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京都造形芸術大学キャラクターデザイン学科 池田ゼミ×カナバングラフィックスの「CGクリエイター塾」

京都造形芸術大学キャラクターデザイン学科 池田ゼミ×カナバングラフィックスの「CGクリエイター塾」

Topic 3
オリジナル短編プロジェクト(グループ制作)

ターゲットの明確化とブレストゴールからの逆算

翌年、2回生と3回生が各々3、4回生へと進級し、総勢14名でスタートした特別講義2年目「オリジナル短編作品プロジェクト」は、30秒から1分のショートフィルムを1年かけて企画・制作し、完成した作品はSNSやYouTubeで発表することとなった。また、Mayaはハードルが高く馴染めない生徒が多かったことから、使用ツールを馴染みのある3ds Maxに変更し気持ちも新たにプロジェクトがスタートした。

富岡氏がマネジメントを引き受けることを前提に脚本・企画は今回もブレストで進められ、提案された多くのログラインの中から『ぶたの貯金箱バートン』が選ばれた。ログラインは「ぶたの貯金箱のバートン、裏で彼は主人のお金を勝手に使っていた。しかし、徐々に主人に怪しまれバートンは逃亡を図る。主人はそれに気づき、トンカチを手にバートンを割りにいく」といった具合で、ここから全員で登場人物の設定や脚本を固めていった。また、組織的なCG制作を体験できるよう14名全員でひとつの作品を制作する方針で、4回生をディレクターに据えて各生徒にそれぞれ役職が割り振られた。さらに各自タスク管理の意識を促すため、実際の制作現場でも使用されるGoogleスプレッドシートを用いて生徒ひとりひとりの作業を工数表で割り振り、随時富岡氏がマネジメントしていく仕様になっている。実制作はモデラーとアニメーターでチーム分けされ、それぞれのタスクをこなしていく。なお、卒業制作や就職活動で多忙な4回生に配慮して作業は月1回の特別講義の時間に限られて行われたため、絵コンテを描かずにラフモデルを使ったアニマティクスで対応したり、コンポジットは一発レンダリングで対応したりと、省ける部分は極力省いて完成を目指した。このように実際の制作フローに則って制作した『ぶたの貯金箱バートン』は、荒削りながらも無事完成し、彼らの挑戦は終わりを迎えた。今回監督・編集を担当した4回生の池端翔太氏は、「観てくれる人を第一に考え、どうすればより多くの人に広げられるかをみんなで考えてターゲットを絞り企画・脚本を練りました。間口の広さやストーリーのキャッチーさを大切にしてキャラクターの魅力とアクションの面白さといった細かい演出にも気を配って制作しています」とコメント。そして富岡氏自身も多くのものを学んだと話す。「私が見ている風景と彼らが見ている風景が常にずれており、それを理解してマネジメントすることはとても良い経験となりました。私の方が学生たちと池田先生から勉強をさせてもらいました」(富岡氏)。カナバングラフィックスは「カナバンCG塾」をはじめとする教育事業をさらに本格化させていく模様で、富岡氏は「これからCGを始めたいという全ての人たちに向けて、誰もがわかるマニュアルを配布したり1日体験をしてもらったりと、専門 学校やスクールに通う以外の新たな選択肢を提供していきたい」と語り、ビジネスのできるCGクリエイターの育成と共にCG業界全体の活性化を目指していくようだ。

ブレスト

実際に学生たちが実践した、ログラインの作成を通じたターゲッティング。その後のブレインストーミングの履歴をまとめた資料より

アセット制作

学生たちが作成したキャラクターデザイン画

舞台となる部屋の美術設定とイメージボード(学生たちが作成)


富岡氏が考案した本プロジェクト用の「リファレンス(シーン参照)」構造を図示したもの

ショット制作

アニメーション作業のアドバイス

コンポジット&ルックデヴ作業のアドバイス

制作進行と担当作業を個別に管理

(左)ライティング以降の進捗をまとめたカットリスト/(右)学生たちの作業内容をまとめたリスト。毎回の講義に先立ち、必ず用意(更新)していたという。学生たちができるだけクリエイティブワークに注力できる環境を整えることにも心配りがされていたことが窺える

参加した学生たちの声

最後に、2年目の短編プロジェクトに参加した学生たちの感想をいくつか紹介しよう。

Q1. 参加した動機は?
「学生のCGアニメ―ションはその多くが自分たちのつくりたいものをつくるだけで終わってしまいます。ですが、本当は完成してからどう売っていくのか、広げていくのかが重要だと思うので、カナバングラフィックス制作手法を身をもって知りたかったからです」(池端翔太)/「4回生として参加するとなると卒制や就活と重なり、正直辛いことは目に見えていました。ですが、カナバンの富岡先生と制作できる機会をみすみす逃すのはもったいないと思い参加しました」(満山雄一)

Q2. 講義で印象的だったことは?
「ものを取るアニメーションをするときは、掴む動作をつくるのではなく、画面外から出すという技法が特に印象に残りました」(荒磯沙也加)/「『CG制作者のためのCGではなく、コンテンツとして視聴者の方々がいることを意識して』とよくおっしゃっていたことです。CG上手いねと言われることも大事ですが、それ以上に面白いねと言われたいと常々思っていたので背中を大きく押していただけました」(今木雄太)/「クリエイターが素晴らしいと思うものではなく、一般のお客さんが楽しめるものをつくるという、姿勢です」(長谷川拓海)

Q3. 今後に活かしたいことは?
「意欲を示すことは、制作をするにあたって重要なことだと思いました」(井上香奈子)/「私は『健康第一』だと学びました。後半はつくることに夢中になりすぎて、自己管理が行き届かなくなり、結果として効率が悪くなってしまいました。富岡先生からいただいたアドバイスを胸に、あせらず匍匐前進するように作品づくりに挑みます」(酒井万梨子)


制作終盤の記念写真と授業の様子



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