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2021年11月に発売されたインテルのデスクトップPC向けCPU「第12世代インテル® Core™ プロセッサー」。新たなプロセスルールを採用するとともに、性能の異なる2種類のコアで構成されたハイブリッドCPUとなっており、「CG制作にどのような違いが生まれるのか」も気になるところだ。
そこで今回は、第12世代インテル Core プロセッサーのハイエンドモデル「Core i9-12900KF」や高性能GPU「GeForce RTX 3090」などを採用したFRONTIERのデスクトップPC「FRGHZ690/CG」を、デジタルアーティストの中井 翼氏がチェック。実際のCG制作で利用するツールや素材を使って、その圧倒的なパフォーマンスを検証してもらった。
TEXT_近藤寿成(スプール)
PHOTO_弘田 充
海外「3D WORLD」誌の表紙を飾った自主制作の鬼が選ぶワークフローとPC選び
現在はフリーのデジタルアーティストととして活躍する中井翼氏。2021年11月まで在籍していたマーザ・アニメーションプラネット時代はライティングやレンダリングなどを長く手掛けたほか、後半ではディレクターやスーパーバイザーの役割も担うなど、ゼネラリストとして幅広い作業に携わってきた。今回はその中井氏に、さまざまなツールの利用を想定した検証をお願いした。
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中井 翼 氏
デジタルアーティスト
https://www.artstation.com/tsubasan https://3dtotal.jp/jartists/14871/
2018年ごろからArtStationに作品を投稿するなど、自主制作にも力を入れる中井氏。自主制作は「自分の表現の幅を広げるため」に取り組んでいるそうだが、技術の進化なども大きなポイントと語る。例えば、最近ではツールのさまざまなノウハウをYouTubeなどで簡単に得られるようになったほか、昔は高額だった利便性の高いツールを個人で利用できるようになった。そもそも、以前であれはCG制作にはかなり時間がかかったが、中井氏は「ZBrushやSubstance Painterの登場によってワークフローが革命的に一新され、個人でも質の高いCGを作れる時代になった」と指摘し、その点が「自主制作を後押ししている」と付け加える。
▲中井氏のArtStation。フォトリアル、トゥーンスタイル、セミフォトリアルまで、幅広いスタイルで作品を制作しており、国内だけでなく海外からも注目されている
▲中井氏のお気に入りである「電子」。ジャパニーズポップな作品で、「普通の萌えキャラにならないように、海外POPアートの文脈を意識した色遣いにこだわった」(中井氏)そうだ。自主制作でアップした作品だったが、イギリスの雑誌「3D WORLD」の目に留まり、表紙を飾ることとなった(右)
ArtStationではさまざまな作風の作品を投稿している中井氏は、利用するツールも多岐にわたる。リグとアニメーションに強く様々なワークフローにハマりやすいMayaをメインに据えながらも、「最終のアウトプットをいかにして早く出すか」を念頭に目的に応じて様々なツールをワークフローに取り入れている。
例えば、キャラクターを作る場合にはまずMayaで大まかなスタイルや等身をプリミティブでモデリングし、そこからディテールの造形をZBrushで作り、リトポロジーののち、Substance Painterでテクスチャを詰める、用途によってはBlenderのアドオンを使って小物や衣服などを作る場合もあるとのこと。
レンダラーについては、ArnordやRedshift、BlenderのCycles、EeveeあるいはUnreal Engineを目的に応じて選択。中井氏はそれぞれを「Arnordは髪の毛などに強く、シャープな画作りで右に出る者はいない」「Redshift,Eevee,Cyclesは単純にレンダリングスピードが速いので、シェープさを必要としないムード重視の絵作りの際によく使う」「Unreal Engineは、豊富なコンテンツを持ちそのインタラクティブ性が魅力。」と評価する。
モデリングやリギングからレンダリングまで「各工程でもっとも最適なツールを使う」ことで、作業をより効率化して無駄な時間をなくすように心がけているそうだ。
▲中世風の海上都市を思わせる「Water City」。非常に多くのアセットを使っているが「自分で作ったものはほとんどなく、基本的には売っているアセットを使って作られている」(中井氏)。また、Megascansのシェーダーを活用し、Substance Painterを使うことなくUnreal Engine上でシェーディングを行ったそうだ。そういったやり方でも、作品作りの効率化をはかっている
