撮影監督・プロデューサーAustin Shaw氏インタビュー
本作の撮影に使用した何台もの高性能カメラの、メーカー名とカメラの特徴を教えてください。
Austin Shaw氏(以下、Austin):全ての撮影にソニーのF55カメラと焦点距離50~1000mmのキャノンのCN20映画制作用レンズを使用しました。この組み合わせによって、非常に質の高い、真の4K映像を撮影することができました。このレンズはもともと野生動物の写真を撮影するために開発されたため、広角撮影から至近距離のクローズアップ映像まで撮れる柔軟性があります。これは固定された位置から撮影する際に特に役に立ちます。劇場のような、観客席の中にしかカメラを設置できない場所がその1つです。
©Brinkhoff/Mogenburg
本作で使用したカメラワークで、最も力を入れられたのは、どのシーンですか?
Austin:カメラワークで最も力を入れたのは「キープ・ヤング・アンド・ビューティフル」のシーンで、傾けた鏡の中にバスビー・バークレイ風の画が映し出される場面ですね。カメラを完璧な位置に設置にしなければなりませんでしたし、ダンサーたちの振付のタイミングも完璧でなければなりませんでした。1930年代のバークレイ作品のすばらしい映像へのトリビュートとして成立させたかったのです。
本作では「舞台の客席からは観ることのできないダンスシーンの形状を、映画用に撮影した角度で」観せていますが、撮影時に工夫された点はありますか?
Austin:このシーンは全て、初演時の演出を担当したガワー・チャンピオンと彼の装置デザイナーであったダグラス・W・シュミットのおかげです。傾けた鏡を取り入れるという構想は彼が初めに思いついたもので、観客が(または少なくとも中央のいい席に座っている観客なら!)バークレイの描いた光景を楽しむことができるようにするためでした。撮影に際して私たちがしなければならなかったのは、このショットをうまくフレームに収め、ステージに横たわる女性たちのダイナミックな関係性と、鏡に映し出されたその姿を見せることだけでした。スタジオ制作されていた1930年代の映画では、バークレイはカメラを動かすことができ、舞台装置を宙に浮かせてより多くのダンスのパターンを披露することができました。私たちの場合は劇場のサイズによる制約があり、カメラを動かせる範囲も限られているため、このシーンは鏡という装置に頼らざるを得なかったのです。
完成された作品をご覧になってのご自身の感想を教えて下さい。
Austin:『42ndストリート』はすばらしい舞台ですし、今作はこれまでで最大規模のプロダクションであり、キャストの人数も過去最多です。そのため、私たちは観客のみなさんに完成した映画をできるだけ大画面で観賞してほしいので映画館で観てほしいと考えています。カメラ・ディレクターのロス・マクギボンは、自身もダンサーでしたので(※英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパルを務めた)、映画のような2次元メディアの枠組みの中でダンスを鮮やかに捉える資質を備えています。彼のスキルと、ステージショーそのものとしての魅力が見事に映画化にされていると思いますよ。日本の観客のみなさんがロンドンのプロダクションのすばらしさを感じていただける機会が設けられて、とてもうれしく思います。この規模のショーがツアーを行う可能性はかなり低いですから。私たちも、演出を担当したマーク・ブランブルも、このショーをロンドンでの公演中に撮影できたことを、そしてこの先何年にもわたってこの作品が観賞されることになることをとても誇らしく思っています。
映画館での新しい『42ndストリート』の魅力は何ですか?
Austin:『42ndストリート』はブロードウェイでも屈指の伝説的な作品ですが、リバイバル公演が行われることはめったにありません。ブロードウェイのダンスが好きなら、この作品は必見です。まさに1930年代のブロードウェイとハリウッドのすばらしいダンスミュージカルへのトリビュートですから。今回の映画版制作では、最大かつ最高のバージョンを映像に収めています。
©Brinkhoff/Mogenburg
撮影に当たって、何を心がけていましたか?
Austin:先程もお話したとおり、私たちは常に最高品質を目指していますので、どの作品の映像化においても、常にそのショーの最高のバージョンを鑑賞できるように取り組んでいます。映像にした際、見栄えがいいように衣装を修繕したり、つくり直したりするべきか。ミキシングでは、最高の音質を確保できるようにタップダンスの音を別録りするべきか。私たちはショーのどの部門の責任者にも必要なものが調達できるように心がけて、皆が最終的な作品の映像や音に満足できるようにしています。
どのような方々にご覧になって欲しいですか?
Austin:できるだけ多くの方に完成した映画を観てほしいですね! ですが真面目な話、私たちにとって本当に大切なのは、遠く離れた場所にいる方々がこの映画を観る機会を得ることです。ニューヨークやロンドン、そして東京のような大都市で暮らしていたり働いていたりする人は、すばらしい演劇やアートを生で観る機会に恵まれています。その他の遠方の街や都市、あるいは国で暮らしている人にはそのような機会がありません。あるいは、生の公演を観に行くとなると単純に旅行の費用がかかりすぎるという場合もあります。ショーを映像化して映画館で上映することで、普段は鑑賞する機会のない若い人たちにアートプログラムをご覧いただきたいと考えています。そして願わくば、若者たちが今作をきっかけに、視聴者として、あるいはいつかは演者や製作チームの一員としてアートを愛するようになってほしい。
日本の読者にひと言、コメントをお願いします。
Austin:日本のみなさんがこのショーを、そしてそこで演じられるブロードウェイの様々な形式のダンスを楽しんでくれることを願います。この作品がみなさんにとって、他の様々な形式のダンスを楽しみ、異なるスキルや美しさを比較したり対比させたりする機会になると思います。