<2>「絵を描くような」髪モデリングとボーン入れ
「小峠モード」「バトルモード」を生んだ髪型編集機能
数あるブイ子のモードの中でも注目を集めているのが、小峠教官がブイ子に「サンダーボルト・イン」してVTuberになった姿の「小峠モード」と、激しいバトルアクションをくり広げる「バトルモード」だ。この2つのモードでは、ブイ子のシルバーヘアや頭上のアンテナ、宙に浮かぶ雷、髪のボーンなどが大きくアレンジされている。これらの作業を3Dモデリングの専門的な知識なくスピーディに実現できたのは、ひとえにVRoid Studioの髪型編集機能があったからである。
「小峠モード」のキャラクターデザインには小峠教官の趣味のパンクス要素が詰め込まれており、その出来映えは本人をして「理想の女の子ですね」と言わしめたほど。VRoid Studioでの髪型モデリングは、①ガイドの上で「絵を描くように」髪の房をモデリングし、②パラメータで形状や配置を調整、③そこにテクスチャ画像を重ねていくというながれだ。この機能でモデリングできる「髪」は、端的に言えば「頭周辺にくっついたオブジェクト」であるため、頭周辺にあるリボン、帽子、カチューシャ、アクセサリー、アイウェアなども制作できる。小峠モードではこの機能を活用し、髪色を黒に変更、耳にパンクな雰囲気を演出するピアスを追加、頭上に浮かぶ雷マークを小峠印の卵マークに変更している。またキービジュアルとなるツーショット写真の制作時には、ポージング後に前述のパラメータを使って髪の位置を微調整した上で撮影している。
「バトルモード」は、ガリベンガーVの敵「デビルブレイン」の操る落雷がブイ子に直撃し発動した、敵対勢力をなぎ倒す兵器としての真の姿だ。戦隊シリーズを数多く手がけるアクションチームの全面協力の下、モーションキャプチャによって激しくアクションするキャラクターと、現実のステージセットの上のリアルなスタントマンたちが拳を交差する、リアルとバーチャルをMIXした新しい殺陣シーンを実現した。このモデル制作の鍵を握るのがVRoid Studioの「ボーン入れ」機能である。髪の房を選択し、「ボーン数」「固定点」「かたさ」「重力」「衝突半径」をパラメータ入力で調整できるこの機能を活用し、バク転、飛び蹴りなどのアクションに映える揺れ具合にボーンを調整している。こういった作業をVRoid Studioのみで完結させられるからこそ、ボーンの揺れの確認とデザインの調整を直感的に行うことができ、超合金テクスチャの「重さ」と、アクション映えする揺れの「軽さ」を成立させることができたのだ。VRoid Studioがキャラクターメイカーであることを改めて実感するエピソードである。
髪モデリング機能の応用力から生まれた「小峠モード」デザイン制作
ブイ子・小峠モード。髪を中心に衣装等全てアレンジ
モーションスーツで小峠教官本人がVTuberに
テクスチャ&位置調整により本人と並べて馴染むデザインに。小峠モードは、「私服の小峠教官本人とモデルを並べたツーショット写真」を最終的なアウトプットのゴールに設定した上で、VRoid Studio上でヘアカラーテクスチャ、細部の髪の束の位置などを微調整して仕上げられた
髪揺れボーン機能の手軽さから実現した「バトルモード」殺陣演出
ブイ子・バトルモード。全身アレンジに加え髪揺れを調整