<3>日本のヴァーチャル美少女ブーム
1998年になると、日本ではちょっとした3DCGブームが起こる。雑誌『CGWORLD + digital video』(当時はワークスコーポレーション)や『Graphics World』(IDGジャパン)が創刊したのもこの年だし、ShadeユーザーたちによってWeb上のコンテスト「Shadeなギャルコン」も始まっている。その中でも高い人気を得ていたのが、くつぎけんいち氏による『テライユキ』【図7】だった。
元々、コミック『Libido』のキャラクター寺井有紀をベースとしてモデリングされたこともあり、過剰なフォトリアリズムに走っていない。まだ当時は「不気味の谷現象」という言葉が用いられることはなかったが、適度にデフォルメされていたことが人気の理由だったと思われる。その後、「CGWORLD + digital video」初代編集長の永田豊志氏がプロデュースに乗り出し、写真集やミュージック・ビデオの発売、フジテレビの不定期深夜番組『テライユキのデジタルドリーム』(※8)のナビゲーター、エチケットライオンCMへの起用など多方面で活躍する。
※8:世界の最先3DCG/VFX映像を紹介するというコンセプトの番組で、初回放送は2000年4月。筆者もコメンテーターのひとりとして出演しており、2回目以降は構成や取材にも参加している。
また「Shadeなギャルコン」によって巻き起こったヴァーチャル美少女ブームは、海外版を含めて全7冊発行されたムックの『Virtual Beauty完全美少女の作り方』シリーズ(アゴスト)や、専門雑誌の『CG-iCupid』(ユニークデジタル)なども創刊される。中でも、デザイン会社のブルームーンスタジオ代表の岡崎まさと氏や3DCGアーティストの沖 孝智氏によって制作された『飛飛(FeiFei)』【図8】のクオリティには注目が集まり、日本サムスンが広告に起用した。
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【図8】飛飛(FeiFei)
『ディスクリートの3ds maxによりリアルなアニメーションを実現したバーチャルアイドル「飛飛(フェイフェイ)」』
<4>ヴァーチャル美女とゲーム業界
このようにポツポツとではあるが、仕事が入ってくるようになったヴァーチャル・アイドルであったが、やがて安住の場所を発見する。それはゲームのムービーの世界だった。中でも目立っていたのは、ナムコ(現バンダイナムコゲームス)の『リッジレーサー』シリーズなどに登場する、女性キャラクター『永瀬麗子』【図9】だった。デザインは2000年にナムコから独立した由水 桂氏によるもので、その後も長く様々なゲームに出演している。
同じナムコは、SIGGRAPH 2001のElectronic Theaterに『Nostalgia』という短編アニメーション【図10】を発表した。これは、夏の日に故郷を訪れた女性を描いた作品で、光学式キャプチャによるフェイシャルアニメーションに取り組んだデモ映像だった。3DCG制作は同社の大護桃子氏と山口崇司氏が担当している。
【図10】『Nostalgia』
また、スクウェア(現スクウェア・エニックス)の『ファイナルファンタジーVIII』(1999)も、ムービーに登場する人物表現のリアリティを大幅に高めた。
『ファイナルファンタジーVIII』(PS)PV