>   >  エキシビジョンにVR関連出展多数! 360度カメラにVR体験ブースも〜SIGGRAPH 2016レポート<4>〜
エキシビジョンにVR関連出展多数! 360度カメラにVR体験ブースも〜SIGGRAPH 2016レポート<4>〜

エキシビジョンにVR関連出展多数! 360度カメラにVR体験ブースも〜SIGGRAPH 2016レポート<4>〜

<3>有力出展社不在で精彩を欠くゲームエンジン、ミドルウェア

APU/GPUやVR HMDなどハードウェアの積極出展に対して、ソフトウェアであるところのゲームエンジンの出展社は比較的おとなしいものだった。Unity Technologiesが出展していた他には、Amazonによる「Lumberyard」ブースの出展があったのみで、例年通りCrytekやEpic GamesのExhibition出展はなかった。ライバルの一角が不在なのだから、来場者に大いにアピールするチャンスだと思うのだが、残念ながら出展していた両社ともに覇気がない。この手のExhibitionでは、ブースの一角でスクールスタイルのセミナーをひっきりなしに行なっている光景をよく目にするが、筆者がブースを訪れた際にはUnity Technologiesは準備中だったのか、セミナーどころか通常のディスプレイ展示にさえ、何も映し出されていないものがほとんどだった。Amazon「Lumberyard」の方は、セミナーのコーナーすら設けておらず、アテンドしていたスタッフに対して、「Lumberyard」開発環境に「GDC 2016」以降で何かアップデートはあるか、と尋ねても、マイナーなアップデートはあるものの、特にメジャーなアップデートはないという回答しか得られなかった。

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ゲームエンジン「Unity」のブースとミドルウェア「Speedtree」ブースの模様。特に「Speedtree」ブースは小綺麗なものの、毎度展示内容に目立った変化がないせいか、どうにも印象が薄い

こういった寂しい傾向は、ゲームエンジンと連携して動作するミドルウェアの出展企業も同様で、ブースが比較的小さいためあまり目立ちはしないが、こちらもやはり覇気がない(もっとも、ミドルウェアは「GDC」でも覇気がない出展者が多い)。Microsoft「Hololens」で自己のソリューションを体験をさせていたリダクションの「SIMPLYGON」や、カリングの「UMBRA」の客付きは、まだマシだったように思うが、樹木生成ライブラリの「Speedtree」のブースは素通りする人が多かった。いずれもブースを外から一目見ただけで理解できる性質のプロダクトではないから、仕方のない部分はあるにはあるのだろうが、ゲームエンジン、ミドルウェアの出展者の多くが、来場者の関心が低いから客付きが悪い、客付きが悪いからブース担当者の士気が下がる、士気が下がったオーラが出てしまっているからさらに客付きが悪くなってしまう、というマイナーブースにありがちな悪循環に陥っているのは残念だった。

すでに来場者から一定の認知を得ていたり、自身やパートナー企業がスポンサーに名を連ねていたりする「GDC」とは異なり、スポンサードセッションのゲストスピーカーとして呼ばれる機会が非常に少ない「SIGGRAPH」なのだから、コストをかけて出展したExhibitionでのアピールの機会を逃してはもったいない。VRの潮流もあり、今後リアルタイムレンダリングの普及が進むであろうCG業界に対して、広く認知してもらうことを目的として出展したのだろうから、ブースの内容や来場者へのアピール方法には、もうひと工夫していただきたいものだ。

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リダクションの「SIMPLYGON」や、カリングの「UMBRA」ブースでは、Microsoft「Hololens」が目を引いていたようだ

そんななかに日本から出展していたのがLive2Dで、「SIGGRAPH」初出展であると共に、本年唯一の日本からのExhibition出展だった(リコー、キヤノンは米国現地法人が出展)。従来の2Dと3Dを融合させる同社の最新ブランチ「Live2D Euclid」ベースの技術デモ「Live2D保健室」をHTC「Vive」で体験できるようセットアップしており、日本人、日本在住経験のある外国人、日本のアニメに関心を持つ外国人に対しては、好評を博していた。

比較論でいうと、Live2Dの出展は、他の欧米発のミドルウェアより、アテンドしていたスタッフが来場者に対して熱意をもって解説していることもあり、印象が良かった。ただ、出展そのものは、他のミドルウェア同様、今一歩アピールに欠けるもので、わざわざ日本から出展費用をかけて出展したのだから、2コマかつ入口近くのカドという絶好のポジションを活かして、もう一歩踏み込んだ出展内容にしてほしかった。説明文を記したパネルとPCディスプレイ中心の展示より、アニメ調キャラクターの等身大紙POPや、縦型の大型ディスプレイにアニメ調のLive2Dモデルを表示するといった国内のイベントでよく見かける展示をやるだけでも客付きはちがったはずである。次年度以降も出展の計画があるのなら、是非今年の出展を踏まえて言語に依らないわかりやすい展示を心がけていただきたい。

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日本から唯一Exhibitionに出展していたLive2Dのブース風景

今回の「SIGGRAPH 2016」には、本当に多数のVR出展があり、それぞれに特徴や優位性を持ったプロダクトを出展しているブースが多かった。あまりの数の多さに全てを網羅して紹介することはできないため、VRに関連する展示内容のなかでも、比較的新しいものを中心にお伝えした。すでに複数の安価なVRデバイスがリリース、またはリリースを目前に控えている今、シェアを握るデバイスを予測するのは大変難しい。現世代のハードウェアに関しては、クリスマスシーズン明けには大勢が決しているだろうか。

いよいよ来年は、第2世代のAR/VR HMDのリリースや、コンテンツ製作もこなれて、ハードソフト共に拡充が進んでいくだろう。「SIGGRAPH 2017」においても、引き続きVR関連のトピックから目が離せそうにない。

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