初音ミク GALAXY LIVE 2021
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昨年12月に開催されたVRライブ『初音ミク GALAXY LIVE 2021』のアートディレクションとCG制作を手がけたライノスタジオが、クリエイティブディレクター/クリエイティブアシスタント、アートディレクター、テクニカルアーティスト(以下、TA)、アニメーターを募集中だ。いずれも同社のAR/VRコンテンツ制作を支える要職となる。本記事では各職種の仕事の実際を『初音ミク GALAXY LIVE 2021』を事例に紹介する。ポートフォリオやデモリールなど、応募時の注意点にも言及するので、求職中の読者は参考にしてほしい。

TEXT_尾形美幸 / Miyuki Ogata(CGWORLD)
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota

記事の目次
▼VRのレベルデザインでは、最初の30秒がすごく大事
▼プロトタイプが特に重要。つくり方を学びたい人も歓迎
▼見せてほしいのは、アイデアと、それを実現する力

VRのレベルデザインでは、最初の30秒がすごく大事

ライノスタジオはゲーム制作を専門とするメンバーによって2005年に設立された。その後、『AFRIKA』(2008/PlayStation 3)の企画制作などを経て、近年はAR/VRコンテンツ制作を数多く手がけるようになっている。『初音ミク GALAXY LIVE 2021』、『VRデビルマン展』(2021)のようなエンターテインメントから、『縛られたプロメテウス』(文化庁メディア芸術祭 第24回 アート部門 大賞)のようなアートまで、ジャンルは多岐にわたる。


  • 谷口勝也氏(CTO/アートディレクター)
  • 「2017年以降、当社では様々なAR/VRコンテンツを手がけてきました。そのノウハウを基に、実現可能な企画に落とし込み、制作まで一貫して担当できるのが当社の強みです」とCTO/アートディレクターの谷口勝也氏は語る。


アニメーター出身の谷口氏は、キャラクターのモーションはもちろん、カットシーン制作の経験も豊富で、それらが今の仕事に活きているという。「VRはカメラ移動とプレイヤー移動がほぼイコールなので、カメラのパスを引く感覚で空間と時間軸をデザインすると、わりと上手くいきます。カットシーン制作でのカメラの経験が、そういうところに活かせていると思います」(谷口氏)。

  • シニアアーティスト/ディレクターの田代浩章氏はゲームの背景アーティスト出身で、谷口氏と共に同社のAR/VRコンテンツを手がけてきた。「谷口はVRに強くて、どんな揺れでも全く酔いません。逆に僕はすごく酔いやすいので、テストプレイヤーとして最適です(笑)」(田代氏)。

  • 田代浩章氏(シニアアーティスト/ディレクター)


AR/VRコンテンツに携わるスタッフには、1人1台のVRヘッドセットが支給されており、つくっては確認するサイクルを小まめに繰り返している。「クライアントからは、"VRコンテンツをつくりたいんですが、どうやったら面白くできますか?" といった感じで、企画段階からご相談をいただくことが多いです。面白いコンテンツに仕上げるには、ゲームと同様に、レベルデザインが重要になってきます」(谷口氏)。

VRコンテンツのレベルデザインでは、3D空間のデザインに加え、時間軸のデザインも求められる。例えば、プレイヤーの上空に構造物を配置して "くぐる体験" をしてもらう、VR世界に没入できる演出を最初の30秒間に入れるといったことだ。「高い満足感を得ていただくには、最初の30秒がすごく大事です。最初にしっかり没入できれば、最後まで楽しんでいただけます。逆に最初の没入感が低いと、それ以上の没入は難しくなるんです」(谷口氏)。

プロトタイプが特に重要。つくり方を学びたい人も歓迎

ライノスタジオは『初音ミク GALAXY LIVE 2020』(2020年9月開催)の制作にも参加しており、全8曲中4曲を担当した。そこでの働きが評価され、『初音ミク GALAXY LIVE 2021』では全12曲のアートディレクションとCG制作を一括で担うことになった。「VRの良さを活かしたアイデアと空間構成、それらを実現する制作力を評価していただいたんだと思います」(谷口氏)。

▲『初音ミク GALAXY LIVE 2020』1曲目「水色侵略」のライブ風景

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▲『初音ミク GALAXY LIVE 2021』1曲目「水色侵略」のライブ風景。前年とは全くちがう空間構成で、ミクの背後にある階段状の造作は歌唱中にダイナミックに変形する。メインツールはMayaとUnityで、HoudiniやSubstance Designerなども活用している

