<2>カラー流のアニメCG技法とは
セミナーの後半は先の「CGに嘘をつかせる」話や爆発による煙などのエフェクトについて語られた。エフェクトは80年代の作画を再現するためハイディテールにし過ぎない、CGで汎用的な素材が仕上がれば別のプロジェクトに利用できる可能性がある、といった理由から極力2Dで描かないことが念頭に置かれた。
ヘルパーやコントローラーなどは全身で計5,000にも達したという
「今回はやっぱりリグにこだわりたくてですね。何故かと言うと、本作で画コンテを担当した摩砂雪さんはとにかく誇張表現が激しいんです。それを解決するためには、制限なく自由に動かしたいってのがアニメーターの要望としてあるんですが、かといって仕込みすぎて重くなるのは嫌だったのでリガーには『回転補正をかけたりとか、セットアップで混み入った制御とかは要らない、FKだけでもいいよ』と、伝えました」(松井氏)。
「見なければよかったって感じですね(笑)」(コヤマ氏)
さらに「形を変えたいとなったときにどうしてるかというと、こちら(上図の左側UI)がカメラアングルなんですけど、別アングルで見ると体を伸ばしてたりするんです。こうしないとキャラクターが潰れて見えなくなっちゃうんですよ」と松井氏は続ける。ほしい画を成立させるため、どうしても嘘をつかなければならず、そのためのリグが必要になってくるわけだ。
9の「口に出す!」は説明の際に効果音などで勢いのニュアンスを伝えるねらい
また松井氏は、注意した点としていきなりモデルにパースつけて嘘をつくのはなるべく控えたと語る。「何でもかんでも嘘をついてしまうと、全部パースが崩れてワケのわからない画になっちゃうんです。カメラでいかにそのレイアウトをとれるかやった後に、どうしてもそうしなければならない時にしたらいいかなと」(松井氏)。
さらに、黄金比を意識し科学的に構図を分析したり、ポーズにおける「肩、腕と腰」を意識する重要性、真似てみることから得られる新しい発見の大事さなど、松井氏がアニメーション制作において日頃から留意しているポイントが語られた。
仲眞良一氏は煙の形状について次のように話した。「この形状の煙はディスプレイスでモコモコさせた球体を組み合わせて作っていますが、球体の溝の影を表現するためにポリゴンを配置しています。ライティングしてみると右のようにCGっぽくなるので、ここに影のない球体や溝が集まったところの影を作りました。ライティングを調節せずに左のように絵が出るといいなと思います」。
(左)ビデオ屋の爆発の煙/(右)メディアポリスの爆発の煙など
仲眞氏によると、動きもパーティクルで作ると楽に思えるが、手で動かした方が自分の思い通りの動きになるとのこと。爆発も同じものを使用して、炎・煙・影の部分を幾つも並べて合成し、だんだん大きくしながら炎の部分を包み込んでいったそうだ。
セミナーの最後には、変身後にアスペクト比が4:3になった際に下部に出るアナログビデオテープ特有のスイッチングノイズや画質の劣化などが紹介された。
「スイッチングノイズは様々なパターンを作って、監督に選んでもらいました」(松井氏)
そして、松井氏がAfter Effectsを使用した「劣化感」を出すためのエフェクトに関して「元の画像を縮小したものを、拡大することで劣化させます。それから同じものを複製してから下に置いて、縦に縮めてノイズを加えるとさらに劣化感が出ます。そしてR、G、Bの色味を1枚づつ作って微妙にズラすと、左が黄色っぽく、右が青っぽくなるという感じです」と簡単に紹介し、本セミナーは幕を閉じた。
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アニメーションワークフローセミナー 第15弾 in 福岡
日本アニメ(ーター)見本市 第35話『カセットガール』メイキング - スタジオカラー デジタル部がひもとくCGによるアニメ制作の可能性 -
開催日:2016年1月21日(木)
場所:天神クリスタルビル 貸会議室 大ホール
主催:Too
協賛:オートデスク、日本HP、ピー・ソフトハウス
協力:カラー、日本アニメ(ーター)見本市
www.too.com/company/news/y2016/0105.html