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映画『永遠の0』〜VFXクオリティを高めるための実写素材への強いこだわり〜

映画『永遠の0』〜VFXクオリティを高めるための実写素材への強いこだわり〜

Volition 2
1/1スケールの零戦21型

本作においてもうひとつの主役とも言える零戦21型は、1/1スケールで1機丸ごと再現された。モデルの参考には、プラモデルメーカーのタミヤや雑誌等で零戦のCGモデルの監修をしている原田敬至氏の協力の下、ボディラインを決定していった。当初は全て実際の零戦とまったく同じ素材と工法での制作を考えていたのだが、予算や現在の技術では再現しづらい点、また取り回しのしやすさから、内部にベニヤ材を使いつつ、表面は板金で仕上げて本物に限りなく近いレベルになるよう再現された。
また作品内での時間の経過やシチュエーションに合わせて塗装や形状がいくつも用意され、たとえ実際にその時代に生きた人が見ても納得できるレベルまで時代考証がされている。撮影は赤城の甲板のオープンセット上や大映スタジオを利用して進められたのだが、白組 調布スタジオの過去プロジェクトでは6軸の制御システムを使用していたところを今回はあえて自動ではなく零戦を柔軟な動きに対応できるよう、単管を機体の下にセットして人力で動かして撮影された。また、コクピット周辺の寄りのアングルや内部からのアングルに対応するため、プロペラのみならず各パーツが取り外し、組み直しが利くようにあらゆるアングルでも撮影ができるような配慮がなされた。コクピットのショットでは窓ガラスを付けたまま撮影されたのだが、そうすることでキャストの動きに合わせて反射した姿が映り込むため、よりクオリティの高い映像に仕上がったとのこと。

零戦21型制作の様子。様々なロケ地に輸送することを考慮し、4tユニック(車両積載型トラッククレーン)2台で組み立て、可搬できることを前提に、零戦のパーツ分割ラインが設計されたという

コックピット内ショットの前景プレートと完成カットの比較。過去プロジェクトにおける教訓から、窓ガラスを付けた状態で撮影することによってキャストの芝居に完全に連動した映り込みを得ることが可能となり、コンポジット精度を高めることができた

(左)東宝スタジオの駐車場敷地での撮影模様/(右)零戦自体の動きが伴うショットの撮影模様(プロペラは3DCG素材を合成)。より複雑な動きを再現するために、あえて人力で動かしている

コックピット内のショットを撮影する際は、キャノピーなどの風防パーツを取り外し、別途セットが組み直された。また、自然光の下での撮影が徹底されたことも窺える

映画『永遠の0』VFXメイキング(2)赤城から出撃する零戦

Volition 3
約20時間もの空撮を敢行

本作には空撮カットが数多く存在する。その大半が空撮された背景プレートを基に制作されたものである。撮影データは全20時間にもおよぶこれまでの邦画の中でもトップクラスであるが、今作のクオリティを担保するためには絶対に必要という判断により撮影が行われた。赤城のシークエンスでは海上自衛隊の護衛艦「たかなみ」や北海道苫小牧と茨城県大洗を結ぶ定期船「さんふらわあフェリー」の協力の下、山崎監督が描いた絵コンテを基に作成されたプリビズを参考にアングルを探していった。
戦闘機による空中のシークエンスは筑波や奄美大島にて撮影されたのだが、高速に背景がながれるカットでは空素材を繋ぎ合わせたマップを天球状のモデルに貼りつける等で対応したとのこと。この作業の特筆すべき点としては、ある程度Maya上でアニメーションを付けてからNUKE上で背景作業を進められたところにある。こうすることによって3DCGにいちいち戻る必要がなくなり、コンポジターの判断で背景の移動量や角度を迅速に調整できるようになったのは、これだけ空中のカットの多い本作にとって非常に有効な手段だったと言えよう。また、プリビズの制作には空戦のアニマティクス制作に定評ある栃林 秀にプレビズアドバイザーとして参加してもらい、空戦ならではのリアリティのあるカメラワークやレンズ選び等のアドバイスを受けつつ、ドキュメンタリー映画的な臨場感を意識しながら画面が構築された。

たかなみ型護衛艦をターゲット船とした海上シーンの空撮フッテージと完成カットの比較(デイシーン)

たかなみ型護衛艦をターゲット船とした海上シーンの空撮フッテージと完成カットの比較(夕景)

空撮の様子。ヘリの側面にカメラ特機が付けられている。演出部が空撮素材専用の管理シートを用意し、撮影したその日のうちにフッテージを確認しながら、どのカットに用いるか決めていったという

筑波山周辺における空撮フッテージと完成カットの比較(デイシーン)

奄美大島における空撮フッテージと完成カットの比較(夕景)

TEXT_谷口充大(テトラ
EDIT_沼倉有人(CGWORLD)
PHOTO_大沼洋平

『永遠の0』

2013年12月21日(土)全国東宝系ロードショー
原作:百田尚樹『永遠の0』(太田出版)
監督・VFX:山崎 貴
脚本:山崎 貴/林 民生
キャスト:岡田准一/三浦春馬/井上真央ほか
VFXディレクター:渋谷紀世子
プレビズアドバイザー:栃林 秀
制作プロダクション:ROBOT
VFXプロダクション:白組
配給:東宝
http://www.eienno-zero.jp
©2013「永遠の0」製作委員会

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