Topic 2 3DCGによる煙や背景の街並み
花火以外の要素でもリアルさや迫力を追求
リアルな花火の表現に加え、カメラワークで奥行きを出すために3DCGによる煙も作成されている。こちらはFumeFXとマジックピクチャーズがインハウスで開発しているAquariusという流体シミュレーションソフトを用いて作成された。Aquariusはノードベースの流体シミュレータで、FumeFXとは異なる流体の計算方式を採用している。状況によって得意不得意があるため、2つのソフトを使い分けて使用したとのことだ。「インハウスツールは何か不都合が起きた場合に自分たちで改変やカスタマイズができるので、そのあたりも強みになっています」と千葉氏。8Kともなると、煙にもディテールを出すために詳細な計算が必要になり、煙のシミュレーションだけで1カットあたり2日間ほどかかったという。
一方、背景の街並みについては谷内氏のオーダーで、1枚の画像ではなく3Dのモデルとしてディテールが見えるように作成されている。地図や空撮映像をリファレンスに東京の街並みをモデリングして、一度レンダリングした画像に対してマットペインティングを施し、再度3ds Maxにてカメラマッピングを行なった。マットペイントのサイズについて、マジックピクチャーズでは通常、最終解像度の倍のサイズで描くようにしているため、今回は8Kの倍である16Kで描かれた。カメラが360度回転しているカットでは横のサイズが64Kにもなったという。街の中の光も各々ちがったタイミングで明滅し、なおかつ暗部の階調も表現できており、8Kならではの高密度な画面づくりを実現している。
煙の作成
FumeFX 作業画面
FumeFXによる煙の作成画面。8K作品のためディテールには苦労したというが、もうひとつ大変だったのが作成されているという点だ。1フレームの1エレメントごとのレンダリング時間は平均4~5時間にもなり、「8K 60fpsという点に苦労しました」と千葉氏。「マジックピクチャーズさんは同規模の他社さんに比べてもレンダ非常に多く用意されており、そのあたりも今回のプロジェクトをお願いした要因のひとつでした」(谷内氏)
3Dモデルとペイントによる背景
3Dモデル
東京の街並みのモデル。このモデルにマット画をカメラマップで貼っている。カメラマップした際に
裏側のモデルに手前のテクスチャが投影されて二重になってしまう部分も出たが、8Kの場合はHDと比
べて細かいエラーもはっきり見えてしまうため、綿密な修正が施された。※右図は、左図内の囲み部分の拡大
完成背景
完成した背景。通常どおり3Dモデルに対してテクスチャを貼って並べるだけだと、どうしてもタイリングしたパターンが見えてしまうのだが、一度マットペイントでレタッチすることにより、ランダム感が出て自然な印象になるという。※右図は、左図内の囲み部分の拡大