>   >  少数精鋭でハリウッドVFXに匹敵するクオリティを生み出す秘訣 "Our Greatest Adventure -ARES Live-"(映画『オデッセイ』バイラル動画)
少数精鋭でハリウッドVFXに匹敵するクオリティを生み出す秘訣 "Our Greatest Adventure -ARES Live-"(映画『オデッセイ』バイラル動画)

少数精鋭でハリウッドVFXに匹敵するクオリティを生み出す秘訣 "Our Greatest Adventure -ARES Live-"(映画『オデッセイ』バイラル動画)

<3>星雲や火星などの表現

真のチームワークの実現こそがツールの混在を可能にする

前述のとおりワルシャワチームがエルメスなどのショットを担当。その一方では、"Star Talk"※2)と名付けられたシーンの要の表現である星雲VFXについては、ヴロツワフのチームが担当した。SIのICEにて生成されたボリューメトリックな雲を画像として出力した後、3ds Maxにてシンプルなジオメトリにプロジェクションしてレンダリング。さらにマットペイント等でディテールを付加し、ワルシャワチームでのコンポジット作業へと引き継がれた。また、火星へカメラが降下していく(俗にいう"コズミックズーム")ショットは、Juice.にとってチャレンジングなショットになったというが、こちらは3Dスキャンによる火星の地形データを基に、3D-Coatを用いてスカルプトした高密度ジオメトリをMayaに読み込み、Arnoldでレンダリングして仕上げている。

その他の火星のショットでは、火星のテクスチャを1枚に繋いだものからSIにてプロシージャルに地形を生成するフローを採用。レンダリングは同じくArnoldだ。ちなみに、本作冒頭の火星の地表カットのみMPCが制作した本編のショットが流用された。Star Talkシーン内で描かれる宇宙飛行士のホログラム映像については、Juice.がZBrushでスカルプトした宇宙飛行士スーツに対して、3Dスキャンした役者たちの顔面のジオメトリを当てはめて作成。そしてCINEMA 4Dプラグイン「X-Particles」にて、モーショングラフィックスレイヤーのセットとしてレンダリングされている。そんなStar Talkパートのモーショングラフィックスを担当したのはリードデザイナー兼アニメーターを務めたマイケル・リグリー/Michael Rigley氏とのこと。

このほか、DNAが崩壊するショットではMaya(SOuP、 nParticles)が、エルメスに対するダメージ表現についてはthinkingParticles for 3ds Maxが用いられるなど、本プロジェクトではアーティストごとに様々なツールが使われているが、その選定は各アーティストに委ねられていた。
「担当アーティストはそれぞれに気に入ったツールを用います。監修するという観点では、クレイジーなミックスに思われるでしょうし、実際にクレイジーです(笑)。ですが、目指すビジュアルをしっかりと共有することでコントロールされた、真にチームワークと呼べるものがあってこそ成り立つ、まさにJuice.独自の作業スタイルですね」(ヤクブVFX兼CGスープ)。

※2:Star Talk
本作の語り部であるニールが現実の米National Geographic Channelでホストを務めるトークショーの名称でもある。つまり、『ARES』はモキュメンタリー(モック・ドキュメンタリー)として描かれた


3−1.DNAのダメージ表現

太陽光の紫外線によってDNAが崩壊するエフェクトはMaya上でSOuPとnParticles、nClothを組み合わせて表現された

ダメージFXのアニメーション

完成ショット

3−2."Star Talk"の星雲エフェクト

ICEで作成された星雲のベース素材となるボリュームエフェクト。これをレンダリングして2D化させた素材を3ds Maxに読み込み、シンプルな3Dジオメトリに対してプロジェクションさせることでデータ負荷が軽減された




「StarTalk」シーンのブレイクダウン。上段から順に、<1>(左)実写プレート、(右)マットペイント/<2>(左)パーティクル素材、(右)コンポジット処理を施したパーティクル素材/<3>(左)宇宙飛行士キャラクター素材、(右)星雲素材等を合成した状態/<4>完成形。ニール博士の実写プレート以外は全てCGで構成されていることがわかる

"Our Greatest Adventure -ARES Live-" ブレイクダウン映像
movie courtesy of Juice.


[credits]

制作:3AM&RSA Films
監督:Chris Eyerman and Ash Thorp/撮影監督:Tony Wolberg/ アート・ディレクター:Michal Misinski(Juice.)/VFX・CGスーパーバイザー:Jakub Knapik(Juice.)/オンサイトVFXスーパーバイザー:Anthony Scott Burns/リードデザイナー兼アニメーター:Michael Rigleyほか Mars Opening VFX:MPC Hermes VFX:Framestore and Juice. Nebula VFX:Juice.
youtu.be/-fdKyszL1Zo

[information]

  • 映画『オデッセイ』
    スカラ座ほか全国で上映中

    監督:リドリー・スコット
    VFX制作:Framestore、MPCほか

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