こんにちは! ボーンデジタル テクニカルサポートの黒河です。本連載では様々なソフトウェアの深掘りと、クリエイターに役立つテクニカルな情報をお届けします。

今回はゲストにexAgentの中山智博さんをお迎えし、2回にわたって3Dスキャンを取り上げます。3Dスキャンについて「なんとなくのイメージはあるけど、実際には触れたことがない」人も多いのではないでしょうか。

そこで前編では、3Dスキャンの種類と基本的なしくみ、 そして身近な活用事例をわかりやすくご紹介します。一緒にスキャンしてみましょう!

記事の目次

    黒河 建

    ボーンデジタルのテクニカルサポート担当。前職ではIT企業にて基幹システムの導入に従事。現在はRevitを中心に、建築業界向けのサポート業務を担当している。
    X:@BD_SoftwareDiv

    ※本記事は、月刊『CGWORLD + digital video』vol.326(2025年10月号)掲載の連載「TECH ROOM:このソフト、どこまでやれる?」を再編集したものです。

    PROFILE

    中山智博さん

    株式会社exAgent代表取締役社長。実在する空間や物体を3Dスキャンし、3Dアーカイブや3Dコンテンツとしてインタラクティブな「デジタルツイン」を提案・制作する。クライアントの隠れたニーズを引き出す3Dのマイスター。「3D Gaussian Splatting(3DGS)」をいち早く導入し、ゼネコン、造船、インフラ向けのコンテンツから、文化財のアーカイブ、教育分野まで様々な分野で活躍中である。2025年4月からは、大阪芸術大学映像学科で教鞭をとる。
    ex-agent.com

    3Dスキャンの品質を高める知識とテクニック

    まずは、身近なスマートフォンで行える3Dスキャンをベースに、基礎知識を紹介します。3Dスキャンマスターの中山さんにポイントをピックアップしていただきましたので、それらを紐解いていきましょう。

    使用する機材に関わらず、前提となる知識を理解しておくことで、幅広い応用が可能になります。3Dスキャンの品質も、「空間や物体を、どのように立体として再構成しているのか」というしくみを理解することで、さらに高めることができるはずです。

    これから3Dスキャンを始める方にオススメする動画や記事もまとめてみました。よければ記事と併せて参照してください。

    今こそ知りたい3D Gaussian Splatting

    フォトグラメトリ手順書 v2  | 株式会社ホロラボ 藤原龍 (Zenn)
    【初心者向け】 スマホ3Dスキャンマスターガイド |iwama(note)

    3Dスキャンの種類① レーザースキャニング

    現在、手軽にできる3Dスキャニングとして主に使われている、3つの技術の特徴について中山さんに伺いました。

    まず、レーザースキャニングは、レーザーを使って、高精度なスケールを計測できるスキャニング手法です。強い指向性と収束性のある光(要は、細くてまっすぐな光)を使い、プロ用途では数百mまで計測できるものまであります。

    LiDAR (ライダー)

    「LiDAR(Light Detection and Ranging)」は、不可視レーザーを使って物体を検出したり距離を測ったりする技術です。光は空気中をほぼ一定の速度で進む性質をもつため、物体に当たって反射し戻ってくるまでの時間をミリ秒(1/1,000秒)レベルで計測することで、比較的高精度に物体までの距離と位置を把握することができます。スマートフォンでも、iPhoneの上位機種ではLiDARを使って3Dスキャンが可能です(※)。

    ※:iPhone Pro(12以降)では3Dセンサーに「VCSEL(ビクセル)」方式が採用されています。「VCSEL」は可動しない面発光レーザーで一度に広範囲を面状にスキャンする方式です。これに、計測技術としてToF(Time of Flight)方式を用いることで、トータルとして精度はそこそこで、より壊れにくく安全に、素早くスキャンして3Dを再構成するシステムになっています

    ▲3Dスキャンアプリ「Polycam」によるLiDARスキャンの画面
    • ▲3Dスキャンアプリ「KIRI Engine」の画面。iOS版はLiDARスキャンに対応しています
    • ▲「KIRI Engine」Android版の画面

    3Dスキャンの種類② フォトグラメトリー

    フォトグラメトリーは、画像や映像から3D空間やモデルを作成する技術です。スマートフォンやデジタルカメラなど、比較的手軽なデバイスでも作成可能な3Dスキャニング技術として、2010年頃に登場しました。

    SfM

    「SfM(Structure from Motion)」は、フォトグラメトリーの基になる技術で、複数の画像や映像から3D形状を生成します。それぞれの画像に写っているものの共通点を探し出して特徴点とし、その位置の変化から立体空間上での形状と撮影時のカメラの位置を推定します。

    ▲フォトグラメトリーアプリ「RealityScan」を使用したスキャンの様子。上は、画像データ処理画面
    ▲RealityScanはARモードを搭載しているため、その場で結果の確認が可能です。ドーム状に撮影することで、対象の上・斜め・横といった角度を均等にカバーでき、“死角”が生まれるのを防ぎます。このように撮影すると、綺麗な3Dモデルが生成できます

