本連載では、みなさんから募集したAI活用に関する疑問や課題に対して、AIの専門家としてCafeGroupのAI事業部長 大平伊吹氏と、CafeGroupのAI事業責任者 橋本 圭氏の二人がみなさんの質問に答え、ディスカッションを通じて解決策を提案していく。
第1回は、「デザインを考える際のインスピレーションを素早く、大量にインプットしたい。最近話題になっている映像をまとめて欲しい。CGソフトのトラブルシューティングとなるBOT、ChatGPTのようなものが欲しい。」という質問に対し、今すぐ真似できる具体的な方法を提案していく。
はじめに
皆様こんにちは、CafeGroup AI事業部長 大平/AI事業責任者 橋本です。今回はいただいたお便りから、①デザインを考える際のインスピレーション獲得へのAI活用、②効率的な話題の映像収集、③CGソフトのトラブルシューティングになるBOTについてお話します。
特に最後の「③CGソフトのトラブルシューティングになるBOT」については、OpenAI社のChatGPTをカスタマイズし、Mayaのトラブルシューティングに活用できるGPTsを作成したので、ぜひご試用ください。
いただいた質問
デザインなどを考える際のインスピレーションを素早く、大量にインプットしたい。最近話題になっている映像をまとめて欲しい。CGソフトのトラブルシューティングとなるBOT、ChatGPTのようなものが欲しい。
①デザイン考案の際のインスピレーション獲得へのAI活用
デザインのインスピレーションを素早く大量に得たい場合、AIの活用は非常に有効です。
ここでは、2つの活用方法をご紹介させていただきます。
1. 画像生成AIでの画像生成
Midjourney、DALL-E 2、Stable Diffusionなどの画像生成AIを聞いたことがある方は多いかと思います。これらはテキストプロンプト(指示文)を入力するだけで、多様な画像を生成できます。デザイン生成に必要な時間は〜数十秒ほどで、どのようなワードからでもビジュアルイメージを生成できるので、短時間で大量のインスピレーションを獲得するのに適しています。
以下は、試しに「Stable Diffusion Online」で生成された画像です。わずか数秒でこのような画像が生成されるので、ぜひお試しください。
プロンプト(AI生成):a dark room, anamorphic lens flare, cinematic volumetric light, cryengine 8 k, cinematic light and reflections, cinematics lighting, realstic lighting, videogame still, rendered unreal engine 5, cinematic volumetric lighting, hyperdetailed unreal engine, cinematic camera
2. 出力の精度を高めるには
画像生成AIに対して、ただプロンプトを入力しても、求める画像が生成されないことは多々あります。このような場合、AIに対して、「こんな画像が欲しい」ということをより正しく伝えることが重要です。
代表的な方法として、「LoRA」の作成や、「ファインチューニング」という手法があります。これらを行うことで、求めるスタイルの画像が生成されやすくなります。具体的な手法はすでに多くの解説ブログ等がありますので、そちらをご参照ください。
※企業での活用を検討される場合は、弊社でもサポート可能ですのでお気軽にご相談ください。
ただ、この方法は専門性が高い上に、著作権の問題にも十分注意して実行する必要があります。ですので、ここではよりトライしやすい簡易的な方法についてご紹介します。
a.つくりたい表現に近い過去の自分の作品画像や、イメージボードを用意する
b.ツールを活用し、aで用意した画像をテキストプロンプトに変換する
例:CLIP Interrogator(URL)
c.Stable Diffusion等の生成AIにbのプロンプトを入力し画像を生成。求めている画像が生成されるようにプロンプトを修正していく
自分がつくりたい視覚表現をAIは言語でどのように解釈しているのかを理解することで、より正確なプロンプトの作成ができるようになります。
「LoRA」等に比べて精度は低くなりますが、どなたでもお試しいただける方法なのでぜひトライしてみてください!
また、より効率化を図るならば、これらを自動化するシステムを開発することもできます。
例えば夜間にb, cを自動で実行するシステムを作ると、日中にaをするだけで、翌朝には大量の画像が自動で生成されます。ただあまりに大量の画像だと、そこから精査するのも大変なため、一定水準以上の画像のみをフィルタリングする仕組みを追加することで、更に効率化を図ることも可能です。
※システム開発のサポートも可能です。お困りの際はご相談ください。
②話題の映像を効率的に収集する
話題の映像を効率的に収集するに当たっては、AIよりも既存のレコメンドシステムの活用の方が有用かもしれません。「AIを使って」ではありませんが、すぐに取り組める2つの方法をご紹介します。
1. X(旧Twitter)のコマンドを活用した検索
ご存知の方も多いかもしれませんが、Xではコマンドを活用することで効果的な情報検索が可能になります。
PC版の場合、「高度な検索」機能を活用することで、コマンドの知識がなくても簡単に「いいね数」「日付」「必ず含むキーワード」などを指定した検索が行えます。15以上の設定項目があるので、条件を絞ることで効率的に話題の映像を探すことができます。スマホ版の場合でも、コマンドを活用することで同様の検索体験が得られます。有効性の高いものを以下に3つご紹介します。
・「since:2024-〇〇-△△」:2024年〇〇月△△日以降の投稿を検索
・「filter:videos」:動画を含む投稿のみを検索
・「min_faves:XXX」:いいね数がXXX件を超えるツイートを検索
他にも、様々なコマンドがあります。組み合わせて検索できますし、もちろんキーワードとセットで検索できるので、ぜひ活用してみてください!
2. SlackでWeb、Xの話題の映像を流すチャンネルの作成
毎日WebやXで話題の映像を検索し、チェックするのは難しいし面倒だという方もいらっしゃると思います。そこでおすすめするのが、「Slackに情報収集用のチャンネルを作成し、自動的に情報が流れるように設定する」です。
Zapierなどの情報収集の自動化ツールを使用すると、情報収集元となる情報ソース(特定のWebページやSNSアカウント)を選択していくつかの設定を完了することで、設定した情報ソースが更新されるたびに、自動で情報がSlackチャンネルに投稿されるようになります。
気になるCGアーティストや映像制作会社のSNSアカウントを追加すると、Slackだけで最新の投稿をすべて逃さずチェックすることが可能です!
③CGソフトのトラブルシューティングになるBOT
ChatGPTに、主要なCGソフトの規約、FAQ、トラブルシューティングを学習させたGPTsを作成してみました。
GPTs:https://chatgpt.com/g/g-673e90cfd8f08191b2f762e6a1ec836d-aikurieiteihusiyankusiyon-maya-ai-shi-zuo-ban
あくまで簡易版にはなりますが、ChatGPTのアカウントがあれば無料でご利用いただけますので、ぜひご活用ください。
※AIには事実に基づかない情報を生成する「ハルシネーション(幻覚)」リスクがあります。必ずしも正確な情報とは限らないので、その点はご留意ください。
また、このような方法以外でも、Perplexity AIやFelo AIといったWeb上の情報を基に回答を生成してくれるサービスを使用することも有効です。
例えば、このようなサービスの中で有名なPerplexity AIであれば、回答の生成にあたって参照したウェブサイトを提示してくれます。様々なリサーチを効率化できるので、ぜひ活用してみてください!
まとめ
ここまでお読みいただきありがとうございます。AIは、著作権侵害やハルシネーションなどのリスクが存在しますが、適切に活用することでCG制作などの作業を大幅に効率化することができる技術です。
CafeGroupでは、長年のCG制作のノウハウを基に、この領域における企業のAI活用をサポートしております。AI活用、導入をご検討の際は、ぜひ一度ご相談ください。
また次回もよろしくお願いします。