こんにちは! ボーンデジタル テクニカルサポートの黒河です。本連載では様々なソフトウェアの深掘りと、クリエイターに役立つテクニカルな情報をお届けします。
前回に引き続きexAgentの中山智博さんをゲストにお迎えして、後編では空撮による大規模3Dスキャンの実際を伺っていきます。
3Dスキャンを使用してデータを作成する場合、 撮影データが作品のクオリティに直結します。空撮という特殊な状況下での工夫点や、 地上と同じく意識している原則まで、空撮の成功例と失敗例を交えてご紹介します!
黒河 建
ボーンデジタルのテクニカルサポート担当。前職ではIT企業にて基幹システムの導入に従事。現在はRevitを中心に、建築業界向けのサポート業務を担当している。
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※本記事は、月刊『CGWORLD + digital video』vol.327(2026年11月号)掲載の連載「TECH ROOM:このソフト、どこまでやれる?」を再編集したものです。
PROFILE
中山智博さん
株式会社exAgent代表取締役社長。実在する空間や物体を3Dスキャンし、3Dアーカイブや3Dコンテンツとしてインタラクティブな「デジタルツイン」を提案・制作する。クライアントの隠れたニーズを引き出す3Dのマイスター。「3D Gaussian Splatting(3DGS)」をいち早く導入し、ゼネコン、造船、インフラ向けのコンテンツから、文化財のアーカイブ、教育分野まで様々な分野で活躍中である。2025年4月からは、大阪芸術大学映像学科で教鞭をとる。
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ドローン空撮とヘリ空撮のちがいとは?
こんにちは、中山です。今回は私が札幌駅を上空300mから撮影し、作成したデータを使って、3Dスキャンの面白さをお伝えできればと思います。
まずは、空撮についてみていきましょう。空撮をする方法には、「ドローン空撮」か「ヘリ空撮」の2つがあります。それぞれの長所短所を並べて比較してみました。
札幌駅はヘリ空撮を実施しました。下に掲載しているのが、撮影時の写真ですね。
撮影のために自分側のドアは取り外していて、なかなかにスリリングです。ちなみに航空機から物を落とすと航空事故になってしまうため、持ち物は全てストラップやベルト、テープで固定しています。
作業のワークフローは、[写真撮影→現像→RealityScanでアライメント→Postshotで3D Gaussian Splatting(3DGS)処理→SuperSplatでシーンの編集とアップロード ]というながれです。
今回はレーザースキャンは利用せず、3DGSシーンの作成にフォーカスします。
空撮ポイント① 天候ごとの特徴
今回の撮影は晴天で、非常に理想的な素材が撮影できました。撮影時の天候についても特徴があります。コンテンツ化する場合は、曇天時が好ましいですね。
札幌駅の撮影素材から作成した3DGSのデータを見てみましょう。作例は株式会社アクティブリテックよりご依頼いただき撮影・作成し、掲載許諾いただいたデータです。様々な角度から見ても破綻のないデータになっています。
▲札幌駅の撮影素材から作成した3DGSデータのPostshot上のスクリーンショット
▲撮影データ(写真)。使用したカメラはNikonで、今回は私とサポートのカメラマンの2人で撮影しました。角度を変えながら数周して撮影します。撮影の際はカメラを固定し、ヘリの移動にあわせてシャッターを切る感じで、撮影データが重なるように連続して撮影することがポイントです。半分以上が重なっていると理想ですね
撮影時点の街並みを、写っているもの全てがいつのデータなのか、その日時まで正確に言えるデータは、アカデミックな用途であっても非常に信頼性が高く、3Dデータとして残せるデジタルアーカイブとしても非常に重要だと思います。
空撮ポイント② 成功と失敗を分ける要因
失敗例についてもここで確認しておきましょう。こちらのデータはある角度から見ると割と綺麗に見えているのですが、少しカメラを移動すると一気に崩れてしまいます。
成功と失敗を分ける要因は事例によって様々ですが、ここで見せている失敗例について説明します。
本来、3Dスキャンの原則としては、対象を中心にドームがあると想像して、そのドームに沿うイメージで撮影する必要があります。具体的に言うと、真上・俯角45度・真横の3周は必ず撮影しておきたい角度で、余裕があればディテールを上げたいところを追加するかたちですね。
