>   >  京都造形芸術大学キャラクターデザイン学科 池田ゼミ×カナバングラフィックスの「CGクリエイター塾」
京都造形芸術大学キャラクターデザイン学科 池田ゼミ×カナバングラフィックスの「CGクリエイター塾」

京都造形芸術大学キャラクターデザイン学科 池田ゼミ×カナバングラフィックスの「CGクリエイター塾」

個性豊かなキャラクター表現に定評あるカナバングラフィックス。同社代表を務める富岡 聡氏は近年、CG制作やコンテンツビジネスに関する講演にも精力的だ。富岡氏にとって、初めての美術大学における講義となった本プロジェクトを追った。

※本記事は月刊「CGWORLD + digital video」vol. 236(2018年4月号)からの転載となります

TEXT_UNIKO
EDIT_沼倉有人/ Arihito Numakura、山田桃子 / Momoko Yamada

information
オリジナル短編アニメーション『ぶたの貯金箱バートン』
制作:京都造形芸術大学キャラクターデザイン学科/参加学生:池端翔太、中野真佑、満山雄一、荒磯沙也加、井上香奈子、今木雄太、黒木 茜、酒井万梨子、長谷川拓海、林 純菜、日髙 渚、山﨑 彰、山吉 翔/プロダクションマネージャー:池田篤史、富岡 聡/音響:田口雅敏/音楽:DOVA-SYNDROME/協力:カナバングラフィックス

京都造形芸術大学キャラクターデザイン学科
www.kyoto-art.ac.jp/art/department/character
京都造形芸術大学公式ブログ
www.kyoto-art.ac.jp/production
カナバンCG塾
www.kanaban.com/cgschool

確かなビジネスマインドをもったアーティストを育成するために

2016年度より京都造形芸術大学・キャラクターデザイン学科キャラクターデザインコースで開催された特別授業『京都造形芸術大学キャラクターデザイン学科 池田ゼミ×カナバングラフィックスのCGクリエイター塾』(以下、CGクリエイター塾)。教壇に立ったのは『ウサビッチ』、『やんやんマチコ』、『イナズマデリバリー』でおなじみのカナバングラフィックス・富岡 聡氏だ。ことの始まりは、キャラクターデザイン学科長の丹羽貴大氏から「ただのクリエイターではなく、ビジネスに向けてクリエイターを育ててほしい」との依頼に非常に感銘を受けたことにさかのぼる。かねてより、ビジネスマインドをもったCGクリエイターを育ててCG業界全体の活性化を目指してきた富岡氏にとって、「ビジネスとクリエイター」を紐付けた同学科の教育方針は非常に感銘を受ける提案だったという。富岡氏は日頃より「"CGデザイナーにとって素晴らしいCGしか考えないCGデザイナー"を育てるのではなく、"社会性をもったCG"を考えられる人材を育て、CG業界全体を活性化させていきたい」と語っている。その背景には、専門学校で確実な基礎を身につけるに至らないまま就職し、就職先で基礎的なテクニックを教わりながら日々の作業に追われ、マネジメントや組織、クライアントとの関係性を意識できないまま年月が経ってしまうという事実がある。これは雇用側にとっても大きな痛手となっており、CG業界全体の血流を滞らせている要因のひとつであり、また、おおいに改善可能な部分ではないだろうか。このことに先駆けて富岡氏は、基礎的なテクニックを身につけつつ、マネージングを意識した組織的なCG制作を体系的に体験できる授業を目指してそれを実践した。今年3月をもって同特別講義が終了となるにあたり、京都造形芸術大学キャラクターコースの生徒たちと富岡氏の2年間にわたる挑戦をここで紹介していこう。

Topic 1
プリプロダクションについての講義

実際の企画資料を交えてわかりやすく、キャッチーに

1年目(2016年度)の取り組みを具体的に紹介していきたい。キャラクターデザインコース・池田篤史ゼミから特別講義に参加した生徒は、2回生、3回生、そして4回生を合わせて20数名。月に1回しか開かれない特別講義の限られた時間の中で、「ひとつひとつの作業を丁寧に積み重ねて楽しくCGをつくる」ことを目標に、1年かけてCGツールの基礎から制作フロー全体のながれを身につける「基礎編」となる。

まず、CG制作の大元となるプリプロダクションからしっかりと体験できるよう、企画書の作り方からコンテンツ制作の過程を学んでいく。クライアントに可能性を感じてもらえるわかりやすい企画書とはどのようなものか? カナバングラフィックスで実際に使用された企画書をサンプルに、学生にとって初めての企画書制作が始まった。

プリプロの授業では、(1)原案制作、(2)キャラクターデザイン・コンセプトアート制作、(3)脚本作業・絵コンテ制作の大きく分けて3つのステップを経験する。1年目の授業では、企画書制作のながれを経験してもらえるよう「ハロウィン」をテーマにしたダミー企画を用意し、授業内でログライン(3行ストーリー)の説明を行い、各学生は課題でログラインを作成。順次、発表していった。「3行という短い文章で確実に面白ければ、映画になっても面白い作品になる」と富岡氏。ストーリーをたくさん考えてアイデアの選択肢を増やすことができる上、読み手の意見がもらいやすく議論もしやすくなるため、挫折しにくく効率的なのだ。実際、2年目の短編制作では学生たちはブレストを通して多くのログラインを作成したが、1年目の授業や課題の経験があったのでスムーズに取り組んでいたという。

原案が決まると次はキャラクターデザインだ。「個人の育ってきた環境に大きく依存するので、作家性のあるキャラクターの描き方については教えることはできません。しかし、物語を魅力的に演出するためのキャラクター設計の手法は押さえておくと良いだろうと考えました。作家性はその上に乗せていけば良いのです」と富岡氏は語り、観客がひと目でキャラクターの状況や背景、性格や職業までわかるよう設計する方法を伝授。個性的でアーティスティックなものではなく、観る人に伝わるキャラクターをいかに「設計」していくか。つくりたいものをつくるだけでは成り立たない「ビジネスとしてのCG制作」を意識しつつ、キャラクターデザインは行われた。脚本作業・絵コンテの描き方では、演出において"状況をいかに説明するか"を学んでもらうため、絵や時間がジャンプすることなくシームレスに繋いでいく手法を『ウサビッチ』制作当時に使用された絵コンテを用いて説明。こういった実際に制作現場で行われている制作フローを現実的なものとして理解した上で、ダミーの企画書制作に取りかかった。

ストーリー構成の考え方

脚本執筆のコツを解説した資料より。ハリウッドで主流の三幕構成とは、どのようなストーリー構造のものなのか。視覚的にもわかりやすくまとめられている

キャラクターデザイン

キャラクターならびに背景(美術)のデザイン要領を解説した資料より。『ウサビッチ』をはじめとするカナバンの代表的な作品の設定画を交えつつ、キャラクターデザインの原点と言える人体三面図の描き方についてもしっかりと解説

デモンストレーション


今回の講義用に富岡氏が作成したダミー企画の企画書と演出コンテより。カナバングラフィックスのアートディレクターたちの協力を得ており、まさにプロのクオリティが「百聞は一見にしかず」で図解されている

次ページ:
Topic 2 CG実技~モデリング、リギング、アニメーション、ライティング~

特集