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『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』シリーズが実践する、新世代のアニメ撮影ワークフロー(旭プロダクション)

『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』シリーズが実践する、新世代のアニメ撮影ワークフロー(旭プロダクション)

STEP 03:キャラクターとのインタラクション

作画と3DCGのどちらにも対応
本シリーズでプリヤ班がCGエフェクトを実践する大きなきっかけになったのが、第1期こと『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』(2013)における、セイバーがまとう黒い霧の表現であった。
作画キャラの動きに合わせる必要のある本エフェクトを、AEだけで表現するのは物理的に不可能だったため、PhoenixFDを用いて表現することにしたわけだ。作画キャラに合わせ、3ds Max上でCATを使いモーションを作成し、そのリグをシミュレーション発生元にするという手法だが、作画が上がらないと作業が進められないためスケジュール的にも苦労したという。

『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』撮影メイキング

© 2015 ひろやまひろし・TYPE-MOON/KADOKAWA/「プリズマ☆イリヤ ツヴァイヘルツ!」製作委員会

そして、3期では最大の脅威となるギルガメッシュが放つ禍々しい妖気を表現することになったが、ほぼ全編にわたり3DCGキャラクターであるギルガメッシュのシーンファイルをCG制作を担当したドメリカから提供してもらうかたちで作成された。「監督から"砂鉄のオーラ"というオーダーをいただいたので、そんなイメージでFumeFXとKrakatoaを使って表現しました。ドーム型竜巻は長尺でシミュレーションをかけ、カットに応じて使いどころを切り分けて加工しています。巻き上がる竜巻のような触手は練習も兼ねてHoudiniで作成したのですが、最終的には出力した連番素材を3ds Maxの板ポリに貼り付けて合成しています。その他にも波打ち際の水の表現にもHoudiniを使用しましたが、リアルな海を再現するというよりも、作画と馴染むようなハイライトや白波などの素材を作成し必要な一部を切り取って合成するといった感 じで使用しています」と、中西氏。

竜巻にイリヤが突進して穴を空けるシーンは、FumeFXで作成した竜巻の上に作画で描かれた穴の空く素材を合成することで見事に表現している。撮影とCGの両方のノウハウをもつからこそ可能となった表現とも言えるだろう。そのほかには、ルーン文字が空中に浮かび上がるカットのモデリングや薬莢が飛び散るカットのCGエフェクトは鯨井氏が担当。薬莢は、モデルと回転アニメーションを3DCGで作成しAEのParticularで発生させ数やタイミングの調整を行なっており、ツールを使い分けることで作業の効率化も図っている。

『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』撮影メイキング

© 2015 ひろやまひろし・TYPE-MOON/KADOKAWA/「プリズマ☆イリヤ ツヴァイヘルツ!」製作委員会

3−1.作画キャラとのインタラクション

『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』撮影メイキング

セイバーの身体から放たれる黒い霧は、1期におけるCGエフェクトの代表例だ。3ds MaxプラグインPhoenix FDで作成。バックグラウンドにアタリとなる作画を置き、その動きに合わせてCATでモーションを付け、エフェクトの発生元に仕立てている

  • 『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』撮影メイキング
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黒い霧の表現をCGエフェクトとして作成する最大の利点は、図のようにキャラクターアニメーションに合った立体的な動きが得られることにある。「1週間で約90カットをこなしました。撮影をしながらCGエフェクトを作成するわけなので、かなり無理がありましたがなんとか納品できました」(中西氏)

  • 『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』撮影メイキング
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<Process-1>
セイバーに対する撮影処理の例。 (左)セイバーのセル(撮影未処理)/(右)セル処理とライティング、パラ処理を施した状態


  • 『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』撮影メイキング
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<Process-2>
(左)Phoenix FDで生成した黒い霧のCGエフェクト素材/(右)CGエフェクト素材に撮影処理を施した状態。こちらも「aep変更 」スクリプトで一発で適用できる


『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』撮影メイキング

<Process-3>
BGを合成した後、一連のフィルタおよびライティング処理を施した完成形


3−2.CGキャラとのインタラクション

『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』撮影メイキング

3期に登場する「ギルガメッシュ」から漂う砂鉄のようなオーラは、FumeFXとKrakatoaを併用して作成している。図は、FumeFXによるCGエフェクト素材の作業UI。「ギルガメッシュほぼ全編にわたって3DCGで作られていたので、CGが上がった段階から作業に取りかかることができたのはラッキーでした。ドメリカさんの協力がなければ不可能な処理ですね」(中西氏)

  • 『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』撮影メイキング
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ギルガメッシュの宝具「ゲート・オブ・バビロン」のCGエフェクトは、Phoenix FDで作成。(左)Liquidsを使い、Dischargeにノイズのマップを適用して水の出方にムラを出している/(右)エフェクト発生元のモデル。「岩のような形状をモデリングし、ディスプレイスメントでウネウネとした動きを加えています。岩の質感はRayfire Asperityで表現しました」(中西氏)

  • 『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』撮影メイキング
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<Process-1>
ギルガメッシュに対する撮影処理の例。(左)砂鉄オーラのCGエフェクト素材(FumeFXとKrakatoaで作成)/(右)砂鉄オーラに撮影処理を加えた状態


  • 『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』撮影メイキング
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<Process-2>
(左)Phoenix FDで生成したゲート・オブ・バビロン(GOB)のCGエフェクト素材/(右)GOBに撮影処理を施した状態


『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』撮影メイキング

<Process-3>
背景など全ての素材を合成し、ライティングとフィルタ処理を施した完成形


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