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芸術性と技術力に裏打ちされたクリエイティブ集団、Triple Additional(+++)〜『creating a fantastic world』VI

芸術性と技術力に裏打ちされたクリエイティブ集団、Triple Additional(+++)〜『creating a fantastic world』VI

『creating a fantastic world』メイキング

オリエン → プリプロ → プリビズ → 本制作 → 微調整 → 納品 と作業を進め、約 2 ヶ月で完成したという『creating a fantastic world』。3DCG は 3ds Max で、パーティクルは FumeFX を使いシミュレーション、レンダラには Krakatoa が用いられている。中でも、粒子のシミュレーション制御はとくに苦労したのだとか。「演技させすぎても気持ち悪いので、自然なんだけど突き抜けていくという動きを探るのに、苦労しました。特にシミュレーションは時間がかかるので、理想の動きを作るため、トライアンドエラーの繰り返しで大変でした」(小張氏)。
また、海の表現には実写の空スチールを加工したものと、3ds Max 用の空や景観を生成するプラグイン DreamScape で作成したものを組み合わせ、細密な調整を施しより深みのある映像へと仕上げられた。

3ds Max の作業画面

イメージテスト 色づけ

(左)初期段階でのイメージテスト、(右)実際にシミュレーションしたものへ、色味を付け始めた段階

ビューポート オブジェクトを置いたシーン

(左)シミュレーション後のビューポート、(右)実際に衝突オブジェクトを置いたシーンの状態(青い線はライト。緑の線はデプス用に距離を測っている)

ビューポート セットアップ

(左)シミュレーション後のビューポート、(右)ジオメトリを Krakatoa でパーティクルとしてセットアップ

セットアップ DreamScape設定画面

(左)透明の壁のオブジェクトのセットアップ、(右)DreamScape の設定画面

一方、コンポジットは After Effects で行われており、プラグインには LenscareReelSmart Motion BlurOptical Flares などを使用。元の映像は解像度 1,440×1,080 で作られたが、Krakatoa の粒子のアンチエイリアスがエッヂが立ちすぎていたのが気になり、敢えてフル HD までブローアップして使うなど、微調整が施されている(ちなみに納品は残念ながら SD だったとのこと)。

After Effects による画づくり

背景のみ パーティクルをのせた

(左)背景のみ、(右)パーティクルをのせた状態

フォグとフレアをのせる カラコレ

(左)フォグやレンズフレア等をのせた状態、(右)カラコレ

フォグとフレアをのせる カラコレ

(左)デフォーカスなど全て終わり完成、(右)AE の画面キャプチャ

アートと仕事を両立するために

最後に、+++の一員として、自分の持っている世界観と仕事を両立させるためには、どうすれば良いか......という点について小張氏に訊ねたところ、非常に興味深い答えが返ってきた。
「僕は単純に、もっとクオリティの高いものを作れる腕を磨くことが重要だと思ってます。技術を確実に高めていくことが、自分の持っている世界観を守ることにもなる。たとえクライアントからの依頼で作った作品だとしても、クオリティが高ければ高いほど、そこに "自分の表現" を入れられる余地が生まれると思うからです。なので、日々、勉強ですね」。
そのため、新しい技術やクオリティの高い映像に関しては、常にアンテナを張っているのだと言う。「自分は "こういうアーティストです" というイメージにしがみついてしまっては良くないので、新しいものを柔軟に採り入れていきたいと思っています。......とは言っても、スクリプトだけはどうしても苦手だったりするわけですが(笑)」。

さて、少し話はずれるが、本インタビューの中で最も印象的だったのが、小張氏の画づくりワークフローについての話。小張氏は基本的に、フル CG の映像を作る場合でも、いったん多くの色を置いてフォトリアルに近づけてから、段階を踏んで色数を落としていく......というアプローチをとっているのだとか。
「一番最初に色を多く作っておいて、後から色を落としていった方が、仮にモノクロに切り替えた場合でも綺麗かなと。フル 3DCG の場合は特に気をつけて作っています。色だけで空間を作っていくというのが油彩の考え方にあるんですが、それに近いかもしれません」(小張氏)。
アナログで培った技術を、デジタルに落とし込む技術。その技術にさらに磨きをかけ、小張氏は+++と共に、これからも進化を続けていくにちがいない。

TEXT_山田桃子
PHOTO_弘田 充

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