>   >  3DCGの導入でアニメはどう変わる!? サンジゲン、オレンジなど主要アニメCGスタジオ5社による白熱トークショー
3DCGの導入でアニメはどう変わる!? サンジゲン、オレンジなど主要アニメCGスタジオ5社による白熱トークショー

3DCGの導入でアニメはどう変わる!? サンジゲン、オレンジなど主要アニメCGスタジオ5社による白熱トークショー

<2>変革期を迎えるアニメ業界で5社がめざす道

アセットの再利用も3DCGならではの強みだ。作画アニメでも定番カットを再利用するバンクシステムはおなじみだが、3DCGではより多彩な活用が可能になる。グラフィニカ吉岡氏は『ガールズ&パンツァー』シリーズで、TVシリーズ、OVA、劇場版と細部を修正しつつ、同じ戦車モデルが再利用されている状況を説明した。背景にあるのが社内ネットワーク環境、ファイルサーバ、レンダーファームといった、デジタル環境の急速な進化だ。「作画アニメでは1台の戦車を数秒動かすカットが発生した場合、作業者選定や進行管理、カメラ演出などのクオリティチェックが大変で、その1カットが完成するのに数日かかってしまうが、3DCGで制作する場合は、モデリングやモーションアセットなどをちゃんと準備しておけば、新人アーティストが作業しても半日でカットを仕上げることが可能となる」(吉岡氏)。

インターネット回線の高速化で、地方スタジオとの連携作業も拡大してきた。サブリメイションは、東京・仙台・名古屋。サンジゲンは、東京・京都・福岡。グラフィニカは、東京と札幌にスタジオをかまえており、ラークスではベトナムにもスタジオを展開している。「12月に名古屋スタジオを開設しました。地元で働きたい人はぜひ応募してください」(サブリメイション須貝氏)。「当社ではファイルサーバを全スタジオで共有しており、地方でも東京と同じ環境で仕事ができています」(サンジゲン瓶子氏)など、各社とも地方スタジオの充実ぶりをアピール。人手不足解消につなげていきたいという。

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サンジゲン 瓶子修一氏(創造部 統括マネージャー)
(筆者撮影)


前述したように、作画アニメから3DCGへの過渡期にある日本のアニメ業界。フルCGの映画は日本ではヒットしないと言われてきたが、『STAND BY ME ドラえもん』(2014)、『ルドルフとイッパイアッテナ』(2016)などの商業的なヒットが象徴するように、状況が変わってきた。オレンジの井野元氏は「視聴者のCGに対する許容範囲が広がる一方で、『君の名は。』の新海誠監督など、作画アニメの制作経験がないクリエイターも登場してきた」と分析する。こうした中で同社は「内製ツールの研究開発などを通して、日本からCGを用いた新しい映像表現を創り出していきたい」と意気込みを語った。

ほかにも「作画アニメでは、"神アニメーター"の作品集がファンによって創られ、動画共有サイトにアップされている。3DCGでも同じようなながれを創り出し、もっとアニメーターに光を当てていきたい」(サブリメイション須貝氏)。「フリーランスではなく、スタジオワーク主導で作品制作が行えるようにして、これまで日本のアニメが壊せなかった限界点を突破したい」(ラークス奈良岡氏)。「アセット管理の効率化とデジタル作画の強化を進行中」(グラフィニカ吉岡氏)。「日本国内で争っていても仕方がない。世界で挑戦していきたい」(サンジゲン瓶子氏)と、各社から意気込みが語られた。

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(筆者撮影)

最後に求める人物像についての紹介もあった。「アニメが好きであること」(サンジゲン瓶子氏)。「創意工夫が楽しめること」(ラークス奈良岡氏)。「とにかく、あきらめないこと」(グラフィニカ吉岡氏)。「好き嫌いをせず、多様な仕事が楽しめること」(サブリメイション須貝氏)。「次世代の映像をめざす意欲がある人」(オレンジ井野元氏)。また、質疑応答では「3DCGでは多くのプロが自分のノウハウを公開している。そうした技法を積極的に取り入れて、自分なりのオリジナリティを加えていってほしい」(ラークス奈良岡氏)など、学生に対して実践的なアドバイスが数多くよせられた。

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このように業界が大きな変革期を迎える中、各社ともにひとりでも多くの優秀な新人を採用し、業務を拡大させていきたいという強い熱意が感じられるトークイベントとなった。業界の内情やCG制作の実情を、ときにマジメに、ときにおもしろおかしく語り合う5人のトークに、会場が盛り上がるシーンも見られた。様々な意味で、日本のCG産業の勢いが感じられるイベントだった。

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