こんにちは! ボーンデジタル テクニカルサポートの黒河です。本連載では様々なソフトウェアの深掘りと、クリエイターに役立つテクニカルな情報をお届けします。

Golaemは、簡単に群衆にモーションを付けることができる群衆シミュレーションソフトで、今年からAutodeskMedia & Entertainment Collectionに同梱されました。Web上では既存のGolaem Character Packを用いた情報が多かったので、今回は自作キャラクターや外部アセットを用いて、Golaemの機能を紹介します!

記事の目次

    黒河 建

    ボーンデジタルのテクニカルサポート担当。前職ではIT企業にて基幹システムの導入に従事。現在はRevitを中心に、建築業界向けのサポート業務を担当している。
    X:@BD_SoftwareDiv

    ※本記事は、月刊『CGWORLD + digital video』vol.324(2025年8月号)掲載の連載「TECH ROOM:このソフト、どこまでやれる?」を再編集したものです。

    Golaem(ゴーレム)

    Maya用の群集シミュレーションおよびキャラクターレイアウトソフトウェア。数千体規模のキャラクターを効率良く生成・配置し、動作を制御することができる。Maya 2026以降、Media & Entertainment Collectionの一部として提供されている。

    www.borndigital.co.jp/campaign/maya-2026-release

    機能① Golaem Character Maker

    Golaemは、規則的・不規則的を問わずモーションを手軽にセットアップできる点が強みです。例えば、街の人並みはもちろん、VTuberのバックダンサーといった用途にも相性が良いのではないでしょうか。わずかな動きのズレを加えることも可能なので、説得力のある群衆シミュレーションを構築できるツールという印象です。

    Golaemを使用するには、Golaemエンジン用のキャラクターを作成する必要があります。初めての方にはややわかりづらく感じるかもしれませんが、実際はそれほど難しくありません。ここでは自作モデルをGolaemエンジンで活用するための手順を紹介します。

    ▲まずは自身で利用したいモデルを用意し、ジョイントの作成まで行いましょう。準備ができたら、上のアイコンから「Golaem Character Maker」を呼び出します
    ▲ウインドウが開いたら、ジョイントの最上位を選択した状態で[Load Selected Skeleton]をクリック。ジョイントが読み込まれたら、自動または手動でGolaem用のマッピングを行います。まずは自動でマッピングした後、手動で調整していくのがオススメ
    ▲[Auto Compute Skeleton Mapping]をクリックすると自動でマッピングできます。その下の[Check]よりマッピングの確認が可能。問題なければ、GCHA形式(Golaem Character File)で保存しましょう
    • ▲次に、GCHAが参照するジオメトリの紐づけを行います。Golaem Character Makerの[Geo metry]タブに切り替え
    • ▲Mayaのアウトライナ上で対象モデルのジオメトリを選択し、Golaem Character Makerの[Import Geometry]アイコンをクリック
    ▲正常に読み込めたら、[Export Geometry File]から保存しましょう。保存形式はGCG(Golaem internal Character Geometry file)またはFBX形式に
    ▲対象モデルのアニメーションも読みとれます。ウインドウ左上のプルダウンより[Motion]を選択すると、モーションの設定画面に切り替わります。Mayaのアウトライナ上でジョイントを選択し、タイムラインでキャプチャしたいフレームを選択した上で、[Load Motion From Selection]をクリックで読みとりが開始。読みとったモーションは、別のGolaemキャラクターにも適用できるように保存しておきましょう。保存形式はGMO(Golaem Motion Files)

    機能② BehaviorとCharacter Operator

    「Golaem Behavior Editor」でモーションを付ける操作は比較的わかりやすいと思いますが、よりシミュレーションらしく、条件付きで行動や状態を遷移させることもできます。

    サンプルでウイルス感染をシミュレーションするデモシーンがあるので、こちらを覗いてみましょう。

    ※サンプルは以下からダウンロード可能
    golaem.com/content/golaem-character-pack
    ▲デモシーンでは、Golaem Behavior Editorに「感染者」と「健常者」それぞれの行動パターンが設定されています。条件分岐やループ処理が組み込まれており、シミュレーション開始時にランダムに感染者を発生させるしくみが構築されています
    ▲各Golaemキャラクターは状態を数値として保持するため、「Character Operator」が設定されています。シミュレーション再生中に1体ずつキャラクターを選択し、個別に状態の確認が可能です。このようなロジックのながれは、デモシーンとGolaemの公式ドキュメントを参照することでより理解が深まると思います

