犬や鳥を出すことで作品の世界観を補強
バセット・ハウンドの登場カットは、前述のモデリングと同様、アニメーションに対しても押井監督に最優先でチェックを依頼した。「ウォークサイクルとランサイクルを作成し、ランダムに組み合わせることで、リアリティのある犬の動きを効率的に表現しています。バセット・ハウンドではないですが、私も犬を飼っているので、その経験が役に立ちました」(畠中氏)。同氏のアニメーションは押井監督に高く評価され、「今後の引きのカットは、CGの犬でやっていけるね」という最上の賛辞を受けたという。
ちなみに、寄りのカットを担当した作画のアニメーターは押井監督の大ファンで、バセット・ハウンドの描写を『イノセンス』(2004)風のリアルなものにするか、『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』(2008)風のややデフォルメしたものにするかまで確認したという。検討の結果、本作ではその中間の描写が選択されたとのことだ。「本作はシンプルなストーリーなので、その世界観を補強する上で、犬や鳥を出すことはとても効果があると押井監督は語っており、実際その通りだなと感じました」(竹内氏)。
少女の心象風景と、CGによるバセット・ハウンドのカット
▲イメージボード(静止画)に、蝶を追うバセット・ハウンドのCGアニメーションを重ねたもの
▲先の背景を、制作途中の美術に差し替えたもの
▲完成画像。少女の原画は森本監督が手がけており、制作終盤までねばった入魂の作画となっている。少女の重心移動が非常にリアルだ
去っていくアダムスキー型UFOを、キャラクターとCGによるバセット・ハウンドが見送るカット
▲Vコンテに、去っていくUFOと駆け回るバセット・ハウンドのCGアニメーションを重ねたもの
▲先の背景を美術に差し替え、エフェクトを追加したもの。海の波は背景動画で表現されており、森本監督が描いた。少ない枚数のループアニメーションにも関わらず、リアリティを感じさせる動きになっている
▲完成画像。試行錯誤の結果、バセット・ハウンドの動きが抑えられ、UFOの動きもシンプルなものに変更された
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