総括1:単体ソフトとしてはかなり優秀
最後にCINEMA 4D R11.5の使用感を総括したい。今回初めてC4Dを使ってみたが、"最も使いやすい3Dアプリケーション"と自ら謡っているだけのことはあると思った。各ツールが、同じインターフェイスを共有しているため、習得しやすいソフトであると思う。ツール全体としてのUIがとても判りやすく、実に直感的。多彩な表現を手早く作るという点においては、C4Dはかなり優秀である。ツールは統合型ソフトとしてひと通りの機能が揃っているので、学生や個人クリエイターだけでなく、プロダクションレベルでも大きな恩恵を得られそうだ。
また、筆者のメインフィールドであるアニメ向けCG制作という面では「MoGraph 2」のパーティクル機能と「BodyPaint 3D」によるマットペイントは超強力。これらを利用するためだけにも買ってもいいと思ったほどである。特に劇場作品などで多用される背景動画カットの、美術素材のハリコミ&修正を行いたいなら、C4Dは有力な選択肢になるだろう。
もちろん、メインツールにMaxやMayaを使用して、ハリコミ部分をFBX経由でC4Dで、という使い方も考えられる。作品の内容にもよるが、CGキャラクターがメインにはならない作品の場合(背景とエフェクトメイン)は、MaxやMayaよりも力を発揮するかもしれない。

MoGraph 2やMoDynamicsを使えば、物理特性を踏まえた複雑な表現を直感的かつ手早く表現可能

3Dペイントと言えば、近ごろThe Foundryの「Mari」が注目を集めているが、BodyPaint 3Dは、Sony Pictures Imageworksやカプコンなどの大手スタジオで長年愛用されている
総括2:課題は既存パイプラインへの組み込み
パッケージは通常版の他、モジュールと呼ばれる追加機能の組み合わせで、XL、Studio Bundle、建築用、放送用など、数種類の中から選択可能であり、さらにモジュール単体での追加もできるので、好みのカスタマイズで購入できる。通常版が12万6,000円、全モジュールが入った「Studio Bundle」が52万5,000円と、モジュール部分の価格が際立っているが、8月31日まで「ビッグザマーキャンペーン」と称して、対象パッケージがなんと半額になるキャンペーンを展開している。常にこの価格で勝負してくれたら日本のエンタメ系CGの分野でもかなりシェアが高まりそうだがさすがに難しいのかもしれない。
そうした事情もあってなのか、今夏マクソンは1年間有効の無償学生版を提供することを発表した。これからCGに挑戦しようと考えている人はもちろんのこと、ツール選択に悩んでいる学生は、試しに触ってみてはいかがだろうか?(詳細は「CINEMA 4Dアカデミックサイト」を参照)ツールが違うと就職できないと思うかもしれないが、筆者の所属先をはじめ多くのスタジオがツールの習熟度よりも個々人の表現力を重視している。学生の間は気兼ねなく性に合ったツールを使えばいいのだ。
さて、そんなベタ褒めのC4Dだが、仕事で使う上では「業界ディファクトのMayaやMaxを使いこなせるようになった方が仕事につながりやすい」というジレンマを抱えているのは事実。そうした意味でも、まずはメインツールの機能を補う形で使用しつつ、案件によってはメインで使う、という流れが現実的だろう。
最後に今回のレビューでは、筆者が愛用している3ds Maxに対する日頃の不満を吐き出す形になってしまったが、付き合いが長いということは、良い点だけでなく悪い点も多く見えてしまうもの。Maxも使い勝手の良いソフトなので、くれぐれも誤解なきように。
TEXT_奈良岡智哉(スタジオ雲雀・CGディレクター)
http://www.st-hibari.co.jp/

CINEMA 4Dビッグサマーキャンペーン
8月31日まで!
現在、マクソン社ではCINEMA 4Dシリーズの「CINEMA 4D R11.5 Broadcast Edition」、「CINEMA 4D R11.5 Architecture Edition」、「CINEMA 4D R11.5 Studio Bundle」の3製品を、なんと通常価格の半額で販売、さらにサブスクリプションであるMAXONサービス契約も1年間付属するという「CINEMA 4Dビッグサマーキャンペーン」を実施中だ。今回レビューした「Studio Bundle」は262,500円(通常価格:525,000円)。そして「Broadcast Edition」なら、なんと97,125円(通常価格:194,250円)という10万円を切る価格で購入できる(しかも1年間のサブスクリプション付き)。詳細はマクソン公式サイトを参照のこと。