    3Dスキャンの種類③ 3D Gaussian Splatting(3DGS)

    3D Gaussian Splatting(3DGS)は、2023年8月に登場した新しい3D表現手法です。従来の3DCGで主流となっている「ポリゴンメッシュ」とはまったく異なるしくみをもち、ポリゴンでは再現が難しかった「透明なもの」、「細いもの」、「反射するもの」の表現に優れています。

    実際使用するには3DGSを描画するプログラムが必要なのですが、最近は各ソフトウェアでプラグインなども出ているので、あまり難しくなく試すことができると思います。一度活用してみてはいかがでしょうか。

    ▲3DGSの概念図。算出された特徴点に対して“ガウス関数化”した透明度、輝度、彩度、奥行きなどの情報をもつ楕円形の面を拡散することで、3D形状が表現されるイメージです
    ▲3DGSで生成された空間の例。手前のもやのようなフローターが特徴的
    • ▲水の入ったペットボトルを、RealityScanでフォトグラメトリーした結果。ペットボトル部分がごっそり抜け落ちています
    • ▲KIRI Engineで3DGS→メッシュ化(※有料機能)を行なった結果。ペットボトル部分まで綺麗にスキャンできました。フォトグラメトリーと3DGSには、工程の中に「写真位置推定(アライメント)」があり、これには先ほど解説したSfMが使われています

    Unityで3DGSデータを編集

    3DGSのデータは様々なソフトで利用できるように対応が進んでいます。ここでは、Unityでの編集方法について簡単に紹介したいと思います。

    Aras Pranckevičius(aras-p)氏がGitHubに公開しているUnity用プラグイン「UnityGaussianSplatting」を利用することで、3DGSデータのインポートおよびスプラットの編集が行えます。編集ツールは、ドラッグ&ドロップで任意の点を選択消去できるので便利です。「Unity 3DGS」で検索すると、詳細な利用方法も見つけられます。

    ▲aras-p氏の「UnityGaussianSplatting」を使うことで、インポートした3DGSのデータを、Unityエディタ上で編集ができます
    ▲編集後にHDRI画像を適用して馴染ませた様子。フォトグラメトリーや3DGSの撮影では、重複率(前後の写真同士の重なり具合)と視差(2地点での観測位置のちがい)が重要です。これらが十分に確保されていないと、正確な位置推定や立体構築が難しくなります。撮影の際はレンズの角度を変えるのではなく、実際に場所を移動して撮ることで、視差が生まれるようにしましょう

    3Dスキャンしたモデルを手軽に動かしてみる

    試しに自分の頭部を3Dスキャンして、簡易的に全身のモデルを作成してみました。今回は個人的に有料プランに加入しているので、KIRI Engineでスキャンしています。作成したモデルを簡単に動かすところまでやってみましょう。

    まずは簡単な頭部のスキャンから、自分をスキャンした頭部のモデルはZBrush for iPadで整えます。整えた頭部モデルをZBrushの素体と結合すれば、簡単に全身のモデルを作成することができます。

    ▲KIRI Engineで頭部をスキャン。KIRI Engineは3Dデータの生成処理を外部サーバに投げる仕様になっています(ローカルで完結しません)。この点が気になる人は、PC上でローカル処理できるソフトを試してみましょう
    ▲ZBrush for iPadでメッシュを整えます。KIRI Engineでも不要部分のクロップはできますが、ZBrushの方が細かく修正でき、処理待ちもないので便利です
    ▲ZBrushのテンプレート素体と頭部を結合して、メッシュを調整

    リグはMayaで自動生成。完成した自身のモデルを、Golaemで大量に動かしてみました。手軽に試せるワークフローで、特にZBrushは手軽にメッシュ整理ができるので便利です!

    ▲DCCツール(今回はMaya)にもっていきます。Mayaでリグを自動生成
    ▲Golaemを利用して作成したモデルを複製し、簡単に動かしてみましょう

    次回予告|3Dスキャン(後編)

    次回もひき続き、3Dスキャンについて取り上げます。後編では応用編として、ゲストの中山さんに“空撮の極意”をご紹介いただきます。具体的な事例をベースに、撮影時に気をつけるべきポイントや、成功と失敗を分ける要因について深掘りしていく予定です。主題は空撮ですが、考え方や理論は地上でのスキャンにも十分に活用できると思います。前編を読んで基礎を押さえつつ、後編もぜひご期待ください!

    INFORMATION

    月刊『CGWORLD +digitalvideo』vol.326(2025年10月号)


    特集:実用デジタルツイン ショーケース
    定価:1,540円(税込)
    判型:A4ワイド
    総ページ数:112
    発売日:2025年9月10日

    詳細・ご購入はこちら

    SUPPORT ROOM

    ■気になるソフトウェアがある方
    製品の購入や導入におけるご質問はこちらからお寄せください。

    ■すでにソフトウェアを活用中の方
    使用におけるお困りごとやご質問はこちらからお寄せください。

    TEXT_黒河 建/Takeru Kurokawa(ボーンデジタル
    EDIT_小村仁美/Hitomi Komura、李 承眞/Seungjin Lee(CGWORLD)