ベンチマークツールによる測定
ここまで主観的なコメントが前に出すぎてしまったので、今度はオーソドックスに、ベンチマークツールによる客観的なパフォーマンス検証について解説しよう。今回は、SPECviewperf 11 、CINEBENCH R11.5 、ファイナルファンタジーXIVオフィシャルベンチマークという、3 つのソフトで計測を行なった(ドライバーのバージョンはいずれも「FirePro/GL/MV Software Suite 8.743.3.2」を使用)。
まずは、SPECviewperf 11 である。非営利団体Standard Performance Evaluation Corporation(SPEC、標準性能評価法人)が公開・配布している本ソフトは、世界中で最も幅広く使われているOpenGLベンチマークの定番と言えよう。そして、その結果をまとめたのが下のグラフ。V8800、V5800共に良好なスコアを叩き出しているのではないだろうか。
SPECviewperf 11によるパフォーマンス測定結果をグラフにまとめたもの。maya-03では、ウルトラハイエンドに位置付けられるV8800、V8750がV5800に大きく差を付けているが、lightwave-01では、僅差だがミドルレンジのV5800がウルトラハイエンドの2ボードより高い数値を示した
次に、CINEBENCH R11.5 で計測。その名の通り、独マクソン社が開発する統合型CGソフトCINEMA 4Dをベースにしたベンチマークソフトである。CPUとOpenGLの測定が行えるが今回はCPUについては割愛した。結論としては、V8800に加え、V5800も前世代のV8750よりも高いスコアを叩き出した。
CINEBENCH R11.5のV8800測定結果。OpenGLのスコアは「63.51」と、V8750の「48.73」やQuadro FX 5800「45.52」よりも高い数値を叩き出した
続けて、V5800 を測定したところ「62.16」という、V8800 に肉薄する非常に良好なスコアであった。グレード(スペック)よりも世代差が数値に影響するのかもしれない
最後に、ファイナルファンタジーXIVオフィシャルベンチマーク である。本ソフトにはスコア結果の目安が示されているのだが、それに当てはめるとV8800は「快適」、V5800 と Quadro FX4800 は「やや重い」という結果になった(このテストは、おまけで試したこともあり V8750 の測定は行わなかった次第)。このベンチマークソフトは言うまでもなく、ファイナルファンタジーXIV というビデオゲームを快適にプレイできるか、つまり OpenGL ではなく DirectX9.0c の描画パフォーマンスを測るものなので、Radeon や GeForce などのコンシューマー製品のハイスペックなモデルの方が往々にして高スコアを出すことが多い。その点は誤解なきようお願いしたい。
V8800 の「ファイナルファンタジーXIVオフィシャルベンチマーク」測定結果
同じく V5800 のスコア。少々厳しい結果となったが、『FF14』という、非常に美麗=高負荷なゲームグラフィックを描画するわけなので妥当な結果と言えるのではないだろうか
参考までに筆者の手元にあった、Quadro FX4800でも測定してみた
今回利用した3ソフトに限らず、ベンチマークソフトは数値を下に客観的な性能比較ができるという意味では実に有意義だが、実際のCG・映像制作では、目指す表現や、レンダリング方式などの作業アプローチによって、ソフト/ハードのパフォーマンスも大いに変わってくるのは言うまでもない。月並みの言葉だが、あくまでも目安に止めてもらえればと思う。
また、グラフィックスボードの性能を効果的に引き出すには、適切なドライバがインストールされている必要がある。特に高度な処理を行うワークステーション用ボードの場合は単純に最新のものを使えば良いというわけではなく、動作保証がされているドライバを用いることが重要だ。グラフィックスボードのドライバ情報は常に更新されているので、定期的に確認することをお勧めしておく。