>   >  なぜ、CGは嫌われる? ヴァーチャル・ヒューマンに対する「不気味の谷現象」問題を追う(第3回:日本で生まれたヴァーチャル美女 〜1980年代後半から2000年代前半〜)
なぜ、CGは嫌われる? ヴァーチャル・ヒューマンに対する「不気味の谷現象」問題を追う(第3回:日本で生まれたヴァーチャル美女 〜1980年代後半から2000年代前半〜)

なぜ、CGは嫌われる? ヴァーチャル・ヒューマンに対する「不気味の谷現象」問題を追う(第3回:日本で生まれたヴァーチャル美女 〜1980年代後半から2000年代前半〜)

<5>映画『ファイナルファンタジー』の挑戦

『ファイナルファンタジー』シリーズの考案者である坂口博信氏は『トイ・ストーリー』(1995)を観て、『ファイナルファンタジーVII』(1996)中のムービーも総尺が40分を超えていたことから、「これ(トイ・ストーリー)ができるのなら、『ファイナルファンタジー』の映画化も無理じゃない」と思った。そして、劇場フルCGアニメーション『ファイナルファンタジー』(英題『Final Fantasy:The Spirits Within』(2001)【図11】を日米混成スタッフで制作するために、中間地点であるハワイのホノルルにスクウェアUSAのスタジオを設立した。

ヴァーチャル・ヒューマンに対する「不気味の谷現象」問題(その3:日本で生まれたヴァーチャル美女)

【図11】映画『ファイナルファンタジー』

ここのキャラクター・セクションに参加したのが、ビルドアップに在籍していた奥澤泰治氏(※9)と、『伊達杏子DK-96』をモデリングした小坂達哉氏だった。彼らがリードしたことで、この映画の人物描写は従来になくフォトリアルに向かって突っ走る。映画『ファイナルファンタジー』の興行成績は不振に終わったものの、そのリアリティには多くの3DCG関係者が感心していた。同時に「不気味の谷現象」が一般的にも意識されはじめるきっかけをつくったとも言え、この作品がパンドラの箱を開けてしまったと言えるのかもしれない。

※9:奥澤泰治氏は、帰国後カシオエンターテイメント社に所属し、松本人志の脚本・監督・主演による映画『大日本人』(2007)【図12】の、ヴァーチャル・アクター制作に参加している。この作品は、国内では松本の作品というだけで、最初からテレビのコントの延長のような受け取られ方をし、評価もけっして高くはない。しかし、松本を知らない海外の人々には先入観が無い分、マスコミの態度、老人問題、米国の政治に対する批判......などといったメッセージをちゃんと読み取っていた。それはVFX技術に関しても同様で、SIGGRAPH 2008「Computer Animation Festival」への入選を果たした。また南カリフォルニア大学のポール・デベヴェック/Paul Debevecも、当時行なった筆者のインタビューに対して「最近の映画では最もリアルな3DCGキャラクターだった」とコメントしている。

ヴァーチャル・ヒューマンに対する「不気味の谷現象」問題(その3:日本で生まれたヴァーチャル美女)

【図12】映画『大日本人』
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