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『初音ミク GALAXY LIVE 2021』の制作は、2020年12月頭に、字コンテやラフスケッチを見ながらアイデアを出し合うことからスタートした。「プロデューサーや演出家のプランに対し、どんどんアイデアを乗せていくのが僕たちのスタイルです。アイデアを出す前には、メチャクチャ資料を集めます。僕は現代美術や写真が好きなので、そこからアイデアを膨らませることが多いです」(谷口氏)。

『初音ミク GALAXY LIVE』は、文字通り「銀河」や「宇宙」がコンセプトの核になっている。加えて、2021年は「遊園地のライドに乗っているような、劇的な場面転換を実現したい」という方針が示された。「それをどう実現するかが、初期の大きな課題でした。いろいろなアイデアを出し、3月頃からは全12曲のプロトタイプ制作に着手し、試行錯誤を重ねました。全曲同時並行で進めたのではなく、時期をずらして1曲ずつ仕上げていきました。最後の楽曲のプロトタイプが完成したのは7月頃でしたね」(田代氏)。プロトタイプ制作では、キャラクターとカメラの動線、背景のレイアウトを、キューブなどのプリミティブを使って検討していった。

▲『初音ミク GALAXY LIVE 2021』2曲目「砂の惑星」のライブ風景。歌詞にちなんだサンダーストームの中で歌うミクが印象的だ

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プロジェクトの初期から参加したライノスタジオのアーティストは、谷口氏、田代氏を含む4名で、グラフィックの完成度を上げる段階になると最大で約10名まで増員された。なお、『初音ミク GALAXY LIVE 2021』を実施したINSPIX WORLDを運営・開発しているパルスからは約10名のエンジニアが参加しており、ライノスタジオのTAが、アーティストとエンジニアの橋渡しを担った。

アートチームは、クリエイティブ・アートディレクターである谷口氏と、ディレクターである田代氏が主導しており、モデラー、アニメーター、エフェクトアーティスト、TAで構成されている。少人数チームのため、緩い分業制をとっており、手が空いている人はほかの職種の仕事も手伝う。「専門分野を伸ばしつつ、ゼネラリストとしても成長したい人がフィットしやすい職場です。リモートワークの人と、そうでない人の割合は1:1くらいです。ディレクター職は各所とのコミュニケーションの頻度が高いので、出社する人が多いです」(田代氏)。

▲『初音ミク GALAXY LIVE 2020』3曲目「バイオレンストリガー」のライブ風景

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▲『初音ミク GALAXY LIVE 2021』4曲目「バイオレンストリガー」のライブ風景。こちらも前年とは全くちがう空間構成で、色彩も青から赤へと大胆に変化している

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プロトタイプ制作と併行して、ステージのデザイン、ライド演出のためのシステム開発なども行われ、プロトタイプが完成した楽曲から、順次グラフィックの完成度が上げられた。「プロトタイプ制作が特に重要なので、そこに時間をかけます。プロトタイプの段階で "良いね" "おもしろいね" と思えないものは、グラフィックの完成度を上げても良くならないんです」(谷口氏)。今はプロトタイプ制作を谷口氏が一手に引き受けており、この状況を変えたいというのが、今回の主な求人理由となっている。

「プロトタイプはコンテンツの設計図や仕様書に相当するものなので、良いものに仕上げるには知識と経験を要します。それをつくれる人を、クリエイティブディレクター、あるいはアートディレクターとしてお迎えしたいです」(谷口氏)。クライアントとの話し合いの窓口になってプロジェクトを推進したいならクリエイティブディレクター、クリエイティブディレクターとアートチームの橋渡しを担いたいならアートディレクターが向いているとのことだ。

「どちらの適性があるかわからない人は、クリエイティブアシスタントとして僕の手助けをしながら、仕事の理解を深めていただきたいと考えています。VRの開発経験がある人は限られているので、入社早々プロトタイプをつくれる人だけを求めているわけではありません。興味があって、つくり方を学びたい人も歓迎します」(谷口氏)。制作にまつわる情報を社内で共有するSlackチャンネルや、セミナー受講・映画やライブ鑑賞・教材購入のための費用を会社が負担する制度もあるので、積極的に活用してほしいと田代氏は補足した。

▲『初音ミク GALAXY LIVE 2020』4曲目「マカロン」のライブ風景

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▲『初音ミク GALAXY LIVE 2021』5曲目「マカロン」のライブ風景。ミクの背後の造作の模様は有機的に動くようになっており、開発中盤まではTAがつくったシェーダで表現されていた。しかし処理負荷を下げる必要があり、開発終盤でテクスチャのUVスクロールに置き換えられた。このようなシェーダをつくったり、処理負荷を下げるための対策を提案できるTAも募集中だ

