イラストがそのまま動く3Dへ――ChiharuがBlenderで挑む"kawaii!"キャラクターモデリングとAMD搭載「SENSE-F1B8-LCR98Z-TGX」
2Dイラストのニュアンスを活かしたVRChat向けアバターやオリジナルキャラクター制作で注目を集めるキャラクターデザイナー/アートディレクターのChiharu氏。今回、AMD Ryzen™ 7 9850X3DとAMD Radeon™ RX 9070 XTを搭載したクリエイター向けPC「SENSE-F1B8-LCR98Z-TGX」を使用し、Blenderでの実制作を通じたパフォーマンス検証を実施した。ビューポートの快適さやスカルプト時のレスポンスなど、現場目線でのリアルなレビューをお届けする。また、今月末開催の「BlenderFes 2026 SS」での登壇内容に向けた意気込みも伺っていく。
Chiharu氏
キャラクターデザイナー&アートディレクター
映像制作会社にて、3DCGアニメのキャラクターデザインやコンセプトアート、イラストレーションをメインに担当。日頃は2Dでのデザインワークを主軸としているが、さらなる表現の追求を兼ね、趣味でBlenderによる3Dモデリングの学習を開始。当初は「2Dを3D化する際の課題解決」や「モデラーに意図が伝わる設定図の在り方」を模索する実地研究のつもりだったが、気づけばリアルタイム3Dキャラクター制作の奥深さに心酔。現在は、2Dのニュアンスを殺さない3Dアバター制作の「沼」にどっぷりと浸かりながら、ハイブリッドな視点を持つクリエイターを目指して日々試行錯誤を続けている。
X:@chiharu_DQX
hub.vroid.com/users/95837688
手描きイラストの魅力を3Dで表現する「Kawaii!」の追求
――まずは自己紹介と、現在の制作作品のスタイルについて教えてください。
Chiharu:普段はCG映像制作会社の社員として、3DCGアニメや番組に登場するキャラクターデザイン、版権イラストの制作などを担当しています。個人の制作スタイルとしては、手描きイラスト風のアニメやコミック的ルック表現を主軸にしています。その時に「つくりたいな」と浮かんだキャラクターイメージを、デザインを起こしながらかたちにしていくアプローチです。
僕は、3DCGっぽいものよりも、イラストがそのまま動いているような3Dモデルをつくりたいと考えています。完成したキャラクターをVRChatのアバターにしたり、VRMモデルをARアプリを使って現実の街中に登場させたりといった遊びも好きですね。リアルな風景に完全に溶け込むのではなく、あえて少し浮いているけれど「1枚の画になる」ようなモデリングを目指しています。
▲Chiharu氏がXに投稿している作品例。同氏が作成したVRMモデルと撮影した写真を組み合わせたARアプリ画像
――カートゥーン的な頭身のキャラクターも制作されていますが、海外からの反響も大きいそうですね。
Chiharu:はい。今回はチビキャラとまではいきませんが、頭身の低いキャラクター制作に興味を持ち、Xに進捗をポストしていたところ、今回のBlender Fes登壇のお声がけをいただきました。制作過程で、海外の方から「Kawaii!」という感想をいただくことが多いんです。「Cute!」よりも特別なリスペクトが込められた、日本のポップカルチャーに対する敬意を表す言葉だと知り、そういう感覚や日本語表現ってすごくエモいなと感じて、セッションのタイトルにも使わせていただきました。
cgworld.jp/special/blenderfes/vol6/?channel=channel-952
――現在制作されているモデルについて教えてください。
Chiharu:ポリゴン数は今のところ6万ポリゴンほどです。見た目だけでなく、データとしても美しくつくりたいというこだわりがあり、本当はもう少しポリゴン数を落としたかったのですが、靴の形状など「ちょっと変わったものにしたい」というこだわりが所々に出てしまいました(笑)。
2DデザイナーがBlenderに惹かれた理由とカルチャーショック
――2Dを主軸に活動されてきた中で、3D制作を始めたきっかけは?
Chiharu:業務では3DCGアニメ用のキャラクターデザインとして、立体化前提の三面図や設定画を描いているのですが、「3Dモデラーさんにデザイン形状の趣旨が本当に伝わっているのか?」とか、「このまま三面図を描き続けていて良いのか?」という疑問がありました。
それを解決するには、僕自身が3DCGを理解し、モデリングを経験する必要があると感じたのがきっかけです。ただ、実際に3DCGを知ったことで、造形の奥深さに触れ、より難解になってしまった気もします(笑)。
――ツールにBlenderを選んだ理由は?
