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未来をテーマに学生がプロジェクションマッピングに挑戦。「東京プロジェクションマッピングアワード vol.0」レポート

未来をテーマに学生がプロジェクションマッピングに挑戦。「東京プロジェクションマッピングアワード vol.0」レポート

優秀賞、最優秀賞の発表

9チームの作品上映が終了すると、会議棟6階に場所を移し優秀賞と最優秀賞の選考及び発表となった。今回審査員として、阿部秀司氏(株式会社阿部秀司事務所 代表取締役・プロデューサー)、森山朋絵氏(キュレーター/東京都現代美術館学芸員)、スプツニ子!氏(現代美術家 / マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボ助教 / デザイン・フィクション・グループ研究室主宰)、森内大輔氏(クリエイティブ・ディレクター/プロデューサー/デザイナー)、橋本大佑氏(映像作家/アニメーション作家)の5名がそれぞれの知見から作品が審査された。

▲(左から)橋本大佑氏、森内大輔氏、スプツニ子!氏、森山朋絵氏、阿部秀司氏

審査の結果、優秀賞にはVISIONICA/デジタルハリウッド大学の『CYBER-TRIP』、テクノ家/多摩美術大学の『Tamping Traveler』の2作品が選ばれた。

「『CYBER TRIP』は、サウンドとビジュアルを身体で感じてくださいというメッセージの通り、非常に疾走感あふれるビジュアルが印象に残った作品でした」(スプツニ子!氏)、「『Tamping Traveler』は、審査員の中でも作品の内容がプロジェクションマッピングに適しているのか、投影対象の形状などを活かしているのかなど、様々な議論があった作品でした。ただし、私が個人的に思ったのはエンタテインメントとは、人とは異なることを表現して意外性のある作品をつくりみんなに驚いてもらったりすることだと思っています。みんなが思い描いていることと、その作品とのギャップの幅が、みんなを喜ばせたり楽しませたりするのかなと思っています。そういう点でいうと他のチームがプロジェクションマッピングらしいつくり方をしている中、この作品はそれをくつがえすような形式を意識しないで自由な表現であったり、モチーフで選んでいた工事現場のキャラクターとか、それが地上から宇宙に行ってしまう冒険の距離感などそういったところが評価されました」(森内氏)と講評がなされた。

  • ▲優秀賞:『CYBER-TRIP』(VISIONICA/デジタルハリウッド大学)

  • ▲優秀賞:『Tamping Traveler』(テクノ家/多摩美術大学)

そして最優秀賞は、SHIFT/首都大学東京 インダストリアルアートコースの『PLUS ONE』が受賞した。「この作品はダントツで評価が高かった。私は平面に映す映像を専門に制作していますが、このような立体に映すというのはとても興味がある。プロジェクションマッピングをこれまであまり見る機会がなかったので、どんな感じで上映されるんだろうと。実際に見てみたら本当に素晴らしい。次回Vol.01が年末にあるようなのでそのときにも頑張って欲しい」(阿部氏)と講評があった。

▲最優秀賞:『PLUS ONE』(SHIFT/首都大学東京)

授賞式の最後は、森山氏の全体講評でしめられた。

  • 「このような機会を間近に目撃できたことは本当にうれしい一夜だったと思います。思い出話をさせていただくと、恵比寿ガーデンプレイスにある東京都写真美術館ができたときに、都市の中で何かが始まる、映像ができることを都市の中から発信していくということが表現できないかと考えて、プロジェクションマッピングを使って美術館のオープンと恵比寿ガーデンプレイスのオープンを祝うという機会をいただいたことがあります。その時に、都市で映像の可能性、映像にできることが発進されていく、表現の素晴らしいプラットフォームが大型の映像、没入できるような映像の世界というところからスタートするのだなぁという予感がありました」。

「その後20年、プロジェクションマッピングについては色々なエポックメイキングなイベントが開催されました。例えば2012年の東京駅でのプロジェクションマッピングは、必然性を含めて映像で表現できる全部入りの見事なプロジェクションマッピングでした。それらを私たちが目にすることで、このプロジェクションマッピングという表現が社会のものとなったと思います。今日、みなさんの作品を見せてもらって感じたことは、映像作品としてナラティブに優れているものは一杯あったのですが、空間の表現として、ロケーションであったり必然性であったりダイナミックな動きであったり、座標軸の変換であったりもっとできることがたくさんあるのではと思います。もっと私たちが驚くような作品がでてきてもいいのではないかと思います。次回からは今日を励みにそのような表現を心がけて欲しいと思います。日本には写し絵という世界でも例のない伝統文化があります。江戸では風呂と呼ばれていて上方では錦影絵と呼ばれていました。みなさんは写し絵の伝統を新しい技術で表現、継承していく機会を得ているのです。ですので、今日を忘れずに驚くような作品制作をし続けてください」と激励した。

東京プロジェクションマッピングアワードは、今年12月にvol.01として本格始動する。東京のこの地から新しい映像表現ができるクリエイターが育つことを期待したい。



TEXT_大河原浩一(ビットプランクス
PHOTO_弘田充

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