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▲『初音ミク GALAXY LIVE 2021』6曲目「カガリビト」のプロトタイプのデータ。Tポーズの状態でミクの動線を検討している。モーションキャプチャ時には、プロトタイプを見せながらアクターに動線を説明するという。プロトタイプ段階のモーション制作やカメラワーク、キャプチャ時のアクターへの説明などを担えるアニメーターも募集中だ

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▲『初音ミク GALAXY LIVE 2021』6曲目「カガリビト」の制作中盤のデータ

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▲『初音ミク GALAXY LIVE 2021』6曲目「カガリビト」のライブ風景

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見せてほしいのは、アイデアと、それを実現する力

『初音ミク GALAXY LIVE 2021』は「スマホで楽しめるVRライブ」という敷居の低さも大きな特徴だった。しかし、ハイスペックのVRヘッドセットに比べれば、スマホは圧倒的に処理能力が低いため、制作の中盤〜終盤は処理負荷との闘いになった。「視聴を続けていると、どんどんスマホが発熱していくんです。発熱すればするほど処理能力が落ちるので、いかに発熱を抑えるかが肝要でした」(谷口氏)。

プロトタイプでは面白さを優先し、制作中盤までは見映えを重視し、終盤で処理負荷を下げる対策を講じるのがライノスタジオのスタイルだ。「中盤までは処理負荷度外視で、面白さと見映えを追求します。いったん理想を掲げてから最適化した方が、ギリギリのバランスを見極められると思っています」(田代氏)。

▲『初音ミク GALAXY LIVE 2021』7曲目「ヒバナ -Reloaded-」のライブ風景。ライブ中盤からはミクがステージを抜け出し、巨大なゴーレムが登場する。基本的にユーザーの視線はミクを追っているので、その視線の延長線上からゴーレムが登場するように動線が設計された

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▲『初音ミク GALAXY LIVE 2021』10曲目「未来最終戦争」のライブ風景。楽曲のBPMに合わせてライトやエフェクトを設定できるツールもTAが開発している

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前述したように、ライノスタジオではクリエイティブディレクター/クリエイティブアシスタント、アートディレクター、TA、アニメーターを募集しているわけだが、いずれの職種においても、アイデアをたくさん出せる人は特に歓迎するとのことだ。「例えば、クリエイティブアシスタント志望の学生さんであれば、自分で企画・制作した作品を見せてほしいです。3DCGやエンターテインメントと無関係のインスタレーション作品などでも構いません。見たいのは、アイデアと、それを実現する力です。いろいろなアイデアを考え、取捨選択を経て、苦労して実現した経験は、きっと僕たちの仕事の中でも活かせます」(谷口氏)。

TAとアニメーターに応募する人は、アイデアに加え、技術力とセンスも見せてほしいとのことだ。「例えばシェーダをつくるときには、技術力に加え、つくったシェーダが美しいか否かを判断するセンスも必要です。それが伝わる成果物を送ってもらえると有り難いです。アニメーターは実務経験者のみを募集しているので、ご自分の仕事や自主制作の中から、技術力とセンスが伝わるものをデモリールにまとめてお送りください」(田代氏)。

AR/VRとリアルタイムCGを駆使した次世代の表現を追求するライノスタジオ。そのビジョンに興味をもった人は、ぜひ応募してほしい。

▲『初音ミク GALAXY LIVE 2021』11曲目「ロンリーユニバース」のプロトタイプのデータ。まだまだシンプルな状態だが、重要な構成要素はほぼ含まれているため、チームメンバーであれば最終的なライブ風景を想像できる。これを基に善し悪しを議論し、完成度を高めていく

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▲『初音ミク GALAXY LIVE 2021』11曲目「ロンリーユニバース」の制作中盤のデータ

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▲『初音ミク GALAXY LIVE 2021』11曲目「ロンリーユニバース」のライブ風景

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▲『初音ミク GALAXY LIVE 2021』12曲目「ノヴァ」の制作中盤のデータ。ライブのフィナーレを飾るにふさわしい、光とエフェクトを多用したリッチな演出が提案された

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▲『初音ミク GALAXY LIVE 2021』12曲目「ノヴァ」のライブ風景。2020年からの進化に多くのファンが驚愕し、クライアントからも高く評価された

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■求人情報

ライノスタジオ
■募集職種(採用予定人数)
・クリエイティブディレクター/クリエイティブアシスタント(2名)
・アートディレクター (1名)
・テクニカルアーティスト (2名)
・アニメーター(1名 ※実務経験者のみ)

求人内容の詳細は以下をご覧ください。
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