Chiharu:職場には3ds MaxやMayaもあり、いつでも触れる環境でしたが、仕事のイメージもあり個人の制作に使用するのはあまり乗り気になれませんでした。そんな時、SNSやYouTubeでBlenderを使った制作過程やTips動画を見て、皆さんが自由に純粋に楽しんでつくっている雰囲気がすごく魅力的だったんです。Blender自体は昔からありますが、僕にとってはすごく革新的で「触ってみたい!」と思わせるオーラがありました。
――1つの作品をつくるのに、どのくらいの制作期間をかけていますか?
Chiharu:本業の空き時間や夜中を使って作業しているので、1体につき半年ほどかかっています。のめり込むと朝までやってしまうほど楽しくて、最近は自分の時間のほとんどをモデリングの時間が占めています。個人制作なので納得いくまで何度でもつくり直したり、作りこんだりしたくなってしまうんです。きちんと完成させられるように、あえてXで進捗を公開したり、大きな修正も1回にとどめ、ある程度で見切りをつけるように心がけています。
本当はもっとVRChatのワールドをいろいろ巡りたいのですが、なかなか時間配分が難しいですね。
――VRChat向けのアバター制作もされていますよね。
hub.vroid.com/users/95837688
Chiharu:そうですね。せっかくモデルを作るなら動いているところを見たかったのと、アニメーションまで作るとなると大がかりになりすぎてしまうので、VRChatやVTuber向けアバターのようなリアルタイム3Dキャラクター制作が僕に合っていました。
それと、VRChatのカルチャーショックは大きかったです。肌や髪の陰影がセルルックでアニメ的なキャラクターなのに、衣装の形状やテクスチャはリアルアパレルに寄せているアバターが多いんです。
最初は違和感があるのではと思いましたが、実際に見ると案外自然で、アニメやゲームのビジュアルとはちがう、新しい表現として受け入れられているのが面白いですね。また、ポリゴン数を度外視したビジュアル重視の自由な空気感もあります。「髪の毛を1本1本立体でつくる」といった、商業的なデータ節約の概念から外れたスケール感には驚かされました。
僕自身はイラストテイストに寄せてつくっていますが、誰でも参入できて、自分の「好き」を自由に表現できる裾野の広さは素晴らしいと感じています。
1,000万ポリゴン超えのスカルプトもサクサク動く快適性「SENSE-F1B8-LCR98Z-TGX」
――今回はAMD Ryzen™ 7 9850X3D、AMD Radeon™ RX 9070 XT搭載の「SENSE-F1B8-LCR98Z-TGX」を検証していただきました。率直な第一印象を教えてください。
クリエイターパソコン「SENSE-F1B8-LCR98Z-TGX」
- CPU
AMD Ryzen™ 7 9850X3D
- メモリ
32GB(16GB×2) DDR5
- GPU
AMD Radeon™ RX 9070 XT 16GB GDDR6
- ストレージ
1TB NVMe対応 M.2
Chiharu:まず、電源を入れてから起動し、操作できるようになるまでのスピードが格段に速くて驚きました。Blenderを立ち上げていつもの作業データを読み込んでも、全くストレスなくスッと動いてくれたので、「これはいけそうだな」とすぐに感じましたね。
――具体的には特にどのような部分で恩恵を感じましたか?
Chiharu:やりたいことを止めずにサクサク動かせる点ですね。基本のベースモデルは6万ポリゴンですが、アウトライン用のソリッドモディファイアーを表示すると約10万ポリゴンになります。さらに、制作途中でバックアップ保存しているラフモデルやリトポロジー前のスカルプトモデルを含めると、データ全体で1,000万ポリゴンを超えます。普段は非表示にしていますが、それらを全て3Dビューポートをソリッドモードにしても、レスポンス良く視点を動かしてモデリングできて、驚きました。
――特に高負荷な作業ではどういった挙動でしたか?
Chiharu:スカルプト造形した衣装を、リトポロジー前に関節部分の曲がり具合を確認するため、おおざっぱにスキニングして動かすことがあります。さすがにハイポリゴンモデルにウェイトを付けて動かすと動作は重く感じましたが、それでも普段のPCよりは軽く処理できている印象でした。
――搭載メモリは32GBですが、普段お使いの64GB環境と比較してちがいは感じましたか?
Chiharu:全くちがいは感じませんでした。事前に「32GBあれば十分」という情報も調べていたのですが、実際に制作を進めてみても不足を感じる場面はなく、ちょうど良いスペックだと思います。
キャラクターモデリングに最適なシングルコア性能とコストパフォーマンス
――Chiharuさんの制作スタイルと、今回のPCの相性はいかがでしたか?
