"熱量"を損なわないワークフローを求めて
言うまでもなくフルCGで物語を描く上ではアクションだけでは成り立たない。ドラマ、つまりはキャラクターたちの心情を効果的に描く必要がある。フェイシャルには特にこだわっているという、StudioGOONEYSアニメーションチームの取り組みを紹介しよう。
全カットのステータスを明確に定める
アニメーションのワークフローは、まずアクションとアクティング(ドラマ部分のキャラクターアニメーション)に分類される。アクションパートについては、Vコンテを基にレイアウトが作成され、同時にアニメーションの作業に入る。こちらのレイアウトはワークフロー内では「レイアウトB」と呼ばれるもので、すでにアクションVコンテで提示されているため、それに合わせてアニメーターがシーンを構築してCGアニメーションを作成していくというながれだ。
一方のアクティングパートは、絵コンテを基にしてモーションキャプチャでアニメーションデータが作成され、絵コンテに合わせてシーンが構築された「レイアウトA」と呼ばれるレイアウト工程を基に、キャプチャデータを利用したアニメーション作業が行われるというワークフローが採られている。
アクティングパートのワークフローで特徴的なのは、カットごとにステータス管理を行い詳細なコスト見積もりが試みられている点だ。ステータスは「モーションキャプチャのリダクションだけでOKなカット(ステータスA)」、「コンストレイン+タイミング+αの修正が必要(ステータスB)」、「モーションキャプチャの演技プランだけを採用(ステータスC)」、「キャプチャデータが使えない・使わない(ステータスD)」の4つに分類されている。ステータスの判断はキャプチャ収録時に斎藤氏がジャッジしている。
「今回カットごとにステータス管理をしたのは、スケジュールがタイトであることに加え、規模が大きく、多くのデザイナーが関わっていくことを想定した施策になります。なお、キャプチャ現場でのステータスと絵コンテの情報のどちらが正しいのかについても、ここで補足します。作業時の演出変更を未然に防ぎつつ、クライアントへのクオリティ保証を考えてのことでした。ステータスは香盤表で管理していますが、修正の範囲は担当者に委ねている部分もあるので、アニメーターが自発的にリテイクを行なっているカットもあります」(斎藤氏)。
StudioGOONEYSのアニメーション班は約10名。アクションシーンについてはVコンという確かな指針があるため、ドラマシーン、特にフェイシャルをいかに効率良く作成していくのかが主題になったという。「半数以上がキャリア3年以内だったので、まずはフェイシャル作業と仕事を進める上での心がまえについてのレクチャーを行ました。技術的なことだけではなく、アニメーターとしての課題や監督などからのフィードバックへの対応の仕方など、仕事への向き合い方なども説明していきました。各自がもっている知識や技術を出し合い、チームとしての総合力を高めていくなかで、ツール機能について先輩が1年目のスタッフに助けられているといった場面もあり、とても良いチームだと思います」と、アニメーションSVを務める渡辺このみ氏。
ステータス管理に基づいたアニメーション作業
ステータスA〜Dごとの、絵コンテ、レイアウト、完成形の比較図
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ステータスC。ケセド(CV:千葉 繁)は頭身が低いキャラのため、キャプチャデータとしては演技プランのみを使う想定であったが、細かな動きまでは拾うことができずほぼ手付けのアニメーションとなった
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オペコ(CV:田所あずさ)は、キャプチャ収録後にキャラクター性の修正が入ったため、演技自体が手付けでつくり直された
フェイシャルライブラリ
ターゲット作成に先立ち、XFLAG PICTURESから提供されたデザイン画や絵コンテから、必要な表情を精査するために作成したリストの例
太田氏が作成したフィシャルアニメーション用ライブラリ(ブレンドシェイプとコントローラで作成)。このライブラリを基に、リップシンクの合わせ方やカメラワークに応じたポーズの見せ方、歯の見せ方や目線の動かし方など、実演を伴ったレクチャー会が実施された
アニメーションメイキング
フェイシャル作成の例。(左図)ターゲットモデルのみ使用/(右図)リグで位置調整などを加えてブラッシュアップした状態
フェイシャル作成ルールの例。女性キャラ、特にパンドラ(CV:小倉 唯)などのような若い年齢の場合は下の歯よりも上の歯を見せた方がかわいさが増すため、このルールに基づき作成されている
オペコの見え方の調整例
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