>   >  さらに深みが増したゾンビアイドルたちの歌唱表現!『ゾンビランドサガ リベンジ』
さらに深みが増したゾンビアイドルたちの歌唱表現!『ゾンビランドサガ リベンジ』

さらに深みが増したゾンビアイドルたちの歌唱表現!『ゾンビランドサガ リベンジ』

<4>ビジュアルによって世界観を高める~撮影&2Dワークス~

ストーリーテリングに基づく画づくりを実践

2期の撮影では、よりシネマルックにこだわった画づくりが実践されている。制作に先立ち、キャラクターデザインの深川氏から2期の画面設計についての提案を図示した資料が提示された。具体的には、各シーンやカットごとに空気感(明暗やキーカラーなど)を強調したり、映画的な情感を高めた画づくりをしてほしいというものであった。例えば、雨のシーンでは雨もやを出すことで不気味な感じを、陽が差し込むシーンでは光の感じを強くしてドラマチックな演出を強めたりといった具合だ。求められるイメージをすり合わせるため、2期では各話数のシーンにおいて撮影処理を施した「撮影ボード」を作成し、撮影チーム内で適確にイメージを共有することが実践されている。

「新しく出てきたシーンでは、あらかじめ撮影処理の方針を決めておくようにしました。1期を観て、自分ならこうしたいというものもあり、撮影ボードを用いたすり合わせが効果的でした」と、プリプロから4話までの撮影監督を務めた三舟桃子氏はふり返る。三舟氏からバトンを受け継ぎ、5話以降の撮影監督を務める八木まどか氏も「1期よりもクオリティを上げた画づくりをしているので、それが良い結果として出るようにがんばっています」と語る。撮影工程では、作業担当者による撮影フィルタ適用ミスを防ぐため、スクリプトによってシーンに決められた撮影フィルタが自動で適用されるしくみも構築された。これにより、全体のルックを揃えることができているとのこと。

最後に、2Dワークスを紹介したい。2Dワークスは、衣装の柄や小物のパッケージ、作中内の画面デザインなど多種多様なデザインが求められ、一見地味だが、作品の世界観を高める上では欠かせない要職である。内容によっては、デザインをイチから手がけることもある。例えば2期のTV番組用テロップでは、佐賀ローカル局向けテロップは質素なデザインにまとめる一方、全国ネットの番組用テロップでは情報量を増やし、デザインとしても凝ったものに仕上げられた。ほかにも『ゾンビランドサガ』シリーズならではの2Dワークスとして、手書き文字が挙げられる。筆跡は各キャラの個性が具体化されたものと言えるため、1期制作時にMAPPA内でキャラ筆跡担当オーディションが開催され、スタッフの中からそのキャラのイメージに合う筆跡担当が選出された。「手書き文字については、その話数でしか使われないものでも必ず担当の方に書いていただいています」と、2Dワークスを務める小出 南氏。取材を通じて、各セクションで実践されている数多くのチャレンジの根底には、作品への愛情が込められていることをおおいに実感できた。

深川可純氏によるルックの改良案

▲深川氏からルックの改良案例。これらを指針として、よりドラマチックな画づくりが2期では実践されている

撮影ボードの作成

▲2期から「撮影ボード」が作成されている。これは美術ボードにシーンカラーのキャラを合成しフィルタ調整を施したものであり、これを参考に撮影が行われる

▲撮影ボードを参考に撮影された完成カット(8話より)

撮影によるエフェクト表現

▲4話の『目覚めRETURNER(Electric Returner Type "R")』歌唱シーンのフランシュシュメンバーたちの動きに合わせた発光エフェクトは撮影で処理が加えられた

▲FXmasterというテンプレート素材を使用

▲エフェクトとCGキャラを合成した状態。スクリプトAfter3dsmax(after3dsmax.artandgj.com)を使い、腰の位置情報を出力し、エフェクト素材を追従させている

▲発光処理を加えた状態。このシーンはステージが消灯している設定のため、撮影時に暗く落としている

▲発光処理、ライブシーン専用の処理とフィルタを加えた完成形

世界観を高める~2Dワークス~

▲衣装向け2Dワークスの例。2話『ぶっ壊れかけのレディオ SAGA』で描かれる『風の強い日は嫌いか? FranChouChou cover』歌唱シーンの衣装のヒョウ柄は、小出氏が衣装デザインを基に貼り込み素材を作成した


TV番組のテロップは、本作特有の2Dワークスと言える。テロップのデザインでは、ローカルと全国ネットのちがいを意識しているという

3話『愛と青春のアコースティックSAGA』に登場するローカルTV局のテロップ。番組ロゴは実際のものを提供してもらい、作成された

4話に登場する全国ネットのテロップ。某朝のワイドショー・情報番組にインスピレーションを得ている


手書き文字も2Dワークスによるもの。キャラクターごとに手書き文字の担当者をスタッフの中から決めている

カレンダーに書き込まれた、たえを除くフランシュシュメンバー6人の手書き文字。各キャラごとに書き手が定められている(制作スタッフから選抜)

アイアンフリルのパフォーマンスを研究分析する水野 愛(CV:種田梨沙)の手書きメモ



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