さらに、このような効率重視の考え方は、使用するPC選びにも影響を与えている。例えば、中井氏は基本的に「データのオプティマイズ(最適化)のための時間を極力なくしたい」と思っている。「チーム作業ではもちろん最適化しますが、個人制作においては最適化に時間をかけるよりも『作りたいものをすぐに作ること』を重視しているため、オプティマイズしないままで「ある程度の無理がきくようなハイスペックをPCに求める」とのこと。そのため、現在使っているPCでは「とくにGPUとメモリは(購入当時の)最上位を選んだ」そうだ。これにより、レンダリングスピードなどは非常に速くなり、作品作りにより多くの時間をかけられるようになったとともに、アウトプットまでの時間も短縮することが可能になったわけだ。
このように、効率の観点からハイスペックPCを必要としている中井氏。今回は、自分のPCと比較しながら各ツールでの使い勝手など検証してもらい、FRGHZ690/CGの性能をしっかりとチェックしてもらった。
検証ハードウェアについて
今回はFRONTIERの「FRGHZ690/CG」を使用し、中井氏のPCと比較しながら、各ツールでの検証を行ってもらった。
FRGHZ690/CGは、第12世代インテル® Core™ プロセッサーの最上位クラスとなる「Core i9-12900KF」を採用する。第12世代インテル® Core™ プロセッサーはプロセスルール「intel 7」で製造された最新プロセッサーであるとともに、パフォーマンス重視の「Pコア」と効率や低消費電力を重視した「Eコア」という、2種類のCPUコアで構成されている点が大きな特徴。これにより、総合的なパフォーマンスと電力効率の向上をはかっている。なお、PコアとEコアではクロック数などのスペックが異なるほか、ハイパースレッディングに対応するのがPコアのみとなるため、合計16コアだがスレッド数は24スレッドとなる。
また、GPUには最上位の「GeForce RTX 3090」が搭載し、メモリも第12世代インテル® Core™ プロセッサーで初めてサポートされたDDR5メモリに対応。ストレージも高速なNVMe接続の1TB SSDを搭載するなど、隙のないハイスペック構成となる。
一方で中井氏の現行機は、2年ほど前に購入したデスクトップPC。こちらも、インテル® Core™ i9-9900 プロセッサーやGeForce RTX 2080 Ti、64GBメモリなどを搭載し、当時としてはほぼハイエンドといえる高性能な構成に仕上がっている。
FRGHZ690/CG
- CPU
- インテル Core i9-12900KF プロセッサー(16コア / 24スレッド / Pコアベースクロック3.20GHz / Pコアブースト最大5.10GHz / Eコアベースクロック2.40GHz / Eコアブースト最大3.90GHz / TB時最大5.20GHz / 30MBキャッシュ)
- GPU
- GeForce RTX 3090 24GB
- メモリ
- 64GB(DDR5-4800)
- ストレージ
- NVMe接続1TB SSD
- OS
- Windows 11 Home 64bit
- 電源
- 1200W
- 価格
- 542,800円(税込)
https://www.frontier-direct.jp/contents/fair/creator/
中井翼氏の現行機
- CPU
- インテル Core i9-9900 プロセッサー(8コア / 16スレッド / 3.10GHz / TB時最大5.00GHz / 16MBキャッシュ)
- GPU
- GeForce RTX 2080 Ti 11GB
- メモリ
- 64GB
- ストレージ
- 200GB SSD+10TB HDD
検証1:超ハイディテールなデジタルヒューマンのレンダリング時間計測(Arnold CPU/GPU)
フォトリアルなキャラクターの頭部モデルを使用し、寄りのカメラワークでレンダリング時間を計測した。中井氏によれば、寄りのカットの場合はSSS(Subsurface Scattering)やディスプレイスメントマップの計算で高い負荷がかかるため、「かなりのレンダリング時間を要することになる」とのこと。出力解像度は2K、顔のテクスチャ解像度は8Kとなる。
CPUレンダリング(設定:AA3, Adaptive Sampling 10)では、中井氏の現行機で「14時間20分」だったのに対して、FRGHZ690/CGでは「8時間40分」と、約1.7倍の性能差を見せた。一方GPUレンダリング(設定:AA6, Adaptive Sampling 16)では、中井氏の現行機だとそもそも処理が回らなかったのに対して、FRGHZ690/CGは「2時間30分」で完了した。
