<2>ウルトロン・プライム 〜ILM〜
続いては、ウルトロン(ウルトロン・プライム)のVFXについて。Ben Snow/ベン・スノウ VFXスーパーバイザー(ILM)は次のように語った。
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ハルクと同様、ウルトロンを演じる俳優ジェームス・スペイダーに撮影が始まる前にILMへお越しいただき、モーキャップのテスト・セッションを行いました。セットで演技をすると、ウルトロン・プライムの表情がPC上にリアルタイムで表示出来るシステムによって、どのように演技をすると、ウルトロンの表情に影響されるのか、などを実際に体感してもらいました。
ウルトロンは人間に近い表情を持っています。しかし、顔のパーツが表情に応じて変形しますから、専用のキャラクター・リグを組む必要がありました。顔だけではなく、ボディも細部にわたるコントロールが必要になりました。そこで、ボディのセカンダリ・アニメーションの動きをコントロールするためのアニメーション・セットアップも、多数用意しました。
Learn how James Spader Crafted Ultron in Marvel's Avengers: Age of Ultron
<3>ヴィジョン 〜Lola VFX〜
最後は、ヴィジョンのキャラクター表現について。ヴィジョンのVFXを担当したLola VFXのTrent Claus/トレント・クラウス VFXスーパーバイザーは次のようにふり返った。
Lola VFXは、過去のマーベル作品の10本中8本に参加しており、「キャプテン・アメリカ」では俳優クリス・エヴァンスを痩せた体に加工したり、「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」では女優ヘイリー・アトウェルの老女メイクなど、デジタルによる特殊メイクのような、いわゆる「ビューティー・ワーク」のVFXを中心に手がけてきました。しかし今回は、「ビューティー・ワーク」の枠に収まらず、デジタルによるヘッド・リプレイスメントを担当しました。
ヴィジョンの表現は当初、俳優ポール・ベタニーが頭部にパーツを被り、演技をしている撮影プレートに「ビューティー・ワーク」を施していました。パーツと皮膚の間のギャップをデジタルで埋めたり、肩のパーツだけをデジタルに置き換えたりしていました。しかし、それだけではなかなか限界があるということになり、最終的には、肩から頭部に掛けてを全てデジタルに置き換えてしまうというディレクションに転換することになりました。
Creating Vision Featurette - Marvel's Avengers: Age of Ultron
顔面を全てデジタルに差し替えるにあたり、エンバイロンメントがどのように皮膚に影響して見えるか等をテストしてみました。例えば、皮膚自体の色味やサブサーフェス・スキャタリング、そしてハイライトや映り込みがどのように見えるか、などです。何故なら、生身の人間の顔に見えても困るし、かといってロボットのように見えてしまうのも避けたい、ということがあり、そのさじ加減が重要でした。また、肩から上をデジタルに差し替えるということで、各パーツのデザインにも改良を加えました。レンダリングはV-Rayで行なっています。
表情の調整は3Dではなく2Dで行い、NUKEで済ませました。その関係で、今回は3Dの顔面リグは作っていません。スキンのバリエーションも、全てコンプによる調整で行なっています。俳優ポール・ベタニーの顔面にある、筋肉によるシワは完全に消してしまわず、残す部分は残すことで「人間らしさ」のリアリティを出しました。目も、ポール・ベタニーの実際の目をベースに、メカニカル的な要素を付加したデジタル・アイに差し替えています。目の虹彩のデザインも、本物に近いデザインからロボットに近いものまで何種類かウェッジを作ってテストを行い、ほど良いデザインをピックしました。
映画が完成して、試写を見た業界関係者から、「『ヴィジョン』のキャラクターのVFX、一体何を担当したの? あれって、ただ単に、本物の俳優さんにメイクしただけでしょ?」と言われました。顔がデジタルに見えなかった、ということは、われわれにとって最高の褒め言葉ではないでしょうか?
TEXT_鍋 潤太郎
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映画『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』
大ヒット上映中!
アイアンマンが開発した究極の人工知能<ウルトロン>が暴走、人類滅亡のカウントダウンが始まった。絶体絶命の最強チーム"アベンジャーズ"に残された最後の武器は、「愛する人を守りたい」という熱い思いだけ......。
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
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