<2>初めて3DCGに触れる人に読んでほしい1冊
――またウチヤマさんはオリジナルのガレージキット「Daitai Robot」シリーズの「41式試作型-シア- Ver.As」が、第34期ワンダーショウケースに選ばれました。
元々新しいものをつくっていくのが好きなんです。勤めていた会社もひとりの社員が企画をプレゼンして面白かったらそれを開発させてくれるようなフットワークの軽いところだったので、自分もこういうゲームをつくりたいという企画を考えるクセはついていました。通勤時間や休みの日に少しづつ構想を練っていって、あるタイミングで個人作品として「立体物」というかたちで実現したというわけです。
第34期ワンダーショウケースに選出された「41式試作型-シア- Ver.As」
――それにキャラクターや世界観を乗せていった。
そうですね。これも会社で教わったようなかたちでゲームの企画のように考えていきました。最初にどうやって遊ばせるかを考えその次に世界観がある。まず全体的な世界観を考えてそこからキャラクターをつくっていきました。自分が伝えたいものがあって、それを伝えるために世界観があり、その設定からキャラクターをデザインしていったという感じですね。
――ご自身のクリエイティブに影響を与えた作品や人物としてはどんな人が思い浮かびますか?
基本的に好きなのはメッセージ性がある作品ですね。ゲームですと小島秀夫監督作品とか、映画ですと最近はドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作品とか、世界観がしっかりしていて伝えたいものが根底に感じられるような作品が好きです。マンガですと弐瓶 勉さんの作品が思い浮かびます。イラストレーターですと吉田明彦さんのデフォルメ感が好きで、影響を受けているかもしれません。これは本にも書いたのですが、いかにシルエットを格好良く見せるかに全てを注いでいます。フィギュアはシルエットが命だと思っています。
――「Daitai Robot」の今後の展開はどのように考えていますか?
ひとりでやっているので、今のところはフィギュアという表現がひとつの着地点ですが、自分はフィギュアをつくることがゴールではなく、伝えたいメッセージがあってその手法としてフィギュアをつくっているので、今後、様々な展開ができたらいいなと思います。将来的にはこれを基にしたゲームをつくりたいとは思っていて、彼女たちには各種武器設定などをふんだんに盛り込んでいて自分の頭の中ではアクションしています(笑)。
――立体物はそのあたり絵よりも説得力がありますね。
立体物の強みですよね。360°見回すことができますし。ゲーム業界で培ってきたデザインをフィギュアに入れるようにしています。
「Daitai Robot」シリーズの作品群
――では最後に、この『作って覚える! ZBrushフィギュア制作入門』をどんな方に読んでほしいですか?
まず初めて3DCGを触る方に読んでほしいですね。だから表紙もあえてイラストにしているんです。特にこれまで手でフィギュアをつくっていた方で3DCGに乗り換えようとしている人に読んでいただけると嬉しいかなと思います。ガレージキットというのは出力した段階ではまだ工程の半分に過ぎなくて、そこから複製して表面処理して塗装するというのがまたとても難しい。だから、初めて手を出すとなかなか達成感が得られないまま途中で終わってしまうことが多いんです。でもフルカラー石膏での出力ですと、面倒なパーツ分けもいりませんし、着色も必要ありませんので、まずはこの本でZBrushに触れる楽しさ、出力して手に取ったときの達成感を知っていただけたらと思います。制作工程のモデルデータは全て収録してありますので、人体構造が難しいと思う方も素体のモデルからつくることができます。機能はわかったけれども自分では上手くつくれないという人はその付属データを使っていけば機能を覚えることに集中できると思います。モニタ上で3DCGデータを見るのと、出力したものを手にするのとでは感動は何倍もちがうので、ぜひ完成させて立体出力まで進んでほしいですね。