>   >  ユーザーの要望を的確に汲んで進化した、7年ぶりの新バージョンの実力はいかに? PSOFT Pencil+ 4 for 3ds Maxレビュー
ユーザーの要望を的確に汲んで進化した、7年ぶりの新バージョンの実力はいかに? PSOFT Pencil+ 4 for 3ds Maxレビュー

ユーザーの要望を的確に汲んで進化した、7年ぶりの新バージョンの実力はいかに? PSOFT Pencil+ 4 for 3ds Maxレビュー

Topic 3:ライン設定の機能拡張

拡張されたライン設定により拡がる新たなライン表現

Pencil+ 4ではラインセットに[オープンエッジ]、[グループを結合]、[自己交差]、[選択エッジ]といったエッジ検出設定が追加されているが、中でも個人的に興味を引かれた[選択エッジ]をここで紹介したい。

[選択エッジ]は選択モディファイヤとセットで使用することにより、新しいアプローチでのライン設定が可能となる。選択モディファイヤでポリゴンやエッジを選択し、上位に[Pencil+ 4 選択エッジ]モディファイヤを作成すればライン設定が完了する、といった具合だ。実制作においてカットバイでラインを足したりするケースはままあるが、その際に折り目を設定したり交差用のオブジェクトを設定するといった手間が「選択エッジ」によって払拭できる。

またPencil+ 4のデモムービーでも紹介されているが、ソフト選択のアウトラインをライン出力できるので、オブジェクトに波紋が広がるような新たなライン表現も可能だ。


  • 選択モディファイヤでラインを出力したい形にエッジを選択する


  • レンダリング結果。選択されたエッジに沿ってラインが描画される


  • モディファイヤの構成


  • 別例として板にボリューム選択でノイズマップを当てたもの


  • レンダリング結果。選択範囲のエッジに沿ってラインが描画されている

Topic 4:ラインの外部参照

ライン設定の外部参照対応でワークフローの刷新なるか?

Pencil+ 4からライン設定も外部参照対応となった。手順としては参照元となるシーンにペンシル合成ヘルパーを作成し、通常の外部参照と同じように参照先で外部参照に設定するだけで完了となる。そのままシーンに合成することもできるので、通常運用は外部参照で、カットバイでモデル調整等が必要になった場合は合成して対応するなど、先々の運用に可能性を感じる。筆者の環境では様々な理由で敬遠されてきた外部参照であるが、今回のアップデートでハードルが一段下がったので、今後は外部参照による運用を視野に入れたい。


  • Pencil+ 4ラインを含んだシーンを外部参照したダイアログ画面。参照オブジェクトにラインの合成ヘルパーが読み込まれている


  • 外部参照されたシーンでのライン設定。各ライン設定は参照元に依存する

Topic 5:Nitrous シェーダー

Pencil+ マテリアルの表示をビューポート上で確認可能に

Pencil+ 4からはPencil+ マテリアルの表示設定をリアリスティックに変更することにより、ビューポートで表示を確認できるようになった。従来であれば一度テストレンダリングをして影付けやハイライトの具合を探っていたものが、ビューポート上で調整できるようになる。各Pencil+ マテリアルの表示設定は、前述のSpreadsheetを使用して一括で変更することができるので、設定も容易だ。

せっかくなのでいろいろな設定やマテリアルの組み合わせを検証してみた。いくつか制限はあるようだが、おおむねマテリアルで設定した通りに表示された。気になったところとしては「3ds Maxで計算した結果をpencil+ 4が受け取ってビューポートに表示する」といったフローなので、基本的に3ds Maxの仕様に紐づくことになるところだろうか。例えば[ライトを含む/除外]の設定は反映されず、複数のライトを使用してルックを決めるようなシーンでは、望む結果は得られないかもしれない。ほかにも3ds Maxが表示できないマップで置き換えると上手くいかないケースもあるだろう。このあたりはAutodesk側の対応が望まれる。

上記のような挙動はあるものの、上手くやればテストレンダリングの必要がなくライティング調整が可能になることは、実に喜ばしいことである。なお、Nitrousシェーダーの対応は3ds Max 2016以降なので環境には注意されたい。

表示設定を施したビューポート画面。思いつく範囲で様々な設定やマテリアルを検証してみた

レンダリング結果は以下の通り。1:ゾーン×1、2:ゾーン×2、3:ゾーン×3、4:ゾーン×4、5:ゾーン×8、6:ハイライト(異方性反射・方向)、7:ハイライト(スカッシュ・回析効果)、8:高度な設定(ハイライトデザイン)。9:高度な設定(グラデーションオフセットマップ)、10:ゾーン×3(ゾーン間グラデーション)、11:バンプマップ有効、12:反射マップ有効、13:カラーに合成マップを使用、14:ストローク、15:マルチ・サブマテリアル、16:シェルマテリアル、17:両面マテリアル、18:合成マテリアル、19:トップ・ボトムマテリアル、20:ブレンドマテリアル。おおむね設定通りに表示されたが、5では「ゾーン表示は4つまでの対応」、7、8、11、18~20では「サポート外」といった制限もみられた。筆者の環境や設定の不備で表示されていない可能性もあるが、上記を使用する際は注意が必要かもしれない

総括:ユーザーからの要望に的確に応えたアップデート

今回のレビューでは紹介しきれなかったが、Pencil+ 4のアップデートはマテリアルの透過やライト強度の制御、ラインサイズの減衰設定のインスタンス化、UI面の強化など、ユーザーの要望に的確に応えたアップデートであると感じた。Pencil+ 3からの移行に関しては、例によってコンバータが提供されており、シーン内のライン設定・マテリアル・モディファイヤ等を一度にコンバートでき、データ的な移行は実にスムーズだった。

懸念としては3ds Maxの対応バージョンが2015以降であることだろうか。それ以前のバージョンを主力としているスタジオも少なくない現在、3ds Maxのバージョンを上げてまでの導入はハードルが高いかもしれない。Pencil+ 3の使用率から鑑みて、コスト的な面での足踏みもあるだろう。かくいう著者の環境も今のところPencil+ 3を継続して使用している。お伝えしてきた新機能、特にレンダリング速度の向上は非常に魅力であり、本心では今すぐにでも乗り換えたい。業界に身を置くひとりとして、1日でも早く実務におけるPencil+ 4の普及を切に願う。今回のレビューが、その足がかりの一端になれば幸いだ。

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