>   >  フィギュア学校の教則ノウハウを詰め込んだ『作って覚える! ZBrushフィギュア制作入門』著者に聞くデジタル造形の魅力
フィギュア学校の教則ノウハウを詰め込んだ『作って覚える! ZBrushフィギュア制作入門』著者に聞くデジタル造形の魅力

フィギュア学校の教則ノウハウを詰め込んだ『作って覚える! ZBrushフィギュア制作入門』著者に聞くデジタル造形の魅力

2018年2月25日(日)にボーンデジタルより刊行され、好評を博している『作って覚える! ZBrushフィギュア制作入門』の著者ウチヤマリュウタ氏にインタビューを行なった。フィギュア専門の学校で講師を務めるウチヤマ氏が、短期間でZBrushの機能を覚え出力するまでのノウハウをふんだんに詰め込んだ1冊だ。初めての3DCGソフトとしてもオススメだというZBrush。造形ができなくても付属するデータを使ってZBrushを学んでいくことができるというまったく新しい入門書制作の模様を聞いた。

INTERVIEW_日詰明嘉 / Akiyoshi Hizume
EDIT_小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota

<1>作例とともにZBrush機能を覚えられる画期的な入門書が完成

――ウチヤマさんはZBrushを始めてからどのくらいですか?

最初に触れたのは2007年ごろですので、もうかれこれ10年くらいですね。当時は書籍もなくネットで調べても何も出てこないという時代でしたし、ZBrushのソフト自体もすごく使いづらいものでした。その後、2010年にアクワイアというゲーム会社に就職して、『忍道2 散華』という作品のメインキャラクターのデザイナーを担当し、どうしてもそのフィギュアを自分でつくりたくて改めてZBrushを独学して、当時まだ業務用しかなかった3Dプリンタで出力しました。当時は複製もできず、記念に1つつくっておしまいだったのですが(笑)。

  • ウチヤマ リュウタ/Ryuta Uchiyama
    1981年4月14日生まれ。ゲーム制作会社に就職後ドットアニメーションから3Dモデル、キャラクターデザイン、アートディレクターなどを務め、2013年よりフリーランスとして独立。ゲーム制作を続けつつフィギュアの学校にてZBrushの講師を務める。現在も講師活動を引き続き行なっている。2016年より個人創作作品「Daitai Robot」の活動を開始。2018年に「Daitai Robot」の作品「41式試作型-シア-Ver.As」が造形イベント「ワンダーフェスティバル」にて第34期ワンダーショウケースに選出される

――ウチヤマさんはそれまで立体造形物には強い関心が?

いえ、まったくなくてガンプラを素組みする程度でした(笑)。フィギュア制作というよりも3Dモデルをつくるのが好きだったんです。学生の頃はMayaを使ってキャラクターをつくっていました。そこからこうしてZBrushで出力するようになったのは、やはり自分がデザインしたキャラクターを立体物として残したいという思いがあったからこそだと思います。

――2013年に独立されてからはモデラー一筋で?

知り合いが独立して小さなゲーム会社をつくったのでそこに加わり、外注管理などディレクションの仕事をしていました。自分のものをつくりたいという気持ちはフィギュアの方に向けていました。その頃、中野にある「fast[ファースト] 」というフィギュア制作の専門学校で講師のお話をいただき、兼業をしていました。講師は現在も続けていて、ZBrushでフィギュアを制作し出力するという3ヶ月コースのクラスを担当しています。

【フィギュアを】fast[ファースト]【作ろう!】

――人にものを教える経験をすることで自分が教わるということはよくあると思います。ウチヤマさんの場合はいかがでしたか?

それは講師をすることで非常に強く感じました。仕事でソフトを使っている場合、必要な機能さえ知っていれば仕事はできるのですが、人に教える立場になるとより詳しくそのソフトのことを知る必要が出てきます。例えば「こういうことはできませんか?」と、自分ではやらないような方法を質問されることもあるので、そうした質問にも答えられるようにしなければいけないんです。

このクラスはちょうどフィギュアの原型制作が手作業からデジタルに移行するタイミングに始めたので、既にプロとして仕事をしているアナログ原型師さんも多く受講されていましたし、他にもアニメやファッションなど様々な業界の人が参加しています。その中のひとりに、文化学園大学・服装学部の高村是州先生がいらっしゃいまして、今回の本の執筆にあたりいろいろと相談をさせていただきました。最近はVR関係の方がキャラクターモデルをもっと勉強したいという目的で受講されたりしています。クラスが3ヶ月単位なので様々な方や価値観に出会えますね。


――この『作って覚える! ZBrushフィギュア制作入門』はその学校で教えたことを基に書かれたのでしょうか?

