Topic 3 コンポジットやHLG形式の出力
HDRで上映するためHLG形式に変換して完成
コンポジットは千葉氏が普段から愛用しているBlackmagic DesignのFUSIONで行われた。3DCGによる素材は必要最低限に抑えられ、OpenEXRでビューティ、デプス、ベロシティ、マスク素材×2がレンダリングされている。初期のチェック時には花火に対してコンポジットでクロスフィルタをかけていたのだが、4KのPCモニタではキラキラして綺麗に見えていたのが、いざ8Kモニタでチェックしてみると非常にファンタジックな画になってしまい、コンセプトでもあったリアルな花火という表現から離れてしまった。結果的にコンポジット時にフィルタはほとんど使わず、カラコレ程度に抑えたという。
本作はHDRで上映するため、HLG(Hybrid Log-Gamma)というNHKとBBCが開発、推進しているHDR規格で出力する必要があった。様々なソフトウェアを調べた結果、こちらもBlackmagic DesignのDaVinci Resolveが対応していたため採用。FUSIONからリニアのOpenEXRで書き出された画像をDaVinci ResolveでHLG形式のTIFFに変換したという。なお、DaVinci Resolveでの作業では、当初はHDDから8Kシークエンスをロードしていたのだが、それだとコマ落ちのエラーが出てしまって上手くいかなかった。SSDのRAIDドライブに変更したらエラーなく使用できたという。
「8K、そしてHDRのフルCG作品というとてもカロリーの高い企画で、演出内容の決定や作業、チェックなどの様々な制作プロセスが、トライ&エラーのくり返しでした。だた、その経験がノウハウにつながり、8K、 HDRという魅力的な映像メディアの新領域を目指すことができたと思います。作品も実際の花火大会の映像と見紛うレベルになり、CGなのか実写なのかわからないクオリティに仕上げることができました。8月から8Kの試験放送も始まり、これから8KやHDR、広色域など映像メディアが劇的に進化する中、その映像表現や新しいメディア体験の可能性がとても楽しみです」と語る諸石氏。ROBOTでは8K、HDRで超高精細エンターテインメントコンテンツを新たに制作しているとのことで、同社の今後の作品も非常に楽しみだ。
FUSIONによるコンポジット
FUSION作業画面
コンポジットはFUSIONを使用し、リニアワークフローで行われた。レンダリングエレメントもごく少数に抑えられ、簡単なカラコレを行なった程度だという。もちろん、BT.2020規格でつくられている。画像はコンポジット作業の一例。「FUSIONはレンダリングが速いので普段から好んで使用しています。通常のプロジェクトであればおおよそ1フレーム数十秒でレンダリングが終わるのですが、今回は8Kということで1フレーム15分くらいかかりました」(千葉氏)
HLG形式での出力
DaVinci Resolve作業画面
本作ではHLG形式で出力するためにBlackmagic DesignのDaVinci Resolveが採用された。現状ではHLG形式で書き出すことができるアプリケーションは非常に少ないという。しかし、問題点もあってHDRデータをDaVinci Resolveでカット繋ぎなどでオーバーラップさせると、透明度を0%に設定しても完全な透明に消えなくなる現象が起きてしまった。これについては一度各カットをHLG形式で書き出した後、再度オーバーラップさせることで対応したという。なお、現在のバージョンではこの問題は解決されている。※右図は、左図内の囲み部分の拡大