    機能③ シミュレーションのCacheとCache Library

    Golaemでは、シミュレーション結果をCache(キャッシュ)として出力することで、Mayaの別シーンや他ソフトウェアへの展開が可能です。

    ▲Maya上で[Simulation Exporter]から、GSCB形式(Simulation Cache Library File)のファイルとして出力しておきましょう
    ▲「Golaem Simulation Exporter」のウインドウ
    ▲[Simulation Cache Library]から、キャッシュデータをいつでも呼び出すことが可能です
    ▲Cacheしておけば、複数のシミュレーションを同一シーン内に展開することもできます

    機能④ Unreal Engineへの展開

    Media & Entertainment Collectionを購入しているユーザーは、Unreal Engine(以下、UE)用のGolaemライセンスも利用可能です。詳細はAutodeskのGolaemインストールページをご確認ください。

    UEではプラグインとして認識されるので、ダウンロードしたファイル一式を作成済みのUEプロジェクトの「Plugins」フォルダに入れて、プラグインを有効化することをお忘れなく!

    また、UEでGolaemを使用するには、「PySide」のインストールが必要です。UE5.4以上はPySide6、UE5.3以下はPySide2をインストールします。現在確認中の情報として、UE5.3では一部のGolaemウィンドウが正しく動作しない可能性があるので、UE5.4以上での使用を推奨します。

    ▲まず、UEプロジェクトにGCHAファイルを読み込み、マテリアルもUE上で作成して割り当てておきましょう。[ウィンドウ→Golaem→Library Tool]から「Simulation Exporter」で出力したGSCBファイルを開きます
    ▲左下のインポートボタンをクリック
    ▲UEのアウトライナー上に「GolaemCache」が生成され、シーンにキャラクターが表示されます。現時点でもプレイボタンで動作しますが、シーケンサー上に組み込むことも可能です
    ▲「GolaemCache」をシークエンスに追加し、[トラック(+)ボタン→Animation→Golaem Cache Track]をクリック
    ▲これで設定完了

    初めての人も使いやすい群衆シミュレーション

    Golaemは取り回しがしやすいので、群衆シミュレーションを初めて扱う人でもすぐに使いこなせると思います。慣れてくると、パラメータや条件を活用した応用も可能です。

    注意点として、やはりシミュレーションは多くの計算資源を消費します。特にメモリは、可能であれば64GB程度あると安心です。

    Cacheを活用することで計算量を軽減できるので、動作確認をくり返す場合は事前にCacheしておきましょう。特に複数のシミュレーションを同一シーンで扱う場合は効果てき面かと思います。ぜひ試してみてください!

    次回予告|Bifrost

    次回は、Maya標準のビジュアルスクリプトツール「Bifrost」を取り上げます。Bifrostの中でも、少し変わった使い方をご紹介。Bifrostで生成したパーティクルの座標を、UDP通信を用いてUnityに送信する、というながれの連携方法にフォーカスします。どのような有用性があるか、ぜひご覧ください!

    テクニカルサポートが選ぶ今注目のソフト|KIRI Engine

    スマートフォンやタブレットで手軽にフォトグラメトリを実行し、3Dモデルを生成できるモバイルアプリ。
    © KIRI Innovations
    www.kiriengine.app

    KIRI Engineは、3D Gaussian Splatting(3DGS)にも対応した3Dスキャンアプリです。大規模スキャンには向きませんが、単体の対象物をスキャンする場合は、十分に精度が高いです。出力できるデータ形式も多く、スキャンデータを自分の作成したシーンに配置できるクオリティになっていると思います。

    まずは無償版で試してみて、気に入った方は有償のPro版も利用してみてはいかがでしょうか。スキャンすることが楽しくなるかも!

    INFORMATION

    月刊『CGWORLD +digitalvideo』vol.324(2025年8月号)


    特集:オレンジの挑戦と進化
    『リヴァイアサン』と『BEASTARS』で描く未来
    定価:1,540円(税込)
    判型:A4ワイド
    総ページ数:128
    発売日:2025年7月10日

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    TEXT_黒河 建/Takeru Kurokawa(ボーンデジタル
    EDIT_李 承眞/Seungjin Lee(CGWORLD)