<2>ハイレベルな争い。ギャグアニメに期待
授賞式は、まず各審査員からの総評でスタート。
本年のゲスト審査員を務めた、森本晃司氏は「いつもより面白い作品が多すぎてどうしようかと。色んな観点でここが面白いとかポイントがあるけど、有力なクオリティの高い作品が集まって久々に面白いと純粋に思った」とコメント。
続けて、「例年、他の映画祭と比べてもクオリティの高い作品が集まってるけど、今年は特にズバ抜けてクオリティが高かったように思う」(森下勝司氏/プロダクションI.G)と言った意見が聞かれた。
それらを前提とした上で、櫻井 晋氏(コアミックス)は、10月期より自社作品から『北斗の拳イチゴ味』、『DD北斗の拳2 イチゴ味+』が放送開始となったことにちなんで次のようにコメント。
「ウチにはショートアニメの話ばかりが来るので、逆にそういったところに若い監督が入ってどえらい作品をつくってくれたら面白いのにと思う。長編だけがアニメではなくて、テレビアニメでも短い尺にどれだけ込められるかが面白い作品をつくれる監督なんじゃないかな。もっとギャグも増えてくれたら」。
今回の審査員一同
続けて、「審査する方も本数を観るのがけっこう大変で、ギャグアニメがねらい目じゃないかと。ねらう人が少ないから、ギャグアニメをねらってもらえると賞の上位に来る可能性が高い」(野口和紀氏/スタジオディーン)。
「個々の作品の独創性やクオリティ、音の使い方だとか様々な作品の評価をしていく要素が一般論としてあるが、『吉祥寺アニメーション映画祭らしさって何だろう?』というのを考えて選んだ」(津堅氏)。
「文化庁メディア芸術祭や毎日映画コンクールでも審査に参加しているが、吉祥寺は独特。なるべく鋭く短くズバッと、ギャグでもギャグじゃなくてもザクザク斬り込んでくるような作品が、吉祥寺では有利じゃないかな」(氷川氏)と、当映画祭ならではの傾向が明かされた。
そして最後に、「数が集まるだけあって、その中には惜しい作品がたくさんある。泣く泣く絞って最終的にこのような受賞とノミネートになった」と竹熊氏。
『HARBOR TALE』などで知られる伊藤有壱氏(I.TOON)が東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻の教授でもあることから、「極端な例を言うと、マンガの新人賞に手塚治虫が応募してきたようなもの」と、審査の難しさに関しても触れていた。
第11回吉祥寺アニメーション映画祭フォトセッション(吉祥寺シアターにて)
今回は「第69回毎日映画コンクール」のアニメーション部門で大藤信郎賞などを獲得している小野ハナ氏の『澱みの騒ぎ』など、東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻の作品が目立ったが、その一方で『共感覚おばけ』の牧野氏がP.I.C.S.、『ヌードバッター鉄雄』の谷口氏がILCA、『My New Animation』の平岡氏がCAVIARと、著名な映像プロダクションに在籍しているところからも層の厚さを感じさせた。
TEXT & PHOTO_真狩祐志
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吉祥寺アニメーション映画祭(本選)
日時:2015年10月3日(土)
場所:吉祥寺シアター
問:吉祥寺アニメワンダーランド実行委員会
kichifes.jp/animation