まず対象を見せるときに一番魅力的に見える外せない角度(だいたい俯角45度)から円を描くように周回撮影して、次にできるだけ低空で距離を離し、円を描いて撮影することで真横に近い浅い角度で撮影。最後にほぼ真上からになるように機体を傾けて小回りで旋回しながら撮影、というのが理想です。
ここでポイントですが、ヘリの場合、基本的に市街地では地上300mより低空を飛べないため、45度の角度で撮りたい場合は、対象から300m離れて高度300mで周回します。高さを変えずに距離を変えれば、角度が変わるからです。真横から撮りたい場合も同じく高度規制があるので、高度300mを維持して600m離れると、22.5度の角度で撮影ができます。ただしこの場合、障害物も増えるので注意です。
▲成功的に撮影したデータを、RealityScanでアライメント(写真位置推定)したシーン。白い軌跡ひとつひとつが、撮影した位置を表します。ヘリ空撮では高度を保ち、距離を変えることで真上・俯角45度・真横を撮影します。特に最後の画像を見ると、高度が維持できていることがわかりますね
しかし、先述の失敗例の場合、距離が離れるのと同時に高度も上げてしまったため、本来真横から撮りたい角度が、俯角の画像と変わらない状態になってしまいました。
カメラの軌跡を見てみると、逆ドーム型や逆三角錐のような軌跡となってしまっているのですが、対象と遠近2周のカメラの軌跡がほぼ一直線に繋がっています。
▲失敗例の特徴。距離を離すと同時に高度を上げてしまい、2周して撮影したデータがほぼ同じ画角の状態になりました。カメラの軌跡を見てみると、逆ドーム型や逆三角錐のような軌跡に。対象と遠近2周のカメラの軌跡がほぼ一直線に繋がっています。そのため2周して撮影した角度のデータは綺麗に見えますが、それ以外の角度から見ると成立しなくなるのです
対象を中心にしたドームに沿って、真横・俯角45度・真上の3方向から撮影する。これは空撮に限らず、地上での物撮りの基本と同じです。
よくある間違いですが、同じポイントからカメラの向きだけ変えても視差が生まれないので、立体化しにくい画像素材になります。必ず移動しながら撮影しましょう。
空撮ポイント③ Google Earthを活用した飛行計画の共有
空撮に限らず、写真ベースの3Dスキャンを行う場合は、死角がないように撮影します。しかし地上での撮影とはちがって、空撮の場合は「空域制限」というものがあります。高度や建物との距離を保つ、進入禁止区域を守るなどの制限です。そのため、実際に撮影する前に飛行計画を立てて提出する必要があります。
飛行計画を立てる際に役立ったのがGoogle Earthです。飛行ルートを決めていくだけでなく、上空からの街の見え方を確認することもできます。また、飛行中に迷子にならないための目印となるものをパイロットの方と決めて共有するのですが、それを事前に見つけてチェックをつけておくのにも活用しました。
同じようにビルが並んでいる街中の飛行は、ターゲットを決めておかないと、どこまで撮影し、どこを周回したのか見失いがちなのです。しかしGoogle Earthで事前に具体的に把握したことで、撮影をスムーズに運ぶことができました。
空撮に限らず、撮影前計画を立てることは3Dスキャン時には重要です。時間との戦いも頻発するので、慣れないうちは特に準備が大切になってきます。
身近なものから3Dスキャンしてみよう
今回は空撮に限らず、3DGSデータを作成するポイントがたくさんありました。前後編で中山さんから3Dスキャンのお話を伺いましたが、ぜひ皆さんも身近なものからでも始めてみてもらえたら嬉しいです!
CGWORLDおよびボーンデジタル公式YouTubeでも、3Dスキャンに焦点を当てたセミナーを実施しておりますので、よければそちらも覗いてみてください。きっと皆さんの助けになると思います。
次回予告|Nuke
次回は、映画・CM等の制作現場で使われるハイエンドVFX・コンポジットソフトであるNukeを取り上げます。Nukeの機械学習モデルと、ディープコンポジットについてご紹介。お楽しみに!
INFORMATION
月刊『CGWORLD +digitalvideo』vol.327(2025年11月号)
特集:空間CG
定価:1,540円(税込)
判型:A4ワイド
総ページ数:112
発売日:2025年10月10日
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TEXT_黒河 建/Takeru Kurokawa(ボーンデジタル)
EDIT_李 承眞/Seungjin Lee(CGWORLD)