Chiharu:僕は普段2D作業で絵を描く感覚でモデリングをしたいので、スカルプト時のビューポート操作や、ペンタブレットの追従性、連続でアンドゥした時のレスポンスを非常に重視します。
今回のAMD Ryzen™ 7 9850X3Dはベースクロックが約4.3GHzで、ブーストすると最大5.6GHzまで上がるCPUですが、このシングルコア性能はトップクラスです。
Blenderのモデリングやスカルプトはシングルコア性能が重要になるので、AMD Ryzen™ 7 9850X3Dの恩恵は大きく、僕のスタイルを阻害しない快適な操作感を得られました。
Chiharu:また、普段の作業と同様に、他のモデルデータをリファレンスするためにBlenderを4つ多重起動してみましたが、それでもPC全体が重くならず、スムーズに切り替えられました。この点に大きなメリットを感じましたね。
――GPUはAMD Radeon™ RX 9070 XTですが、ビューポート表示はいかがでしたか?
Chiharu:全く問題なく、ノーストレスで完結できました。少なくとも僕のモデリング作業やビューポート表示においては一切の不具合やストレスがなく、非常に快適に動作してくれました。モデリング重視の僕のスタイルには非常にマッチしています。
――ケースのサイズ感や静音性についてはいかがでしょう?
Chiharu:ミドルタワーということで少し大きさはありますが、クリエイター向けの高性能パーツや大型GPUを搭載し、かつ熱を逃がすためには必要なサイズですね。個人的には、デスクの下に問題なく置けるので、気になりません。
それ以上に素晴らしかったのは静音性です。ユニットコムの SENSE∞シリーズはクリエイター向けに冷却やエアフローがしっかり設計されているので、作業中も本当に静かで、モデリングへの集中を一切削がれませんでした。VRChatに入ってボイスコミュニケーションを取る際にも、PCのファン音をマイクが拾いにくいのは大きなメリットだと思います。
――これから本格的にBlenderを始めたい方に、PC選びのアドバイスをお願いします。
Chiharu:モデリングやスカルプトを重視するなら、やはりCPUのシングルコア性能と32GB以上のメモリが重要です。「SENSE-F1B8-LCR98Z-TGX」は初心者から中級者には十分すぎるほど快適な環境を提供してくれます。
「初心者だから安いPCでいい」と思うかもしれませんが、動作が重くてカクカクすると、楽しむ前にモチベーションが下がってしまいます。初心者ほど、途中で挫折しないために最初から良いPCを使った方が良いですね。
最近はゲーム目的でPCを買う人も多いですが、ゲーミングPCとCG制作用PCは親和性が高いので、そこから3D制作の世界に入ってくるのも大賛成です。
BlenderFesでは“立体映え”するイラストルックな造形術を公開
――今月末開催の「BlenderFes 2026 SS」に登壇されますが、どのようなセッションになりますか?
cgworld.jp/special/blenderfes/vol6/?channel=channel-952
Chiharu:3Dキャラクター制作における表現の幅の広げ方をお話しします。具体的には、スカルプトやペンタブレットを用いたモデリング手法、イラストのようなルックでありながら3D空間でしっかり“立体映え”を意識した造形のコツ、そしてテクスチャの描き込み法など、現場で試行錯誤してきたテクニックをお伝えする予定です。
――テクスチャの描き込みまでカバーされるのですね。非常に実践的な内容になりそうです。
Chiharu:はい。時間内でできる限りお伝えしたいと思っています。特にテクスチャのアプローチは皆さんが気になっている部分だと思うので、他のセッションとの差別化も兼ねて、僕なりのノウハウをしっかり公開できればと考えています。
一次創作を楽しむ全てのクリエイターへ
――今回のセッションは、どのような方に届けたいですか?
Chiharu:一番届けたいのは、一次創作でオリジナルキャラクターを制作し、それを3Dで形にしたいと考えている方々です。
SNSでオリジナル作品を発表しても、二次創作に比べてなかなか反応が得られず、モチベーションが下がって制作をやめてしまうクリエイターを何人も見てきました。それが個人的にすごく悲しくて。だからこそ、「自分だけの“可愛い”を立体で追求するのはこんなに楽しいんだよ」ということを伝えたいですし、少しでも見せ方を工夫して反応を得られるようになるためのヒントを持ち帰ってもらえたら嬉しいです。
――最後に、BlenderFesに向けたメッセージをお願いします。
Chiharu:著名なクリエイターの方々と並んでBlenderFesのステージに立つ機会をいただき、今でも身の引き締まる思いです。正直なところ大きなプレッシャーも感じていますが、それ以上に「僕がこれまでやってきた試行錯誤の知見が、誰かひとりにでも役に立てば」という一心で準備を進めています。当日は、参加される皆様に新しい発見を持ち帰っていただけるよう精一杯努めますので、よろしくお願いします!
TEXT__kagaya(ハリんち)
EDIT_遠藤佳乃(CGWORLD)