はい。この3年の間のカリキュラムづくりで試行錯誤したことをフィードバックして書きました。12回という短期コースで教えるには、いかに無駄なく、受講者に最後までモチベーションをもたせていくかが重要になってきます。ZBrushは機能がすごく多いので、これをやるためにはこの機能を知っておく必要があるといった順番がとても大事で、まるでパズルのようなんです。初心者の方も来るクラスなのでそこも非常に意識しているところです。

――基礎が大切なんですね。

そうですね。でも基礎だけってつまらないじゃないですか?(笑)。かといって従来のノウハウ本のように機能を知っている前提で書かれていると、基礎から学ぶには難しい。基礎から解説しつつ、いかにキャラクターづくりに導けるかを試行錯誤しました。その結果、作例をつくりながら機能をちょっとずつ覚えていけるという、これまでにはなかった本になったと思います。フィギュア制作には慣れていても3DCGには不慣れな方がつまずきがちな点の対処法なども盛り込んでいます。僕自身が使っている機能であっても、初心者の方が混乱しないようにあえて削った部分もあります。



書籍の内容の一例。初めてZBrushに触れる人にもわかるよう、UIの説明やカメラ操作など基礎の基礎からスタートし、顔、体、服などのパーツ制作、ポージングなど順を追って進んでいく

――これから3DCGを初めようとしている方にZBrushを勧めるとして、どんな部分がこのソフトの長所だと思いますか?

ZBrushはよく「感覚的」と言われます。アナログに近い感じで造形している感覚があります。デザインしながらつくるのにすごく向いているイメージですね。Mayaだとあらかじめ作成する形を想定して、それをねらって分割線を入れて作成していくようなイメージですが、ZBrushの場合は感覚的に形を変えていったら想定していない形状が出来上がってそれが格好良くなったりとデジタルなのに偶然性をもった造形ができます。最初は少しクセがあるのですが、慣れると触っていてとにかく楽しいツール。フィギュア以外にもゲームや映像など幅広く使われているので守備範囲も広いですし、一部機能が制限されていますが、まずは低価格なZBrush Coreから入ることもできるので初心者にとっては初期投資が安くすむという点もメリットとして挙げられますね。

――先ほど、アナログで原型師をされていた方が受講されていたというお話がありましたが、アナログでの立体造形の経験はデジタルにも活きますか?

元々の造形力や空間把握の能力はすごく活きると思いますし、そうした方は慣れるとやっぱり上手いですよ。最初はデジタルの面倒くささを感じるかもしれませんが、それでもペンタブレットや液晶タブレットはマウスよりずっと感覚的ですから。あとはイラストを描いている方も上手ですね。まったく初めて触れる方は機能とデッサン力・人体構造を同時に覚えていく必要がありますが、そうした方たちは後者に関する知識や技術は既にもっているので、機能を覚えることに集中することができます。


「Chapter7 仕上げ」より。強度を損なわないようフリルに厚みをもたせるなど3Dプリンタでの出力を前提とした制作テクニックが随所に盛り込まれている

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<2>初めて3DCGに触れる人に読んでほしい1冊

Profileプロフィール

ウチヤマ リュウタ/Ryuta Uchiyama

ウチヤマ リュウタ/Ryuta Uchiyama

1981年4月14日生まれ。ゲーム制作会社に就職後ドットアニメーションから3Dモデル、キャラクターデザイン、アートディレクターなどを務め、2013年よりフリーランスとして独立。ゲーム制作を続けつつフィギュアの学校にてZBrushの講師を務める。現在も講師活動を引き続き行なっている。2016年より個人創作作品「Daitai Robot」の活動を開始。2018年に「Daitai Robot」の作品「41式試作型-シア-Ver.As」が造形イベント「ワンダーフェスティバル」にて第34期ワンダーショウケースに選出される

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