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『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』シリーズが実践する、新世代のアニメ撮影ワークフロー(旭プロダクション)

『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』シリーズが実践する、新世代のアニメ撮影ワークフロー(旭プロダクション)

STEP 04:セルと3DCGを融合させる

最終的なコマの調整も撮影班で対応する
CGと作画を融合させるためにはCG素材も作画と同じように扱うことが重要で、CG素材のコマ抜きも撮影で調整を行うことで馴染みが良くなるという。またCG素材は綺麗な画になりがちなので、ポイントポイントであえて処理にアナログ的なムラを付けているのだという。

3期でイリヤが「ツヴァイフォーム」に変身した際に背中側に描かれる羽根のようなエフェクトは、FumeFXとKrakatoa、Particularでテクスチャ素材が作成されており、羽根の内部に2つ、羽根から発生する2つの計4種類のテクスチャで構成されており、これらの処理も「aep変更 」を使用すれば瞬時に処理が完成するしくみとなっている。また、ステッキの先端に付いた球体オブジェクト内の小宇宙も中西氏が作成したCGエフェクトを静止画連番で書き出したものをCG班にテクスチャ素材として提供することで、CG側の作業負荷を抑えるといったアシストもしているとのこと。

「3DCGを使用してテクスチャ素材を作成する機会が増えていますね。先日は作画のガイド用に水滴のシミュレーション素材を作成しました。OPに登場する水面に落下する水滴はアーカイブ映像をロトスコープして作画していたのですが、音に合わせて3滴落下させた実写を撮るのはほぼ不可能であるためPhoenix FDでガイドを作成したんです(笑)」と、中西氏。

『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』撮影メイキング

© 2015 ひろやまひろし・TYPE-MOON/KADOKAWA/「プリズマ☆イリヤ ツヴァイヘルツ!」製作委員会

4期こと『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ ドライ!』の製作がすでに決定している本シリーズ。先述したとおり新たにプリヤ班専用のレンダーサーバも構築されることが決まるなど、会社のサポートを得ながら、さらなるチームの強化に取り組んでいるという。
「とは言え、社内では依然として3DCGも扱う変わったチームという、異端児扱いですね(笑)。自分としては必要に迫られてCGソフトを使いはじめたわけですが、新たな表現を追求していく中で少しずつ浸透していけばと思っています」と、中西氏が語るように、10月から配信がスタートしたWebアニメ『モンスターストライク』では、監督をドメリカの市川量也氏が務めていることから、渡辺有正氏が撮影監督を、鯨井氏が撮影監督補佐として参加している。
『プリヤ』プロジェクトで育んだ信頼関係を下に、プリヤ班こと中西氏のチームの活躍の場が広がりはじめているのだ。

『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』撮影メイキング

© 2015 ひろやまひろし・TYPE-MOON/KADOKAWA/「プリズマ☆イリヤ ツヴァイヘルツ!」製作委員会

4−1.Houdiniによる波打ち際の表現

『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』撮影メイキング

『ツヴァイ ヘルツ!』ではHoudini FXを新たに導入し、波打ち際のCGエフェクトを作成。「今回はとにかく立体的な動きさえシミュレーションできればよいとわりきって、細かい設定は飛ばしました(笑)」(中西氏)

『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』撮影メイキング

<Process-1>
波打ち際カットのコンポジット例。処理前の状態


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<Process-2>
(左)Phoenix FDのOcean Textureで作成した海面素材/(右)Houdiniで作成した波打ち際の素材


『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』撮影メイキング

<Process-3>
全ての素材を合成し、撮影処理を施した完成形


4−2."宇宙"が込められた「ツヴァイフォーム」

  • 『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』撮影メイキング
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<Asset-1>
ツヴァイフォームは基本的に4種類のCGから生成したテクスチャによって構成されている。(左)羽根の元素材/(右)アウター用CGテクスチャ(その1)。作画と同じ方向に動き、作画のアウター用テクスチャとなるもの(FumeFXで作成)


  • 『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』撮影メイキング
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<Asset-2>
(左)アウター用テクスチャ(その2)。Particularで生成/(右)インナー用テクスチャ(その1)。作画の羽根に貼り込むテクスチャ、Particle FlowとKrakatoaで素材を生成


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<Asset-3>
(左)インナー用テクスチャ(その1)を作画の羽根に貼りこんだ状態/(右)インナー用テクスチャ(その2)。作画の羽根に貼り込むもうひとつテクスチャであり、ParticularとFumeFXで作成している。「今回は主たるビジュアルコンセプトとして『宇宙』があったので、CG素材を作る際にときどき流れ星が流れるようにしたのですが、実際のカットではまず見えませんでした(笑)」(中西氏)


  • 『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』撮影メイキング
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<Asset-4>
(左)インナー用テクスチャ(その2)に撮影処理を施した状態/(右)上述してきた全ての素材に、羽根の作画にブレンド処理を加えて色が濃い部分を抽出したものを加え素材を合成したもの。羽根セルを選択した上で「aep変更 」スクリプトを適用すれば瞬時に処理が完了する(トラッキングも一括で制御)


『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』撮影メイキング

『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』撮影メイキング

(上段)ツヴァイフォームの撮影処理前/(下段)処理後の比較。基本的な処理を自動化させることによって、これまで以上にリッチな表現を創り出すことに成功した

TEXT_村上 浩(夢幻PICTURES) / Hiroshi Murakami(MUGENPICTURES
EDIT_沼倉有人 / Arihito Numakura(CGWORLD)



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  • Fate/kaleid liner
    プリズマ☆イリヤ ツヴァイ ヘルツ!

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    価格:8,208円(Blu-ray)
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    発売・販売:KADOKAWA
    © 2015 ひろやまひろし・TYPE-MOON/KADOKAWA/「プリズマ☆イリヤ ツヴァイヘルツ!」製作委員会
    anime.prisma-illya.jp/2weihelz

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