02 ANIMATION
フェイシャルとアニメーション付け
本作の絵コンテ以降のCGアニメーション制作のながれは①プリビズ、②モーションキャプチャ、③アニマティクス、④アニメーション、⑤フェイシャルアニメーション、となる。プリビズを作るのはデジタル・フロンティアとしては稀なケースで、通常はアニマティクスとして作ってしまうが、今回は絵コンテでは表現しきれないカットの目安として必要だったという。アクションシーンを中心に、キャラクターはポーズと簡単な移動、モーションのみ。レイアウトやカメラワーク、尺とタイミングの指針として作られた。
アニマティクスは本社と大阪支社をはじめ、協力会社も加わり最大で50名が関わった。「妖怪や巨大 ロボットなど、難易度は高かったのですが、その分、非常にやりがいがありました」と、アニメーション全般を担当した亀川氏。アニマティクスはMotionBuilderを使用して、エフェクトやライティング、テクスチャなども入れ、なるべく最終画に近いもので検討しているという。
同社のアニメーションチームは全員がレイアウトまでできる技能があるのが特長だ。「レイアウトは コンテがあっても現場では大きく変わる場合があり、そのつど最良のものになるようにしています」と亀川氏。また、カメラワークも実写寄りにして、手持ち風のカメラなども交えるなど、こだわっている。
カメラワークとアニメーションがフィックスした後はフェイシャルの作業となり、基本的に工程の逆 行はない。本作の最大のテーマのひとつがこのフェイシャルだった。表情で心情を語ることで、ドラマ性を高めることをねらったのだ。フェイシャルに入る前にアニメーターとやり取りをして、表情で良い演技をしているシーンは削らないようにするなど、慎重に検討したという。リグはブレンドシェイプで作られた。石山氏も「柔らかい動きで、感情を上手く伝えられるかが大切でした」と、フェイシャルへの思い入れを熱く語ってくれた。
データのながれMotionBuilderのシーンファイルからMayaのシーンファイルに変換するまでのフロー図。プリビズからアニメーションまで、使いやすくて軽く、データの取り回しのいいMothionBuilderで作られている。MothionBuilderのメリットはアニメーションまわりの使いやすさ、キャプチャデータの取り扱いやすさ、簡易エフェクト、シーンの軽さなどだ。そして、アニメーション作業終了後に各データをパブリッシュし、Mayaシーンの仮構築をしてチェック。問題がなければ後工程にデータが渡り、アニメーションチームの作業は終わる。作業はSHOTGUNで管理されている。プロットされるデータは次の通り。①キャラクター(ボディモーションからスーツの各状態設定など)。②プロップ(武器系は状態設定から、モニタがあるものはモニタの状態まで)。③BG&車両系、エフェクト(Zガンのシリンダーや転送面、ビームなど。アタリ用としてアニメーションや位置情報など)。④その他(ヘリのサーチライトのアニメーションデータなど)
アニメーション付けVコン。SEなどの演出指示も盛り込まれている
プリビズ。簡易モデルを使用してMotionBuilderで作成。簡易エフェクトやライティングなども追加して雰囲気を出している
レイアウト作業前のアクターインプット作業。キャプチャデータをキャラクターに割り当てるのに自社開発ツールの「ActorInputManager」を使用し、従来の手作業を自動化している。SHOTGUNベースのキャプチャデータの情報管理やキャプチャムービーへのアクセス、必要なアセットの読み込み、ActorInputシーンの管理を行う
アニマティクス。アニマティクス用モデルにキャプチャデータを流し込み、レイアウト、カメラワークをさらに調整をした状態。タイミングを新たに調整する場合も多々ある
アニメーションチェックムービー。動きや接地関係を詰めた状態。銃をかまえている加藤を見ると、腰を落として見映え良くポーズが変わったのがわかる。キャラクターのアウトラインが白くなっているのは、チェック時にポーズの確認やモーションのノイズを見やくするためだ
MotionBuilderでの作業とツールMotionBuilder作業画面。「ShotWorkTool」はSHOTGUNからカット情報を読み込み、ショットの構築や管理から作業データのsave&openまで、作業上メインで使用していくツール。プロジェクト全体表示から、チーム別、個人別まで切り替えも可能。アニメーション作業開始時には、アセット指定と読み込み、アクターインプットデータの読み込み、カメラの読み込みまで行う。一方、「CamSetting」ではカメラの各種詳細設定からカットの進捗入力を行う。また、画像のようにキャラクターに対してモーションキャプチャデータがある場合は同期したフェイシャルムービーを読み込み、キャラクターの顔の横にプレーンを貼り付けられる。さらに、同期した音声も読み込まれる
今回使用したベースになるカメラリグ。基本的にトップノードはキーを打ったり動かすことはせずにCti_rootノード以下をアニメーションさせる。Ctl_f/1ノードは画ブレや揺れ用に組んだリレーションへ繋がっている。作業中はWork_Camで確認し、レンダリングは1.1倍~に設定しFinal_Camで行う。LayoutCamは様々な用途で使用することが可能な予備カメラ
フェイシャルキャプチャリグのためのリファレンス用フェイシャルキャプチャ。マーカーは310個で、セッティングに3時間かかったという。フェイシャルを担当した石山氏自らがモデルになっている。おおよそ左右非対称分も合わせると1,200くらいのターゲットがあるという
フェイシャルリグのコントロール画面。リグはアニメーターが直感的に使いやすいシンプルなものを目指しているという。加藤なら誰がいじっても加藤の表情になるというように、キャラクターがブレないような配慮もされている。リグ自体は途中でボーンなども使うが、最終的には中割りが5つあるブレンドシェイプにまとめられている。ブレンドシェイプを採用したのは感情の動きを作りやすいためだという。大量のブレンドシェイプは標準ツールでは動かせないため、独自のツールを使ってリアルタイムに近いスピードで再生できるようにしている
実際のフェイシャル作業の画面。Maya上でキャプチャされたムービーを見ながら作業ができるようになっている
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©奥浩哉/集英社・「GANTZ:O」製作委員会