>   >  芸術性と技術力に裏打ちされたクリエイティブ集団、Triple Additional(+++)〜『creating a fantastic world』VI
芸術性と技術力に裏打ちされたクリエイティブ集団、Triple Additional(+++)〜『creating a fantastic world』VI

芸術性と技術力に裏打ちされたクリエイティブ集団、Triple Additional(+++)〜『creating a fantastic world』VI

『creating a fantastic world』に見る、"+++"クオリティ

ここからは、昨年+++が制作、小張氏がディレクションを務めた VOYAGE GROUP の VI 『creating a fantastic world』(以下、『creating〜』)を通じて、彼らの画づくりについて具体的にみていこう。

この作品は、VOYAGE GROUPVI(ビジュアル・アイデンティティ) として制作されたものだ。VOYAGE GROUP が、以前の EC ナビから社名変更するにあたり、社員向けのプレゼン用に新しい同社を象徴する映像を、というニーズに端を発する。そして VOYAGE GROUP 取締役 Chief Culture Officer(CCO)を務める青柳智士氏が以前からその作風に注目していたことから、小張氏に白羽の矢が立ったというわけだ。青柳氏からは「突き抜けていくイメージで、とにかく格好良いものを」というオーダーを受けプロジェクトがスタートした。

「まずは青柳さんと、僕と高久とで 1 ヶ月半ほどかけ、何度もブレストを重ねるのと同時にイメージボードやプリビズを作っていきました。最初は、水墨画的な表現や、インクのシミが広がっていく......という案もありましたが、最終的には、粒子の集合体が大きなエネルギーを持って突き抜けていくイメージに仕上がっています」(小張氏)。
完成した映像は、水中で産まれた粒子が集り、水(波)の抵抗を受けながらも、グイグイと力強く前へと突き進み、やがて見えない壁を突破する......というようなもの。色味が抑えられたシックで抽象的な表現ながら、確かに力強さを感じさせる作品となっている。

プリビズ

Premiere Pro で作成されたプリビズより。流体シミュレーションを多用するため、各カットのラフなアニメーションムービー(3ds Maxのプレビュー)を Premiere に書き出し先にカット割りや尺調整を詰めていく形で制作された

「もともと、VOYAGE GROUP が海賊や航海をテーマにしているグループなので、このグループに集まっている会社や人をパーティクル粒子の集合体に見立てて、流体アニメーションが意志を持って突き抜けていくような格好良いビジュアルを目指しました」(高久氏)。
ブレストの段階では、海や船といった具体的なオブジェクトを使うというアイデアもあったというが、最終的にはシンプルにメッセージが伝わるようにと "海" 的なモチーフに絞ったビジュアルに仕上げられた。

本作は、小張氏の Vimeo を通じて配信され、国内外で大きな反響を呼んだ。『creating〜』を観た海外のクライアントから制作依頼が舞い込んだり、同じくイベント・コーディネータの眼に止まり、小張氏が 3 年前に制作したオリジナル作品『phase』が NY タイムズスクエアのスタンドで上映されたりした他、国内からも流体シミュレーションの問い合わせも増えたという。「実はあんまり得意じゃないんですけどね......(苦笑)」(小張氏)。


『creating a fantasitic world』ディレクターズ・カット版。ちなみに、こちらは納品されたオリジナル版とはラストカットの企業ロゴの出方が異なっている(オリジナル版は こちら)。これは演出意図がより伝わりやすいように......という小張氏のこだわりから制作されたものだ

「良い作品をひとつ作ると、3年間は食っていけるんです(笑)」と小張氏は冗談めかして語るが、現在、Triple Additional では口コミで仕事を受けることが多いという。これこそ、『creating a fantastic world』のような質の高い同社の作品が、次のステップへの橋渡しになっているなのではないだろうか。

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