中井氏はCPUレンダリングの性能を高く評価する一方で、GPUレンダリングも「CPUレンダリングに比べれば多少のノイズ感が残る」ものの、「オプティマイズを調整すれば質は上げられるし、ここまでの速さが出るのであれば十分選択肢になる」と評価。また、中井氏の現行機ではGPUレンダリングの処理ができなかったことについて、「GPUメモリの不足が原因ではないか」と考察した。
中井氏によれば「髪の毛に透明度を与えている」ことも負荷が上げている要因とのこと。そのため、処理が重かった場合、従来であればテクスチャの解像度を落としたり、髪の毛の透明度を切ったりして処理を軽くしていたそうだ。しかし、今回のFRGHZ690/CGであれば、そういった調整の手間をかけることなくそのまま処理できる点が「とても嬉しい」と語った。
検証2: 巨大な都市のシーンデータ(UE4)のリアルタイムビュー検証
非常に重いモデル素材である「Water City」を利用し、ビューポートでの使い勝手(=GPUのパフォーマンス)を検証した。その結果、GeForce RTX 2080 Ti(11GB)搭載の中井氏の現行機ではビューポートのカメラワークを変えるとカク付いてしまっていたが、GeForce RTX 3090搭載のFRGHZ690/CGではカク付くことなく滑らかに動かすことができた。
現行機であれば「カク付きを抑えるために、レイヤーで不必要なアセットを消すことで負荷を減らしていた」(中井氏)そうだが、FRGHZ690/CGではすべてのレイヤーを表示したままでも滑らかに動いていたことに中井氏は強く感心。完成形を確認しながら作業できる点に大きなメリットを感じ、「これができるとなると、もう戻れないかも」とその魅力に取り憑かれている様子だった。
▲「Water City」は非常の多くのアセットで構成されている。そのため、それぞれのアセットが多くのレイヤーに分かれており、表示をOFFにすることで例えば不必要な建物を消すことができるようになっている
検証3:ポリゴン数約2,000万、UDIM 62枚を使用したモデルを対象にSubstance Painterのベイク検証
▲Substance Painterの検証で使用した「Bounty Hunter」の画像素材。中井氏はここでIrayレンダラーの検証(=CPUパフォーマンス)も行っており、「とても速くてとても快適だった。意外にいいかも」と好感触だった
検証素材には、人気ゲーム『メトロイド』のファンアートとして作成した『Bounty Hunter』を使用。約2,000万ポリゴンでUDIM 62枚を使用したモデルのベイク処理時間を計測するとともに、4K設定でのビューポートの使い勝手を検証した。どちらも、GPUのパフォーマンスが大きく影響する。
ベイク処理では、中井氏の現行機で「約10分」かかったのに対して、FRGHZ690/CGでは「約7分30秒」と約1.25倍の性能差となった。またビューポートについては、現行機だと4K設定では「処理が遅くて仕事にならなかった」(中井氏)ことから、従来であれば解像度を256や512などに落としたり、オブジェクトを分けて対処していたそうだ。一方FRGHZ690/CGでは、初動こそやや重たく感じたそうだが、その後は「とくに問題もないレベルで作業できた」とのこと。ベイクとビューポート、どちらの検証にも中井氏は高い満足感を感じていた。
総評:モチベーションを維持できる「滅茶苦茶欲しいマシン」
今回の検証で中井氏は、FRGHZ690/CGを「どんな作業でもオールインワンでこなせる素晴らしいマシン」と総括。CPUの進化やコア数の増加、GPUのパワーアップによる高いパフォーマンスを体感したことで、「本当に欲しいと思わせてくれる」と語った。
ハイエンド構成とあって価格は決して安くないが、アウトプットまでの時間を短縮できるメリットを高く評価する中井氏。CG制作は時間がかかり過ぎてしまうとモチベーションが低下し、途中でやめてしまう人も少なくないだけに、「気持ちが乗っているときに、作品を世に出すというのはとても大事なこと」と指摘し、CG制作を「楽しく続けていくためには、求められるマシンなのかもしれない」と考える。
少なくとも、FRGHZ690/CGは「かなり無理がきくマシンであることに間違いない」(中井氏)。価格はそれなりかかるものの、それに見合うだけの時間短縮にもなりえることから、「いろいろな状況で四苦八苦して無駄な時間を費やすくらいなら、お金で解決するというのも1つの方法ではないか」と中井氏は提案した。