アーティストが画づくりに
専念できるワークフロー
ガンアクションの多い本作では血飛沫や着弾、マズルフラッシュなど膨大な数のエフェクトが必要となる。これらの作成と管理を担当したのは岡崎頌平EffectsSV(現Megalis取締役)。内部でエフェクトを作成するのは、大半の期間は岡崎氏ひとりだったため外部パートナーとの協業が大前提となった。DCCツールはHoudini、レンダラにはArnoldで99.9%完結させたという(ごく一部でMayaを併用)。汎用性の高いエフェクトは岡崎氏が自身で作成したものをアセット化したものを外部パートナーへ提供するながれが組まれ、さらにAlembicデータの受け渡しの効率化とヒューマンエラーを軽減させるために新たなツールも開発された。「辻本監督にはリテイクの回数も3回までとさせていただき、無理なことはハッキリと伝え代替案を提示し信頼を得られるよう作業を進めました。限られた期間や予算の中でベストを発揮するにはSVの的確なディレクションが必須だと思っています」と語る岡崎氏は外注への修正指示も曖昧な言葉ではなく具体的な数字やイメージを伝えることでスタッフの迷いを徹底的に排除した効率良く作業が行える環境づくりも心がけたという。
- 岡崎頌平Effects SV(Megalis)
本作では前半のドラマシーンでコントラストも高く青や緑で恐怖心を煽り、アクションシーンでは赤をベースに高揚感を高めるような画づくりが設計され、コンポジットについても担当者による仕上がりのバラつきを抑えるためベースとなるNUKEファイルが作成されたのだが、全てのシークエンスに対応可能なプリセットを作成するには想像以上に苦労したという。また本作ではコンポジットでは必要以上に画づくりを行わず最終的なグレーディングで追い込む手法が模索された。「ビジュアルでストーリーを伝えるためにはいかに視線誘導を行うかが重要で、これらの作業はシークエンス全体で調整しなければならないのでショット単位で担当するコンポジターには難しいんです。東映デジタルセンターのカラリストの相馬さんが画づくりを含めたグレーディングをしてくださったのでクオリティが格段に向上しました」と語る吉沢康晴Lighting / CompositeArtist。DIはOpenEXRフォーマットによるリニアカラースペースで作業が行われた。もちろん、DI作業には時間的制限があるため、吉沢氏によるDaVinciを用いたプリグレーディングも行われている。さらに本作のトーンマッピングはホラー映画のルックに最適化されておりで暗いシーンでも暗部の階調が潰れず血飛沫については派手にみえるように設計されている。
エフェクトワークをHoudiniに集約
後半に登場するクリスとレオンが大量のゾンビをガンアクションで倒すCQCシーンより。「Houdiniに銃のモデルとアニメーションを読み込み、事前に用意したスクリプトをShelfから走らせることによって、アニメーターが付けた発砲のタイミングで薬莢、硝煙、マズルフラッシュが一度にセットアップすることができました。硝煙の方向、薬莢の飛び方なども調整可能です」(岡崎氏)
Houdiniで作成した血飛沫のアセットをMayaにAlembic形式で読み込みレイアウト
アリアスの結婚式会場が爆撃され焼け野原になるという回想シーンより。「Houdiniで煙と炎のVDBキャッシュを様々なバリエーションで用意したものをMayaに読み込みレイアウトしています」(岡崎氏)。Mayaでは、VDBキャッシュはBoudingBoxの状態で表示される
NUKEによるコンポジットワーク
本プロジェクトのコンポジット作業におけるルールをまとめたもの
グレーディング
吉沢氏が設計した本作のカラーグレーディング概念図。最終的にルックを決定するDIで最大限の調整を可能とするため、データの損失が生じないようにシーンリファードであるOpenEXRを用いることを主眼としたワークフローが策定された。また、異なるDCCツール上でトーンマッピングによるルックを統一するためにOCIOを用いている
観客に見せたいものを、より効果的に見せる
左列から順に、元素材(コンポジットから出荷した状態)、DaVinciによるプリグレーディング、最終イメージの比較図。ショットごとの色味のバラツキを解消させつつ、"ビジュアルによるストーリーテリング"がさらに高められた
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映画『バイオハザード:ヴェンデッタ』
大ヒット上映中!
エグゼクティブ・プロデューサー:清水 崇
監督:辻本貴則
脚本:深見 真
音楽:川井憲次
原作監修:小林裕幸(カプコン)
プロデューサー:篠原宏康
CGプロデューサー:宮本 佳
CGディレクター:中井 翼
製作:マーザ・アニメーションプラネット
配給:KADOKAWA
biohazard-vendetta.com
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