<2>最大の挑戦となったダイヤウェポン出現シーン
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DigicのメインツールはMayaで、これに内製のアセットマネジメントシステムやプラグインなどのカスタムツールを組み合わせて使っている。Mayaはハードサーフェスモデリングやアニメーション作業に用いられ、有機的なモデリングにはZBrushが使われる。テクスチャリング、マットペイント作業にはPhotoshopのほか、BodyPaint 3Dも使われているとのこと。エフェクト作業は、HoudiniとFumeFXが半々の割合で用いられ、Hair・Furにはperegrine*labsのMayaプラグインYeti、シミュレーションにnHair、Syflexが使われている。ClothシミュレーションはnCloth、Syflexで行われている。
戦闘シーンに登場するモンスター、ケルベロスの制作中のモデル
ケルベロスの完成モデル
群衆制作にはMassiveが使われている。「Maya上でMassiveの結果をプレビューできるビューアプラグインを開発していましたが、本作が実用的な最初のプロジェクトとなりました。アニメーション中のキャラクターとMassiveのシミュレーション結果を並べてプレビューし、作業できることからアニメーターにとても好評でした」。このほか、HoudiniのボリュームエフェクトをOpenVDBを介してMayaビューポート上に表示するフローも開発し、これによって各種の煙、爆発、魔法などをMaya作業中に再生できる環境を整備したという。レンダリングはArnoldと自社開発のシェーダで行われ、NUKEでコンポジットされている。
同じく戦闘シーンに登場するモンスター、アーリマンの飛び方のテスト動画
「プロダクションワークでは全体を通して大きな問題は発生せず、首尾一貫してハイクオリティな結果を生み出すことができたことに大きな幸福を感じています。とはいえタイトなスケジュールの中の作業であり、特にダイヤウェポン出現シーンはエフェクトも大規模で、最大のチャレンジであったと言えます」。
ダイヤウェポンはFFシリーズお馴染みの巨大で強力なクリーチャー(生物兵器)だが、本作では冒頭の戦闘シーンからの登場に度肝を抜かれた観客も多かったことだろう。大型台風(スーパーセル)の発達を思わせるような渦巻く気流が抜群のインパクトを放つシークエンスである。当然ながら極めて大きな規模のシミュレーションが要求され、あわせて多様なLODの制作も必要となった。
ダイヤウェポンのモデル
ダイヤウェポン出現シーンで、竜巻の中から登場するダイヤウェポンが纏う気流を表現したスモーク
まず数億のパーティクルをシミュレーションし、それをボリュームに変換。この方法は遠景ショットでは十分に高密度なディテールを得ることができたが、近景ショットでは十分な結果が得られなかった。そこで、カスタムのPyroソルバを開発し、遠景用ボリュームのデータセットをそのカスタムPyroのエミッタとして使用。この工程を追加することで、近景ショットに必要なディテールを達成することができた。このカスタムPyro SOPはダイヤウェポンが放つエフェクトのソルバとしても用いられている。また、これらのエフェクトの統合には、プロシージャルアセットライブラリ「qLib」が大きな助けになったという。「これらのボリュームはシミュレーションだけでなくライティングも大きなチャレンジでした。スーパーセル、竜巻の中を迸る稲妻や巨大な火柱などがありましたが、我々はこれらをVDBに変換してライティング作業を行うことで問題をクリアしました」。
qLib: adding the same effect to multiple shots using Shot qL
「シフト」と呼ばれるワープ技のエフェクト
納品は2段階に分けて行われた。第1段階はDigicから納品できる最初のバージョンとして、バックアップの役割も含めて提供され、それについてより高いレベルに仕上げるためのフィードバックをもらい、磨きをかけた第2段階が納品された。これは、限られた時間の中で最も高い水準で作品を届けるためにDigicで常時行われている方法とのことだ。
「第2BDとのコラボレーションは非常にスムーズに終えることができました。渡される素材のクオリティからはレベルの高いプロフェッショナリズムが感じられ、コミュニケーションは常に迅速かつ的確でした。ディレクターの野末氏がハンガリーを訪れたときには、その先見の明と尊敬すべき人柄に驚きました。この夢のようなクライアントとまた仕事ができたら最高に幸せだと、心から言うことができます」。最後にDigicの担当者はそう力強く答えてくれた。
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