<2>GRADIAによるアップスケーリングの合理化
セッション後半は同作で使用されたアップコンバート技術、GRADIAについて、開発元のアクセルの品田仁志氏が解説を行なった。
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品田仁志氏(アクセル)
www.axell.co.jp
GRADIAは同社が開発したミドルウェア製品AXIPシリーズのひとつで、標準的なバイリニア拡大に比べ、アップコンバートした際のジャギーをよりスムーズにする効果がある。『INGRESS THE ANIMATION』ではレンダリングやコンポジットを軽くするために1280×720ドットで制作し、GRADIAを使って1920×1080に拡大することで効率的に制作を行うことができた。従来はアップコンバートを編集スタジオ(ポストプロダクション)で実施していたが、GRADIAは撮影の工程でリアルタイムに行うことができる。GRADIAは今後、After Effects向けのプラグインもリリースする予定だ。
限られた時間の中でワークフローの要点を押さえた『INGRESS THE ANIMATION』メイキング講演。海外市場を念頭に置きつつも日本発のアニメーションとしての独自性を出すキャラクターやアニメーション表現、演出面での変更や背景制作、アップスケーリングの合理化など、解説からはどの行程においても目的から逆算したつくり方を指向しているようすが感じられた。途中からStoryboard PROを使用するなど、制作過程には試行錯誤する場面もあったようで、クラフタースタジオがさまざまな経験を得たことがうかがえる。2019年1月には同スタジオの新作『あした世界が終わるとしても』の公開が控えており、早くもその成果を見ることができそうだ。