練習に明け暮れていた。普段は穏やかなお嬢様だが、プレイに入ると感情的になり、演奏で挑発したり本気を出していない演奏に対しては口汚く罵ったりもする。

    ▲音羽の設定画。りりさと比べて頭ひとつ分ほど長身。腰まである髪の毛と豊かな胸元が特徴
    ▲音羽のモデル
    ▲レンダリング後のモデル(39,756ポリゴン)。「唯一のロングヘアーのキャラクターですので、いかに綺麗に揺らせるかを序盤の時間がある段階で研究しました」(樋口氏)

    キーボーディスト・院瀬見ティナのモデル

    キーボーディストの院瀬見ティナ。長身で中性的なルックスのため、学園では「桜心の王子」と呼ばれているが、本当は自分に自信がなく、周囲の望む姿を演じてしまっている。本当の自分を探すためバンドに加入。

    ▲ティナの設定画。音羽よりも長身。制服のときは豊かな胸を矯正下着で抑え込んでいる設定だが、このステージ衣装では魅惑的な身体のラインが現れている
    ▲ティナのモデル
    ▲レンダリング後のモデル。作中では小柄なりりさのTシャツを借りて無理に着ている設定で、モデルでもTシャツが引っ張られてピチピチした感じやシワ感がテクスチャとポリゴンで表現されている

    ベーシスト・白矢 環のモデル

    ベーシストの白矢 環。凄腕ギタリストとして知られ、多くのバンドから誘いを受けるが、ある事情により幼少期から志していたベーシストとしてプレイする。自分にも他人にも厳しく、幼馴染の音羽に対して強い執着を見せる。桜心女学園の姉妹校・黒百合女学園に通い、茶道部に所属する一面も。

    ▲環の設定画。りりさと音羽の中間ぐらいの背丈
    ▲環のモデル
    ▲レンダリング後のモデル。制作時には線画しかなく、後頭部の刈り上げ表現については何度もやり取りをくり返したという

    モーションキャプチャ用のモデル

    モーションキャプチャに使用したモデル。プロポーションについてOKが出た段階の、30%程度のラフモデルを使用しており、MotionBuilderのControlRigでセットアップされている

    ▲りりさのモデル(19,287ポリゴン)
    ▲音羽のモデル(19,749ポリゴン)。ドラムステックを持たせている

    (3)セットアップ篇に続く。

    CGWORLD 2025年7月号 vol.323

    特集:『KEMURI』
    判型:A4ワイド
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    発売日:2025年6月10日
    価格:1,540 円(税込)

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    TEXT_日詰明嘉Akiyoshi Hizume
    PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota
    EDIT_海老原朱里(CGWORLD)/Akari Ebihara、山田桃子 / Momoko Yamada