<3>VRとアートバトルの融合
LIMITS はトーナメント形式で行われているが、試合のインターバルにはVRによるアートパフォーマンスが催された。Googleが開発するVR空間上に描くことのできるアプリ「Tilt Brush」のデモンストレーションが披露されたのだ。対戦カードは書家の 上田 普(うえた ひろし)氏と、「KYOTO VR」共同創設者を務めるなどVRアート分野で幅広く活動しているシムズ・アティカス/Atticus Paul Sims氏。
このデモンストレーションも LIMITS のルールに則し、ルーレットでテーマが決められた。お題は「魔法×花火」。なんとも VR アートにおあつらえなテーマである。上田氏は書家の強みを生かし、白色のブラシでVR空間上に「書」を描き(?)始めた。対するシムズ氏は色とりどりのブラシを使い分け、不思議な花火を描いていく。
Tilt Brush における VRアート作品は、描かれる線が動的(点滅・拍動など)であり、なによりVR空間上に存在するコンテンツであるため、文字で魅力を伝えることは非常に難しい。機会があるならばぜひ、ご自身で描き、鑑賞し、体験していただきたい
さらに様々なVRコンテンツを体験できる展示スペースも設けられていた。展示の中でも一際目を引いたのが、VR 特化型ライドマシン「SIMVR」(シンバ)だ。
「SIMVR」デモの様子
SIMVRは、約90万円という低価格でライド体験が可能な恐ろしいマシンである。2016年4月15日(金)から株式会社しのびや.com より発売され、徐々に導入実績も増えつつある。その実力は折り紙付きで、いくつかタイトルをプレイしてみたが、非常高い没入感を得られた。ゲーム中の加速動作で実際に風を感じた(と錯覚した)ほど強い現実感を得られたため、今後も同マシンを用いたタイトルに注目していきたい。
今後の展望としては、アミューズメント施設はもちろんのことながら、ネットカフェなどに設置したいということであった。課題としては、VR 体験にはゴーグルやマスクの付け外しを補助する人材が必要であるといった点だろうか。
<4>LIMITSが目指すもの
また、本企画において筆者が注目したのは運営体制である。以前、とあるゲームイベントに足を運んだ際は、体験ブースによっては長蛇の列2時間待ちだったり、MAPを見ても展示場所がわかりづらかったり、といったストレスを感じてしまったのだが、本イベントは非常に気持ちよくブースを回ることができた。これについて、気づいた点をまとめてみたい。
【1】 完全予約制でかつ、1つのブースしか予約できない。1つの体験が終わった後に再度受付で申込を行う。予約時間は10分間隔
【2】 1つのVR体験が5分ほどで終わるよう、出展者に徹底する。これにより回転率が非常に良かった
【3】 全てのブースにアイマスク(VRゴーグルが直接肌に触れないようにするためのマスク)を用意
【4】ブース位置はわかりやすいよう、番号を振って大きな看板を立てる
【5】 セパレータを使い、動線を確保する
【6】 各所にスタッフを配置し、極めて柔軟な対応を可能にする
......特に、【1】、【2】が非常に強力であり、待機列が発生しないことにより、動線を阻害する要因が大きく減じられたと思う。
VR展示会場の様子
LIMITS実行委員会に名を連ねる大山友郎プロデューサー(P.A.I.N.T. Inc. 代表取締役)は、「LIMITSがイラストレーター共通の世界指標となることを目指しています。テニス世界ランク2位、のような感じで、LIMITS世界ランク1位といったランキングが、イラストレーターのレジュメとなれるようにしたいですね。そして、LIMITSで繰り広げられたアートバトルを通して、出演アーティストたちのファンになってもらえると本望です」と、語ってくれた。
今回優勝した jbstyle.氏にも話を伺った。
「アートイベントでは洗練されたイベントが少ないが、LIMITSがこれを昇華してくれました。仕事の性質上、家に籠りがちなイラストレーターが自身のブランディングをする非常に大きなチャンスだと思います」。
LIMITSは、来年2月4日(土)・5日(日)の2日間にわたり大阪アメリカ村BIGCATにて、初のワールドグランプリとなる「LIMITS Digital Art Battle World Grand Prix」を開催予定だ。11月に行われる予定の地方予選大会からの8人や海外アーティストなど計16人が出場する。現在は国内予選のエントリーを受付中である。