RTファイナルギャザーとEnlightenの制限を相互補完し、パフォーマンスを最大化
前述したようにRTファイナルギャザーではスクリーンピクセルからギャザーポイントにレイを飛ばし、さらにそのギャザーポイントから光源にシャドウレイを飛ばす。この手法は光源に直接レイを飛ばすため、ランダムにレイを飛ばすよりも結果が収束しやすいというメリットがある。パストレーシングでは、よくNext Event Estimationと呼ばれている工程だ。その後は、ギャザーポイントで得られたライティング情報がスクリーンピクセルにまとめられる。RTファイナルギャザーによるライティングの主なメリットは、綺麗なファーストバウンスが得られること、移動物体にもバウンスすることの2点だ。その反面、レイの数は制限されているため、得られるのはファーストバウンスのみで、計算結果はノイジーだ。
つまり、EnlightenとRTファイナルギャザーには、それぞれ異なるメリットと制限があり、併用することで相互の制限を補完できるというわけだ。具体的に言うと、Enlightenの無限バウンスと、RTファイナルギャザーの綺麗なファーストバウンスや移動物体からのバウンスを組み合わせることで、より綺麗な間接光を生成できる。
▲EnlightenとRTファイナルギャザーの比較
Enlightenの間接光をギャザーポイントに追加
EnlightenとRTファイナルギャザーの併用時の方法は、Enlightenによる間接光の計算結果をスクリーンピクセルに追加する方法と、ギャザーポイントに追加する方法の2つがある。前者を用いる場合、Enlightenの結果には直接光のファーストバウンスが含まれているため、ギャザーポイントからのファーストバウンスと重複する。一方で前述したRTリフレクションの計算時にはEnlightenのファーストバウンスが必要なので、2つの結果(ファーストバウンスを含む結果と含まない結果)を用意しなければならない。今回はこの方法の採用は見送り、Enlightenの結果をギャザーポイントに追加する方法を採用した。こちらの場合は、Enlightenの結果をもう1回バウンスさせることになり、移動物体からのセカンドバウンスも得られる。ギャザーポイントで得られる結果が明るくなり、ノイズの減少も期待できる。その反面、追加によるパフォーマンスのダウンは軽微なものに抑えられている。
▲EnlightenとRTファイナルギャザーの併用方法の図解。Enlightenの結果をスクリーンピクセルに追加する方法と、ギャザーポイントに追加する方法の2つがあり、今回は後者を採用した
より明るい結果を得ることで、ノイズを減少
▲Enlightenの結果をレイトレーシングファイナルギャザーのスクリーンピクセルに追加した場合のデモ映像
▲Enlightenの結果をレイトレーシングファイナルギャザーのギャザーポイントに追加した場合のデモ映像。移動物体からのセカンドバウンスも取得できている。また、より明るい結果が得られており、ノイズが減少している
▲UE4 RTファイナルギャザーを用いたデモ画像
▲先のシーンのギャザーポイントにEnlightenの結果を追加したデモ画像
▲先のシーンにEnlightenのリフレクション(キューブマップ)を追加したデモ画像
Enlightenを追加しても、パフォーマンスのダウンは軽微
▲パフォーマンステストの結果。Enlightenを追加しても、パフォーマンスのダウンは軽微だとわかる。本デモのRTファイナルギャザーはハーフスクリーンサイズで、サンプリング数を4に設定。GPUはNVIDIAのGeForce RTX 2080 Tiを使用
本記事で紹介したRTRTに対する3つの取り組みはEnlighten 3.12に追加される予定だ。RTリフレクションとEnlightenの組み合わせ、並びにRay-traced Enlighten VisibilityはEarly accessとして、RTファイナルギャザーとEnlightenの組み合わせはExperimentとして提供されるとのことなので、ひき続きEnlightenのリリース動向に注目してほしい。
また、Enlightenの使用方法や技術詳細を解説したブログ、ならびにチュートリアル/ドキュメントも活用してほしい。
▲Enlighten ビギナー向けチュートリアル
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Enlighten
対応プラットフォーム
・Enlighten SDK
Nintendo Switch、PlayStation®4、Xbox One、Xbox Series X、Stadia、Microsoft Windows、Android、iOS
・Enlighten for Unreal Engine 4
Nintendo Switch、PlayStation®4、Xbox One、Xbox Series X、Stadia、Microsoft Windows
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